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24、とうとう立太子です

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「第一王子アルベルト・ザーラント…此度の件とミレーユ嬢との婚約破棄の件…国として…国政を行う者としては見過ごせない愚行であったー……」


兄上の廃嫡宣言が出された。
宣言されてもイマイチ理解していない兄上にちょっとイラっとしつつも、謁見の間にて静かに動向を見守る。
ここには先だって兄上が『寝取られ宣言』した男爵令嬢もいる。
月齢的につわりもあるのだろうし、精神的な事でかなりナーバスになっていることは見て分かった。
男爵令嬢の事は話でしか聞いたことがなく、会ったのはこれが初めだったが、今回の事…ミレーユとのは令嬢には非はないのかもしれない。
上の身分の貴族…ましてやこの国の王子に迫られたら拒否は難しいかも知れない。



が…今となっては確認のしようもなく、確認したところで身籠っている事実は変えられないし、兄上の廃嫡も変わらない。このまま父のない身分のない子を産むよりは、廃嫡されたとはいえ王族であることは変わらない兄上と婚姻を結んで、恩恵を受けつつ子を育てた方が、子にとっても令嬢にとっても楽だろうと思う。身分が低いとはいえ、令嬢は令嬢なので放り出されてしまったら、それまでとなってしまう可能性もある。


あとは兄上の自覚…か。
いまだ納得していない表情で棒立ちになっている兄上。


「令嬢の腹の子は私の子ではありません!私の子ならっ」
「だまれっ!」


父の檄が飛んだ。
恐らく予想だけど、兄上にとっては初めての経験だと思う。


「ご令嬢の腹の子はお前の子だ。発する魔力がお前に近しい魔力だ。これは確実なものである反論は認めない」


言い切った父は去り際に、詳しい沙汰は後ほど伝えると呟いて行った。
王妃は始終悔しそうな顔で聞いていたが、どうにもならないと踏んで父と一緒に退出していった。


「おお…おっお前などに王太子が務まるはずがない!」


そんなことを俺に言った後、引きずられるようにして謁見の間を出て行った。
思わず深々と溜息を吐いてしまったのは仕方がないと思う。
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