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第2章 kinds
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HRでは入学式で人数が多く出来なかった入学証書の授与が行われた。それぞれが先生から証書を両手で受け取り、礼をする。
50人分の証書が配り終わると、アンケート用紙が配られた。年度始めには毎回アンケートをとるらしい。何の部活に入りたいかだの、何の教科が得意かだの、自分の長所は何だだの。自分の長所か…、むしろ何も書かないことで謙虚であるという長所を作り上げよう。考えるのも面倒だし。
筆箱からシャープペンシルを取り出し、書こうとする。しかし芯がでない。換えの芯を取り出そうとするが、見当たらない。おかしいな…春休み入ってすぐに確かめたっていうのに…。そういえば妹が借りるって言ってたな。まさかケースごと取られるとは…。
入学早々、『アンケートを書かない』ことで目立つのも嫌なので近くの人に借りることにする。左隣には音無怜花、右隣には…誰もいない。入学式なのに、欠席らしい。女子に借りるとは何とも情けないのだが、小言は言っていられない。
「あのー音無さん?シャー芯を貸してくれませんか」
すると、音無は無言で筆箱から芯ケースを取り出す。そしてケースから芯を2、3本取って、俺の机に乗せる。
「…別に、返して貰わなくていいから」
「おう、ありがとな」
何とか芯を得ることができた。これで、アンケートに答えられる、と思ったが、部活に入るかまだ決めてないし、進路もまだ決まっていない。アンケートのほとんどの欄が埋まらない。仕方なく『まだ決まっていない』に丸をつけておこう。これから決めればいい…よね…?
HRが終わり、昼食の時間だ。つい、朝まで昼食が必要であることを知らなかったため、音無とコンビニでパンを買ったのだ。
他の生徒たちは、前の学校からの付き合いなのだろうか、いくつかのグループに別れ、席を近づけて昼食をとっている。
俺には前の学校の人、ましてや知っている人が同学年にいないために、今日は自分の席で1人で食べる。隣の音無もどうやら御一人様らしい。少し声をかけてみようか。
「音無さんは、学校の友達とかいないの?」
パンを飲み込んでから応える。
「…同じ学校の人ならいるけど、一緒に昼食を食べるほどの仲ではないわね」
「そうなんだ。あれ、お昼それだけなの?もっと買ってたように見えたけど…」
コンビニで見たカゴの中身よりだいぶ少ない。まだバッグに入っているのかとバッグを見てみるが、それほどパンが入っているようにも見えない。
「……買いたいモノはたくさんあったけれど、結局これにしたのよ。たくさん買っても食べられないし…」
そう言って、メロンパンの袋を持ち上げる。普通、買いたいモノをカゴに入れて、あとから戻すか?俺ならカゴに入れる前に考えるけど。
時間も無かったし、急いでいただけなのだろうか。それとも、女子はこうするものなのだろうか。
考えても埒が明かないので深い詮索はしないでおこう。
「そうなんだ、てっきり全部買ったのかと思ったよ」
「…そんなわけ、ないじゃない」
きっと、俺が朝見たパンパンのバッグの中には体操服やら、教科書やらが入っていたのだろう。廊下にあるロッカーに荷物は入れてるに違いない。そう結論づけて昼食に戻る。
これ以上話す話題もないので、前を向いて1人で食べ始める。周囲の楽しそうな会話が羨ましい。
早く友達ができることを祈る。
50人分の証書が配り終わると、アンケート用紙が配られた。年度始めには毎回アンケートをとるらしい。何の部活に入りたいかだの、何の教科が得意かだの、自分の長所は何だだの。自分の長所か…、むしろ何も書かないことで謙虚であるという長所を作り上げよう。考えるのも面倒だし。
筆箱からシャープペンシルを取り出し、書こうとする。しかし芯がでない。換えの芯を取り出そうとするが、見当たらない。おかしいな…春休み入ってすぐに確かめたっていうのに…。そういえば妹が借りるって言ってたな。まさかケースごと取られるとは…。
入学早々、『アンケートを書かない』ことで目立つのも嫌なので近くの人に借りることにする。左隣には音無怜花、右隣には…誰もいない。入学式なのに、欠席らしい。女子に借りるとは何とも情けないのだが、小言は言っていられない。
「あのー音無さん?シャー芯を貸してくれませんか」
すると、音無は無言で筆箱から芯ケースを取り出す。そしてケースから芯を2、3本取って、俺の机に乗せる。
「…別に、返して貰わなくていいから」
「おう、ありがとな」
何とか芯を得ることができた。これで、アンケートに答えられる、と思ったが、部活に入るかまだ決めてないし、進路もまだ決まっていない。アンケートのほとんどの欄が埋まらない。仕方なく『まだ決まっていない』に丸をつけておこう。これから決めればいい…よね…?
HRが終わり、昼食の時間だ。つい、朝まで昼食が必要であることを知らなかったため、音無とコンビニでパンを買ったのだ。
他の生徒たちは、前の学校からの付き合いなのだろうか、いくつかのグループに別れ、席を近づけて昼食をとっている。
俺には前の学校の人、ましてや知っている人が同学年にいないために、今日は自分の席で1人で食べる。隣の音無もどうやら御一人様らしい。少し声をかけてみようか。
「音無さんは、学校の友達とかいないの?」
パンを飲み込んでから応える。
「…同じ学校の人ならいるけど、一緒に昼食を食べるほどの仲ではないわね」
「そうなんだ。あれ、お昼それだけなの?もっと買ってたように見えたけど…」
コンビニで見たカゴの中身よりだいぶ少ない。まだバッグに入っているのかとバッグを見てみるが、それほどパンが入っているようにも見えない。
「……買いたいモノはたくさんあったけれど、結局これにしたのよ。たくさん買っても食べられないし…」
そう言って、メロンパンの袋を持ち上げる。普通、買いたいモノをカゴに入れて、あとから戻すか?俺ならカゴに入れる前に考えるけど。
時間も無かったし、急いでいただけなのだろうか。それとも、女子はこうするものなのだろうか。
考えても埒が明かないので深い詮索はしないでおこう。
「そうなんだ、てっきり全部買ったのかと思ったよ」
「…そんなわけ、ないじゃない」
きっと、俺が朝見たパンパンのバッグの中には体操服やら、教科書やらが入っていたのだろう。廊下にあるロッカーに荷物は入れてるに違いない。そう結論づけて昼食に戻る。
これ以上話す話題もないので、前を向いて1人で食べ始める。周囲の楽しそうな会話が羨ましい。
早く友達ができることを祈る。
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