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47、あの日のように
しおりを挟む殿下の補佐の仕事がお休みの今日は、経営しているお店の様子見と王都にオープン予定の二号店の視察に行く。殿下の補佐と、殿下の王太子教育の一部を手伝い始めてからは、週に一度くらいしか時間が取れず、トマス様に紹介してもらった人材とはいえ、任せっきりなところもあり中々に気が引ける。
辺境伯様の養女となってからも、辺境伯様始め陛下や殿下にも後押ししてもらい、以前と同じように仕事が出来るのは嬉しいのだけれど、貴族令嬢としてこれでいいのかと、多少疑問もある。
以前だったらお茶会だ夜会だとあったのだけれど、婚約破棄以降行く機会さえなかったし、今も行く気にはならない。けれど、あれはあれで情報収集には中々にいい機会だったこともあり、夜会くらいには紛れ込んでもいいかも……なんて、ほんの少しだけ思っている。
「ミレーユ様、トマス様より使いの者が来まして……」
そう言ってトマス様の部下だったマーサが手紙を持ってきた。彼女は、私が辺境伯様の養女になった時に、トマス様が指揮している国の影を辞め、正式に私の侍女となった。
私自身もマーサの事は信頼しているし、惚けてはいるけれど彼女も私を好いてくれているらしい。まぁ…あれだツンデレってやつだ。あまりデレたことはないけどね。
トマス様からの手紙にザッと目を通し、マーサにも手紙を読んでもらい、私が出掛けている間に明日の準備をしておくように手配を頼む。日中は殿下の仕事の補佐だから、その後に客間を借りドレスを着替えなければいけない。
「ミレーユ様、とうとう…ですね」
なぜか若干涙ぐんでいるようにも見えるのは気のせいだと思うことにして、急いで出発の準備をする。今日は二か所の店舗を周る予定だったから、少し早めに終わらせて自分自身の準備もしなければいけない。
「お帰りになりましたら明日の準備の為のマッサージなどの準備をしておかせますので…」
そう言って部屋を出たマーサ。
最近できたエステ隊に準備の指示を出しに行ったのだろうと思う。トマス様に何か言われているのか、ここ最近は何だか忙しそうで…ついでに私に時間があれば、新しいドレスを作ったりエステ隊の指揮の元、髪の先から足の先までくまなくピカピカにされる。
あまり思い出せないのだけれど、このところふと思い出す『前世』からするとだいぶ贅沢なのではないか…とは思う。
「マッサージの翌日は良いんだけどね…あのエステ隊の中には前世マッサージ師って人がいるのかしら?」
血行を良くする為とは言え、足の裏のマッサージは中々痛い……そして辛い。
マッサージの翌日はむくみなど無く気分爽快なので、嫌だとも言い難いのが難点だ。
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