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54、行け行け前世の俺!
しおりを挟むこのまま見て見ぬふりも出来たのだけれど、なんだかウチの会場でのことっていうのが引っ掛かり、周囲を見廻すと丁度バックヤードから今回の主催メーカーの社長……俺の大学の先輩が出てきた。
ちなみに、先輩の渾名は自他ともに認める鬼嫁だった。俺は怖くて口に出せなかったけどな。
「先輩すみません、あれ多分トラブルっす」
目線で示して、入口を見てもらう。
多分、あの男は先輩の会社の従業員で、先輩の表情を見る限り、多分問題児なのだろう。
黙っていればミスコン優勝者と言われたご尊顔が、憤怒の表情になっている。
怖い……マジで怖い。
本気で怖かったので、そっと距離を取ろうかと思ったら、いきなりガシッと肩を掴まれ礼を言われた。いつもの美声ではなく、地を這うような低い低い声で……。
「アレは訓告して後日自主退社してもらうつもりなの。取引先から苦情が以前から来ていてね……中々尻尾がつかめなくて困っていたのよ」
取引先からの苦情…という形で報告されるのみで、自社の社員の目撃情報などもなく追及も中々難しい状況が続いていたそうだ。ちなみに……この時の様子は先輩の秘書をしている小林さんが動画と共に音声もバッチリ撮っていた。
「今回は誠にありがとうございます。少し離れた場所くらいでしたら音声も拾える機械がございますのでご安心ください」
そつのない……というか準備万端過ぎて若干引いたけれど、今後の被害が出ないならば良いのかもしれない…と納得した上で、そのままズカズカと入り口に向かって歩いた。
「失礼……仕事先で何をしているのかな?君の仕事はまだまだ終わっていないように見えるんだけど、こんなところで女性を脅す時間なんてあるのかな?」
先輩と秘書さんのお陰で証拠は押さえられたけど、申し訳ないが俺の気が済んでいなかったので邪魔をさせてもらった。よりによってウチの会場で……俺が担当の仕事で何してくれっちゃってるんだよって感じだ。
どう見ても、報告書で上げなければいけないトラブル案件だ。
まぁ、先輩のお陰でこの女性が報復行為的な事を受けることはないだろうと思ったからできたんだけどね。
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