待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!

風見ゆうみ

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14  ちょっと心配になる

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「ところで手紙に出てきた、ミュラーっていうのは、ミュラー・キーライズンの事か?」

 私の動揺などまったく気付きもせずに、ルーが普通に聞いてくるので、私も浮かれた気持ちを切り替えてから頷く。

「そうだと思います。父同士の親交があって、ミュラーは小さい頃からの幼馴染なんです。彼は私と同じ学園に通っていて、学園寮に住んでました。私と同じ年なので、学年も一緒です」
「彼はビアンカの事をどう思ってたんだろうか?」

 ルーに聞かれて、昔の事を思い出す。

 あいつがビアンカと話をしているのは見た事がないなあ。
 
 なので、思い浮かんだ事を素直に答えてみる。

「たぶんですけど、あまり好きではなかったと思います。ビアンカが私に嫌がらせをしている事は知ってくれていて、性格の悪い女だな、とか言ってましたから」
「そうか…。でも、彼も婚約解消に動いてるなら、ビアンカと婚約する可能性もありえるな」
「そうですね。学園時代は私の前でだけ、ビアンカの悪口を言っていて、実は本人と仲良かったのかもしれません」
「…今日はこんな時間に押しかけてしまってごめん。帰るよ」
「あの、ありがとうございました」

 ルーは私の頭をポンポンと撫でると、私がベッドに入るのを確認してから帰っていった。

 考えてみれば、寝巻き姿でルーに会ってしまっていた。
 今日の寝間着は、ピンク色のネグリジェだし、可愛いやつで良かった。
 ただ、まったく意識してくれている様子はなかったけれど…。
 でも、急いで来てくれたのは確かよね?
 そういえば、ルーが今まで好きになった人って、どんな人なんだろう?
 どんなタイプが好みなの?
 理想に近付けば、意識してくれるかしら?
 それよりまずは、婚約者にならないといけないわよね!
 朝、目覚めたら、早速、お父様にお手紙を書こう。
 魔法で送れば1日もかからないはずだし、お父様の了承を得たら、ルーに伝えよう。

 タントスからの手紙の事なんて一切忘れて、ふわふわした気持ちになりながら、疲れていたのか、いつの間にか眠ってしまっていた。

 次の日、お父様に手紙を書いたあと、タントスからの手紙を読み直してみる。
 昨日も思ったけれど、恋愛の熱が冷めてしまうと、こんな手紙をもらっても怖いだけで、さて、どうしようかといった感じ。
 ルーからは外にはあまり出歩かないほうがいいと言われたけれど、ジッとしているのも性に合わない。
 タントスは婚約破棄になったら、私に会いに来ると言ってるし、まだ大丈夫よね?
 出来れば、ビアンカにあんたの婚約者をどうにかしろ、と言ってやりたいけれど、会いに行くのも嫌だし…。
 部屋の中で悶々としていると、侍女から来客を告げられた。
 浮かない顔をしているので、誰が来ているのか聞こうとすると、その前に相手が勝手に中に入ってきた。

「お邪魔するわ」
「ビアンカ様!」
「ごきげんよう、リアラ様。えらく質素な宿に泊まっているのね」

 金色の髪をふわふわと揺らし、肌を焼かないようにするためか、手には白い手袋をはめ、着ているピンク色を基調としたドレスも白いフリルがいっぱいついていて、狭い場所では歩きにくそう。
 侍女は申し訳なさそうに頭を下げてから、扉を閉めた。
 
「ごきげんよう、ビアンカ様。警備の事を考えての宿ですし、不便はありませんが?」
「ベッドもかたいし、よくこんなところで眠れるものね」

 ビアンカは断りもなく、宿とはいえ、人の部屋のベッドに座ると、私を見上げて続ける。

「私の元婚約者と仲良くしてるそうじゃない?」
「あなたに関係ないでしょう」
「関係あるのよ! あなたがフラフラしているから、彼が私のところに来れないじゃないの!」
「どういう事です?」

 意味が分からなくて聞き返すと、ビアンカは目をつり上げて叫ぶ。

「ミュラー様の事よ! あなたが婚約破棄なんてするから、私に振り向いてくれなくなったじゃない!」
「は?」
「は? はこっちのセリフよ! あなたが大人しく婚約しておいてくれていれば、今頃は私がミュラー様と!」
「いや、あなたのせいでしょう」
「は?」

 今度はビアンカが聞き返してきた。
  
 この人、頭大丈夫かしら。

「私の婚約者は誰だったか、もう忘れたんですか? あなたの言いたい事はよくわかりませんが、あなたが私の婚約者を奪わなければ良かったのでは?」
「……」

 ビアンカが言葉をなくしてしまった。

 あれ?
 ちょっと、本当に頭、大丈夫なの?
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