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神隠しの森編
(238)サーヤの意外な事実
しおりを挟む~セレス目線~
「団長、ちょっと時間いいかしら」
「ああ、大丈夫だ」
第一執務室に向かえば、ちょうど幹部全員が集まっていた。
…………正直、一度に話せるから楽でいいけれど内容が内容だもの。
荒れなければいいわね。
そう思いながらも、真剣な表情でこちらを見る団長たちにサーヤの年齢の件を話した。
サーヤが成人している事。
神人族の成人年齢の事。
この二つの内容を話せば、執務室の中には重い空気が流れていた。
団長やノーヴァどころか、基本笑顔を浮かべている副団長ですら驚きで目を見開いてこちらを凝視している。
まあ、確かにサーヤの年齢や身長じゃあ成人しているとは思えないものね。
しかも、サーヤ本人は彼女の世界の目線で話しているもの。
…………これなら、種族についてしっかりと聞いておくべきだったわね。
うちの騎士団だと、種族のことをあまり話したがらない者が多いかったから聞かなかったけれど。
…………だって、ハーフとか獣人以外もいるからそんなに種族の事って気にならないんだもの。
…………ああ、今はそんなことを考えている暇はないわね。
そう思いながら、恐る恐る団長たちの方を見る。
「…………は?」
「サーヤが、成人している?」
「…………本当?」
「本当の話よ。しっかりと、彼女本人が断言していたもの」
「…………」
驚きの言葉を口々に話す団長たちにそう返せば、全員が顔を青ざめ頭を抱えてしまった。
…………まあ、その気持ちはわかるけれど。
何しろ、獣人の大人の女性は本当に怖い。
何が怖いって?
キレた時のやり方が容赦ないのよね。
あと、意外に女性の方が男よりもプライド高いし、やることも結構陰湿なものが多いのよね。
…………魔族って、どうして女性の方が弱いなんて思っているのかしら?
絶対に、陰湿さと容赦のなさに関しては女性の方が強いと思うのだけれど。
そんなせいか、アタシたち獣人の男にとって女性を怒らせることは恐ろしいことって本能でわかっているのよね。
…………そもそも、あの子は獣人じゃなかったわね。
でも成人している以上、子供扱いするのは普通に失礼だし。
「…………それが本当であれば、今の現状はあまりよろしくないかと」
そう考えていれば、眉間にしわを寄せた副団長が口を開いた。
おそらく、副団長が言っているのはサーヤが団長と同じ部屋で寝ている事ね。
「そう言えば、サーヤの部屋ってどうなっているのかしら?」
「…………準備はできてる」
「じゃあ、移るだけなのね」
「そうですね」
アタシはふと【サーヤの部屋の件】を思い出して聞けば、ノーヴァからそんな答えが返ってくる。
あの子の持ち物や服も増えたし、今回のことも込みであの子を移した方がいいだろう。
…………まあ、移ると言っても部屋自体は団長の部屋の隣だけれど。
それでも、同じ部屋よりはだいぶマシになるだろう。
そう思いながら、無言の団長の方を見る。
団長は机の前にある椅子に座ったまま、机の上に置かれている書類を睨んでいた。
「…………」
「…………団長、大丈夫?」
「…………俺は、どうすればいいんだ?」
「少なくとも、責任とかは本人は求めていないっぽいからやめて頂戴ね」
団長が心配になって聞けば、机を睨みながら怖いぐらい真剣な表情で団長が言った。
とりあえず、アタシは止めておいた。
たぶん団長が『責任を取る』なんて言葉を言った瞬間、サーヤは行動の意味が解らなくて困惑するでしょうね。
そもそもあの子、団長のこともそういう目で見ていなかったでしょうし。
思わず頭を抱えながらもそう思えば、もう一つの問題があることに気づいた。
「あ、あとあの子の成長まだ止まっていないっぽいわよ」
「…………どういうことです? 成人しているのであれば、成長は止まるはずでは?」
「本人もよくわかっていなさそうだったけれど、ジョゼフの説明だと【神人の森に行ったこと】が原因の可能性として高いそうよ」
アタシの言葉に、副団長が目を見開いて言った。
成人の事よりもそこまで重要ではないけれど、存在しているもう一つの問題。
サーヤがどれだけ身長が高くなるかはわからないけれど、当分は部屋の中の家具を使うしかなさそうね。
…………あとは、この子の騎士団用の服かしら?
成人している以上、私服で騎士団本部にいるのも問題だし。
あと、軍服ならもしもの時でも騎士団関係者として動けるし。
「…………とにかく、一度サーヤからしっかりと話を聞くぞ。…………アル、お前もな」
「…………わかっていますよ」
顔をあげた団長の言葉に、副団長はどこか気まずげな表情を浮かべながら言った。
…………そういえば、副団長って最近サーヤのことを避けていたわね。
まあ嫌っているとはいえ、サーヤを刺したのは彼の妹だものね。
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