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朝食作り
翌日の朝
昨晩の内に、ご用意して頂いたメイド服に袖を通し、私は現在、朝食を作るべく、お屋敷の厨房に立っていた。
「では、アルベロ。朝ごはんの支度を始めましょうか」
ミーアさんは、ニコニコとした表情を浮かべながら、包丁を手に持っていた。正直、似合いすぎていて、物凄く怖い。
作業を始めると、流石というべきか、ミーアさんの動きは、美しいのに早かった。
私は、厨房に立ったことは無かったが、淑女の嗜みという事で、一通り料理のお稽古も、先生につけて頂いていた。しかし、プロの方には勝てないという事を、痛感させられた。
「あら、アルベロ。上手じゃない」
「ありがとう御座います。でも、ミーアさんと比べると、どうしても劣ってしましますね」
「こんなのは、慣れよ。大丈夫。貴方なら直ぐに、私くらいには、出来るようになるわ」
優しい人なのだろう。適切な距離感を保ちつつ、こうやって時折、優しい言葉を掛けてくれる。以前、お屋敷内で、自分の方が、仕事が出来るからと、後輩のメイドをいびっている人間がいたが、この人には、そんな心配はなさそうだ。
そうやって、食事を作っているとルーカス王子が、厨房へとやってきた。
「おはよう!うん、いい匂いだ」
「おはようございます。ルーカス様」
相も変わらず、優美な動きで挨拶をする、ミーア様。続けて私も挨拶をした。
「お、おはようございます。ルーカス王子」
私の挨拶を聞くと、ルーカス王子は、ご自身の後頭部をポリポリと掻かれた。
「あー、うん。やっぱり慣れないな。アルベロ、俺の事は、昨日の様に呼んでくれないか?」
私は、少々戸惑った。従者として、主に向かって『ルーカスさん』と呼ぶのは厚かましいのではないかと。
「いえ、流石にそれは無礼が過ぎるかと…」
しかし、王子は微笑みながら、私の眼を見据える。というか、この人。昨日は帽子と眼鏡で気が付かなかったが、かなり容姿が整っている。今までのお見合いで、じろじろとした視線を向けられたことはあったが、こんなに真っすぐに、見つめられたことは無かった。
それが恥ずかしくなってしまい、ミーアさんに視線を移すと、彼女は優しく頷いていた。
「わ、分かりました。ルーカスさん」
その言葉を聞くと、ルーカスさんは笑顔で、何度か頷いた。
「そうだ、ミーア。アルベロの腕前はどうだ?」
「ええ。とてもしっかりと、しておりますよ。お教えする事など、殆ど御座いませんわ」
その、回答を受けて、笑顔を浮かべる、ルーカスさん。
お褒めに預かり、非常に光栄だが、ハードルを高く設定された気がして、またしても胃がキリキリしてきた。
「ほう。流石、俺が見込んだだけの事はある。朝食が楽しみだ」
ほら、やっぱりね。
でも、この人が喜んでくれるのなら、料理を作るのも悪くないものだ、と思ってしまった。
「それじゃあ、朝ごはん楽しみにしている」
そして、ルーカスさんは厨房から去って行った。
私は、その背中に少しだけ願う。
美味しいと思って貰えたら良いな、と。
昨晩の内に、ご用意して頂いたメイド服に袖を通し、私は現在、朝食を作るべく、お屋敷の厨房に立っていた。
「では、アルベロ。朝ごはんの支度を始めましょうか」
ミーアさんは、ニコニコとした表情を浮かべながら、包丁を手に持っていた。正直、似合いすぎていて、物凄く怖い。
作業を始めると、流石というべきか、ミーアさんの動きは、美しいのに早かった。
私は、厨房に立ったことは無かったが、淑女の嗜みという事で、一通り料理のお稽古も、先生につけて頂いていた。しかし、プロの方には勝てないという事を、痛感させられた。
「あら、アルベロ。上手じゃない」
「ありがとう御座います。でも、ミーアさんと比べると、どうしても劣ってしましますね」
「こんなのは、慣れよ。大丈夫。貴方なら直ぐに、私くらいには、出来るようになるわ」
優しい人なのだろう。適切な距離感を保ちつつ、こうやって時折、優しい言葉を掛けてくれる。以前、お屋敷内で、自分の方が、仕事が出来るからと、後輩のメイドをいびっている人間がいたが、この人には、そんな心配はなさそうだ。
そうやって、食事を作っているとルーカス王子が、厨房へとやってきた。
「おはよう!うん、いい匂いだ」
「おはようございます。ルーカス様」
相も変わらず、優美な動きで挨拶をする、ミーア様。続けて私も挨拶をした。
「お、おはようございます。ルーカス王子」
私の挨拶を聞くと、ルーカス王子は、ご自身の後頭部をポリポリと掻かれた。
「あー、うん。やっぱり慣れないな。アルベロ、俺の事は、昨日の様に呼んでくれないか?」
私は、少々戸惑った。従者として、主に向かって『ルーカスさん』と呼ぶのは厚かましいのではないかと。
「いえ、流石にそれは無礼が過ぎるかと…」
しかし、王子は微笑みながら、私の眼を見据える。というか、この人。昨日は帽子と眼鏡で気が付かなかったが、かなり容姿が整っている。今までのお見合いで、じろじろとした視線を向けられたことはあったが、こんなに真っすぐに、見つめられたことは無かった。
それが恥ずかしくなってしまい、ミーアさんに視線を移すと、彼女は優しく頷いていた。
「わ、分かりました。ルーカスさん」
その言葉を聞くと、ルーカスさんは笑顔で、何度か頷いた。
「そうだ、ミーア。アルベロの腕前はどうだ?」
「ええ。とてもしっかりと、しておりますよ。お教えする事など、殆ど御座いませんわ」
その、回答を受けて、笑顔を浮かべる、ルーカスさん。
お褒めに預かり、非常に光栄だが、ハードルを高く設定された気がして、またしても胃がキリキリしてきた。
「ほう。流石、俺が見込んだだけの事はある。朝食が楽しみだ」
ほら、やっぱりね。
でも、この人が喜んでくれるのなら、料理を作るのも悪くないものだ、と思ってしまった。
「それじゃあ、朝ごはん楽しみにしている」
そして、ルーカスさんは厨房から去って行った。
私は、その背中に少しだけ願う。
美味しいと思って貰えたら良いな、と。
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