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26 衝撃を受ける
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ルーは私を床におろしてくれたあと、私の飛び蹴りを食らってひざまずいて頭を下げていた男の髪をつかんで立ち上がらせると、額に頭突きをして、男の腕がだらんと落ちたところで、腹に膝蹴りをいれてノックアウトした。
ああ、もう本当に素敵。
そんな風に思ってしまうのは惚れた弱みなの?
ううん、そんな事はないわよね!
そんな事を思って、また1人でニヤニヤしていると、背後でミュラーの呻く声が聞こえて振り返る。
「ミュラー!」
呑気な事を考えている場合じゃなかった。
早くミュラーをお医者さまに診せなくちゃ。
ミュラーの近くに倒れていた男を思い切り踏みつけてから、蹴って押しやり、彼の横に空間をあけてしゃがみ込む。
「ミュラー、しっかりして!」
彼のシャツにはベットリと赤い血がついており、触れると生暖かいそれが私の手についた。
「どうしよう…」
「リアラ、エロに今すぐに医者を呼ぶように伝えてくれ。部下の中に医者がいるんだ」
ルーは私の肩を優しく叩いて促すと、立ち上がった私の代わりに、ミュラーのそばにしゃがみ込んだ。
どうしよう。
私のせいでミュラーが!
階段を駆けおりようとすると、エロさんに倒されたけれど起き上がったのか、男が1人階段を上ってくるところだったので、片手は壁に、もう片方の手を手すりにつけて、両足で男の顔に蹴りを入れた。
「邪魔!」
「ぎゃっ!」
蹴られた男は声にならない声を上げて、階段を転がり落ちた。
障害物がなくなったので、階段を駆けりながら、エロさんに叫ぶ。
「エロさん、お医者さまを呼んで下さい! 少しでも早く!」
私の叫びに、一階にいたエロさんは何も言わずに、真剣な表情で外へ飛び出した。
そして約30分後、エロさんが寝起き感満載のお医者さまを連れてきてくれた。
お医者さまが来るまでに、ルーがミュラーの服を脱がして確認したところ、横腹を広い範囲で切られただけで、刺された訳では無さそうだったので、とりあえず、傷口を少しでも清潔にしようという事になり、様子を見に来てくれた、エロさん以外の他のお仲間さん達と一緒に、ミュラーの傷口を清潔な布で拭いた。
そうしていると、痛みのせいなのか、ミュラーが目を覚まし、私達を見てホッとした表情を見せた。
「ごめん…。迷惑かけた」
「ミュラーが謝ることじゃないわ! それに、謝らないといけないのは私よ! 本当にごめんなさい!」
床に膝をついて頭を下げると、ミュラーが力ない声で言う。
「気にすんな。というか、俺もつかまってごめん」
「だから、あなたは悪くないってば!」
「殿下も…、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「謝らなくていいし、俺の事は気にしなくていい。それよりも腹以外に痛むところはあるか?」
私の隣にしゃがんでいたルーが聞くと、ミュラーは床に倒れたまま、小さく首を横に振った。
「痛むところがないといったら嘘にはなりますが、腹以上に痛むところはないです」
「傷も深くはなさそうだし、止血もしたから、腹の方は大丈夫だろうから安心しろ」
「ありがとうございます」
そんな話をしている間にお医者さまが来たので、ミュラーの事は任せて、この場から立ち去る事にした。
騒ぎを聞きつけた住人が警察を呼んだから、事情聴取をされたため、すぐには帰れなかったけれど、私が貴族だと知ると、わりとすんなりと帰してくれた。
ちなみに、ルーは警察とは顔見知りだけれど、王子だという事は知られていないから、私が身バレする事にした。
そして、次の日というよりも、その朝の事。
ミュラーの容態は安定しているとの事だったから、早速、彼がいる診療所に向かう事にした。
ルーも一緒に行くというので、宿の前で待っていると、宿の前の通りの向こうから、馬車がこちらに近付いてくるのが見えた。
その馬車は宿の前に停まり、御者が扉を開けると、中から降りてきたのは、ミュラーの父である、キーライズン辺境伯だった。
ミュラーよりも背は高くがっしりした体型だけれど、肌の白さと顔立ちはミュラーによく似ている。
「ごきげんよう、キーライズン辺境伯」
カーテシーをすると、キーライズン辺境伯は私が誰か気付いたようで、少しだけ表情を緩めて声を掛けてくれる。
「君はリアラだな。大きくなったな」
「お久しぶりでございます」
父同士が仲が良いだけで、キーライズン辺境伯と私との接点はほとんどない。
社交場でたまに顔を合わせて、軽く挨拶するくらいだった。
「ちょうど君に用事があった」
「…ミュラーの事ではなく?」
「あの馬鹿息子は後で見に行く」
言い方にかちんときたけれど、ミュラーがああなったのは私の責任でもあるので、あとでそれを説明しようと我慢する。
ミュラーに会いに行くといっているし、その時に話せばいい。
「ところで、私に御用とは?」
「一応、伝えておこうと思ってな」
「…何をです?」
「キーライズン家は、君と第5王子殿下の婚約を認めない。8つある区域の辺境伯の内、キーライズン家含め3家が反対意見をもって国王陛下に直訴するつもりだ」
そ、そんな!!
あまりの驚きに、声も出ずに固まってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただき、ありがとうございます!
話の流れはこのまま続きますが、次話から2話ほどはミュラーが不憫だというお声が多かったので、急遽、書き足したエピソードになります。
ああ、もう本当に素敵。
そんな風に思ってしまうのは惚れた弱みなの?
ううん、そんな事はないわよね!
そんな事を思って、また1人でニヤニヤしていると、背後でミュラーの呻く声が聞こえて振り返る。
「ミュラー!」
呑気な事を考えている場合じゃなかった。
早くミュラーをお医者さまに診せなくちゃ。
ミュラーの近くに倒れていた男を思い切り踏みつけてから、蹴って押しやり、彼の横に空間をあけてしゃがみ込む。
「ミュラー、しっかりして!」
彼のシャツにはベットリと赤い血がついており、触れると生暖かいそれが私の手についた。
「どうしよう…」
「リアラ、エロに今すぐに医者を呼ぶように伝えてくれ。部下の中に医者がいるんだ」
ルーは私の肩を優しく叩いて促すと、立ち上がった私の代わりに、ミュラーのそばにしゃがみ込んだ。
どうしよう。
私のせいでミュラーが!
階段を駆けおりようとすると、エロさんに倒されたけれど起き上がったのか、男が1人階段を上ってくるところだったので、片手は壁に、もう片方の手を手すりにつけて、両足で男の顔に蹴りを入れた。
「邪魔!」
「ぎゃっ!」
蹴られた男は声にならない声を上げて、階段を転がり落ちた。
障害物がなくなったので、階段を駆けりながら、エロさんに叫ぶ。
「エロさん、お医者さまを呼んで下さい! 少しでも早く!」
私の叫びに、一階にいたエロさんは何も言わずに、真剣な表情で外へ飛び出した。
そして約30分後、エロさんが寝起き感満載のお医者さまを連れてきてくれた。
お医者さまが来るまでに、ルーがミュラーの服を脱がして確認したところ、横腹を広い範囲で切られただけで、刺された訳では無さそうだったので、とりあえず、傷口を少しでも清潔にしようという事になり、様子を見に来てくれた、エロさん以外の他のお仲間さん達と一緒に、ミュラーの傷口を清潔な布で拭いた。
そうしていると、痛みのせいなのか、ミュラーが目を覚まし、私達を見てホッとした表情を見せた。
「ごめん…。迷惑かけた」
「ミュラーが謝ることじゃないわ! それに、謝らないといけないのは私よ! 本当にごめんなさい!」
床に膝をついて頭を下げると、ミュラーが力ない声で言う。
「気にすんな。というか、俺もつかまってごめん」
「だから、あなたは悪くないってば!」
「殿下も…、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「謝らなくていいし、俺の事は気にしなくていい。それよりも腹以外に痛むところはあるか?」
私の隣にしゃがんでいたルーが聞くと、ミュラーは床に倒れたまま、小さく首を横に振った。
「痛むところがないといったら嘘にはなりますが、腹以上に痛むところはないです」
「傷も深くはなさそうだし、止血もしたから、腹の方は大丈夫だろうから安心しろ」
「ありがとうございます」
そんな話をしている間にお医者さまが来たので、ミュラーの事は任せて、この場から立ち去る事にした。
騒ぎを聞きつけた住人が警察を呼んだから、事情聴取をされたため、すぐには帰れなかったけれど、私が貴族だと知ると、わりとすんなりと帰してくれた。
ちなみに、ルーは警察とは顔見知りだけれど、王子だという事は知られていないから、私が身バレする事にした。
そして、次の日というよりも、その朝の事。
ミュラーの容態は安定しているとの事だったから、早速、彼がいる診療所に向かう事にした。
ルーも一緒に行くというので、宿の前で待っていると、宿の前の通りの向こうから、馬車がこちらに近付いてくるのが見えた。
その馬車は宿の前に停まり、御者が扉を開けると、中から降りてきたのは、ミュラーの父である、キーライズン辺境伯だった。
ミュラーよりも背は高くがっしりした体型だけれど、肌の白さと顔立ちはミュラーによく似ている。
「ごきげんよう、キーライズン辺境伯」
カーテシーをすると、キーライズン辺境伯は私が誰か気付いたようで、少しだけ表情を緩めて声を掛けてくれる。
「君はリアラだな。大きくなったな」
「お久しぶりでございます」
父同士が仲が良いだけで、キーライズン辺境伯と私との接点はほとんどない。
社交場でたまに顔を合わせて、軽く挨拶するくらいだった。
「ちょうど君に用事があった」
「…ミュラーの事ではなく?」
「あの馬鹿息子は後で見に行く」
言い方にかちんときたけれど、ミュラーがああなったのは私の責任でもあるので、あとでそれを説明しようと我慢する。
ミュラーに会いに行くといっているし、その時に話せばいい。
「ところで、私に御用とは?」
「一応、伝えておこうと思ってな」
「…何をです?」
「キーライズン家は、君と第5王子殿下の婚約を認めない。8つある区域の辺境伯の内、キーライズン家含め3家が反対意見をもって国王陛下に直訴するつもりだ」
そ、そんな!!
あまりの驚きに、声も出ずに固まってしまった。
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お読みいただき、ありがとうございます!
話の流れはこのまま続きますが、次話から2話ほどはミュラーが不憫だというお声が多かったので、急遽、書き足したエピソードになります。
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