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33 ~レオナルド・アーンズバッグの追憶~
しおりを挟む悪い事を聞いてしまったのか…
そう思っても、出てしまった言葉はもう戻らない。
けれど、いつまでもそうしているわけにもいかず、ウィンステッド嬢に提案する。
「では、ここで私と一緒に過ごすのはどうだろう?もちろん、勉強も仕事も手伝ってもらうという事で…だが?」
そう言った途端、涙がこぼれそうな碧色の瞳が見えた。
「どうせ一緒に過ごすのだ。何をしていてもいいだろう?勉強や執務だったら時間を気にせず一緒にいられる」
提案という形で思わず出てしまった言葉を正当化する為に、多少よく分からない言い訳になってしまったが、最終的には笑ってくれたので、良い事にした。
●○●○
ウィンステッド嬢と過ごす日々はこれまでの令嬢とは色々違った。
先日約束した通り、朝食の後午前中は座学…主にこの国の歴史や近隣諸国との関わりだったり。週に数時間、他国の言語も勉強するが、ウィンステッド嬢は語学が少々苦手のようだ。
昼食を挟んで午後は私の見学の元、ダンスレッスン。時々体調の良い時などは私も参加したりして、思いがけずいい運動になった。こんな日も良いかもしれない。
淡々とした日々に…諦めていた自分の未来に少し日が差したような…そんな日々を送り…気が付けば、私は恋をしていた。
まだ幼い婚約者候補のミーリア・ウィンステッド嬢に。
側近や侍従はとうに気が付いていたようで、楽しそうにウィンステッド嬢を見る私を微笑まし気に見ていたのに気が付いて、思わず赤面してしまったこともある。
王子という立場で…幽閉同然で生きてきて、恋ができるとは思わなかった。
が……周囲の貴族が騒ぎ始めてしまい、ウィンステッド嬢と過ごす日々は予定より少々早めに終わりを迎えた。
あれから一年ほど経つが、ウィンステッド嬢は元気だろうか?
領地に戻ったあと、ウィリアムの手の者に湖に突き落とされたと聞いて肝が冷えた。
私がつけた護衛がいた為、死には至らずどうにかなったが…私の目の届かないところで危ない目にあう事を考えると居ても立ってもおられず、時間は掛ったが、陛下より婚約の許可をもぎ取り、ウィンステッド領に来てしまったのだが…ミーリアはこんな私を許してくれるだろうか?
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