待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!

風見ゆうみ

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 このまま黙っていて良い方向には向かない。
 
 そう思った私はキーライズン辺境伯に問いかける。

「反対される理由をお聞かせ下さい」
「考えたらわかるだろう。パワーバランスの問題だ」
「…どういう事です?」
「君の家である、フセラブル家は辺境伯の中でも兵力がずば抜けて高い」
「それは、隣国との戦いがあるからじゃないですか」
「平和な世の中になったら?」

 強く問い返され、言葉に詰まったあと、キーライズン辺境伯が何を言おうとしているのかわかったため、つい声を荒らげて答える。

「フセラブル家が内戦を起こすとでも?」
「君の父親の代ではないかもしれない。しかし、君の兄が継いだらどうなるだろうか」
「兄が血の気が多いのは認めますが、戦争を好んでいるわけではありません! 領民を守るために戦地に赴いていたんです!」
「人の心はどうなるかわからない。そうなった時、君と第5王子殿下がフセラブル家に力を貸したらどうなる」
「そんなくだらない事に手を貸したりしません!」
「だから、人の心はどうなるかわからないと言ったろう?」

 キーライズン辺境伯が言おうとしている事はわからないでもない。
 私自身に兵はないけれど、ルーにはある。
 しかも優秀な事は、どの地域にも知られている事だから、私の家であるフセラブル家の力が増してしまうと考えるのはわからないでもない。

「理由がそれでは納得できません。あるかないかわからない事で私の人生を壊そうとしないで下さい。内戦を恐れているのであれば、誓約書でも書きましょう。相手が兄であろうとも、必要な戦いをする場合は私が相手になると」
「必要なら俺も書こうか」

 私の背後から声が聞こえて振り返ると、ルーが宿から出てきて、私の隣に立つと、キーライズン辺境伯に向かって続ける。

「俺は信用されていないもんだな。妻の兄がしなくてもいい戦争を起こそうとしているのを黙って見ている上に、兵を貸すというのか?」
「第5王子殿下、お会いできて光栄でございます」

 キーライズン辺境伯はルーが現れた事に驚いた様だったけれど、慌てて頭を下げた。

「途中からしか話が聞こえてないんだが、何の話でそうなったんだ?」
「私達の婚約を認めないという話からです」
「…認めない?」

 ルーが訝しげな表情でキーライズン辺境伯を見ると、彼はルーから視線をそらして答える。

「その話は陛下の方にさせていただきます。先に息子の様子を確認させていただけないでしょうか」
「ちょうど俺達もそちらへ行く予定なんだ。場所はわかるのか?」
「存じております」

 私とルーは徒歩で行くと話すと、キーライズン辺境伯は私達にも自分の馬車に乗るように促してきたけれど、丁重にお断りした。
 ルーはキーライズン辺境伯を見送ってから、平民の格好で一緒に宿に泊まっていた騎士の人に何か耳打ちした。
 すると、騎士の人は頷いて走り去っていった。
 
「何を話したんです?」
「キーライズン卿、ややこしいから、ミュラーと呼ばせてもらおう。彼の所に行ってから話す。彼の意見を聞かないといけないからな」
「わかりました」

 ミュラーに何の話なんだろう、とは思ったけれど、深くは聞かないことにして、キーライズン辺境伯よりもだいぶ遅れて、ミュラーのいる診療所、といっても見た目は普通の石造りの民家にたどり着いた。
 彼がいる部屋に入るなり、ベッドに横たわっているミュラーの横に立っていたキーライズン辺境伯が私に向かって言った。

「息子が危ない目にあったのは、君のせいだというのは本当か!?」
「だから違うって!」

 ミュラーが上半身を起こして、キーライズン辺境伯に叫ぶ。

「私のせいでミュラーを巻き込んでしまったことは間違いありませんので、私のせいだと言われてもしょうがないと思います」
「別にリアラは悪くない! 誰が悪いと言うなら、エッジホール公爵令嬢だろ!」
「うるさい、お前は黙っていろ!」

 キーライズン辺境伯はミュラーに怒鳴りつけると、笑顔を作って、私の方を見た。

「息子はこう言っているが、息子がこんなひどい目に合うことになったのは、私は君のせいだと思っている」
「…申し訳ございません」

 頭を下げると、キーライズン辺境伯は満足そうに頷いてから言った。

「その責任を取り、君がミュラーの婚約者になってくれ」
「はあ!?」

 聞き返したのは、私だけじゃなくて、ルーとミュラーも一緒だった。
 
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