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68、してやられた気分
しおりを挟むミレーユが経営する商会の始まりとなった店舗にミレーユはいた。迎えに行った俺に、項垂れて『ごめんなさい』と言って素直に一緒に帰ってきてくれた。
「侍女から詳細は聞きました……」
そう言ってまた黙ってしまった。
そうだった……あの侍女には決まった事、今後の事を全て話した。そして、迎えに行くまでにミレーユがどうしたいのか考える時間を持たせたんだった。
「色々とお手数ご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした」
人払いをし、二人きりで話しをしようとした時、項垂れていたミレーユが謝罪してきた。
やっぱり駄目なのかな……今後の事を考えてずんと気持ちが重くなる。
ヘタレな俺襲来の合図だ……。
「いや、君が謝る事じゃない。側妃のことまで頭に無く…そんな状態でプロポーズした俺が悪いんだ。ただ…俺はどうしても君が良かったんだ。前世の君だけじゃなく、今世の君も好きなんだ。一緒にいたいのは今も昔も君だけだ。それだけは誓える。けど……やっぱり…駄目なんだろうか…やはり王家に…俺に嫁いでくるのはもう無理だろか?」
どうせ振られるなら、恥も外聞も関係なく、思った事を言ってしまえとばかりに言葉を並べた。
だって、きっとこれを逃したら気持ちを伝える術がなくなってしまう。
今後、婚約が流れるようなことになれば、ミレーユに渡していた転移魔法陣も回収せねばいけなくなるし、後に婚姻する誰かの事を考えると、今後もミレーユと会うなどと不誠実なことは出来ない。
だから……。
「もう一度、俺との未来を考えてくれないだろうか?」
藁にもすがる思いでミレーユに伝えた。
「……トマス様には既に受け入れる旨のお返事を先にさせて頂いていたんですが、お聞きになっておりませんか?」
そして聞こえたのは……先程の謝罪の時とは打って変わっての軽い口調で…おまけにトマスの名前が出た。
おいおいおいおいおい!!
またお前かっ!またトマスなのかっ!!!
間抜け面した自分の顔が、ミレーユの後ろの鏡に映って見える……。おいおい……。
色々あったとはいえ、今回も俺はトマスに先回りされていたらしい……。
はぁ……穴掘って埋まりたい気分だ。
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