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事故物件2
やっぱりありがたくない!
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なぜヒョーの式神がここに……?
考えるまでもないか。僕をつけ回していたのだな。
「ちゅー!」
ネズ子は突然、人化を始めた。
セーラー服をまとった女子高生の姿に。
ただし、頭にはミッ○ーマ○スのような大きなネズミ耳がついている。
「な……なんで、あたしがいる事が分かったのでちゅ?」
ネズ子の質問に、ディレクターは『なに言ってんだ? こいつ』と言いたそうな顔で答える。
「だから、私も霊能者なの。見えて当然でしょ」
「あたしは、気配を消せるステルス式神でちゅ。並の霊能者では、近くにいても気が付かないはずでちゅ」
「あら? そうだったの。でも、たまたま視界に入ってしまえば、気配を消していても無駄でしょ」
「では、あたしを見つけたのは、偶然だというのでちゅか?」
「そう。偶然よ。言われてみれば、あなた全然気配がないわね。偶然視界に入らなかったら、私も気が付かなかったわ」
「そうでちゅか。偶然でちゅか」
ネズ子は不意に僕に近寄り、耳元に囁いた。
「優樹君。気をつけるでちゅ。この女、何か禍々しい気配があるでちゅ」
いや、禍々しいのは君でしょ。
「社さん。それでこの式神は何者なの?」
僕はディレクターの方を振り向いた。
「呪殺師ヒョーが使役する式神です」
「呪殺師ヒョー!? なんでそんな人が……」
「話せば長い事ながら……」
とりあえず、手短に事情を話してみた。
「なるほど、だいたいの事情は分かったわ。呪殺師ヒョーは女で、君に一目惚れして追い回していると」
まあ、そうなるのかな。
「呪殺師のイメージが台無しね」
それは同感。
「とにかく、事情は分かりました。仕事の邪魔ですから、お引き取りください」
「そうは行かないでちゅ。こっそり見張るつもりでちゅたが、見つかった以上は仕方ないでちゅ。直接聞きまちゅ。なんで、優樹君は女装しているでちゅ?」
う……
「優樹君に、女装趣味はないはずでちゅ。それなのにテレビで女装している姿を見て、無理矢理やらされているのではないかと、我が主は心配になったでちゅ。だからこうして、あたしを偵察に向かわせたでちゅ」
ええ! ヒョーもあの番組を見ていたの!?
「あら? 天下に名高い呪殺師ヒョーも、『六道魔入の怪奇レポート』を見ていてくれていたの?」
嬉しそうに言う魔入さんの方にネズ子は顔を向けた。
「三年ぐらい前から見ているでちゅ。そんな事より、質問に答えるでちゅ。優樹君は、なぜ女装しているのでちゅ?」
「それは……」
魔入さんは、不意にディレクターを指さした。
「この人のせいです」
「え? 私」
「この人のミスで、社さんの素顔を隠していたモザイクが外れてしまったのです」
「それは……確かに私のせいだけど……」
「そこで、またモザイクが外れてもいいように、社さんの正体が絶対ばれないようなメイクをしたのです」
「それで女装をしたのでちゅか?」
「素性を隠すには、女装が一番いいのです。それに女装は、英雄ヤマトタケルノミコトも使った由緒正しいやり方です」
「それでは仕方ないでちゅね」
いや、仕方なくないよ。ヤマトタケルノミコトと、これに何の関係が……
ネズ子は僕の耳に口を寄せて囁いた。
「優樹君。ヒョー様は君の味方でちゅ。辛いことがあったら、いつでも助けに来まちゅね」
「はあ」
ありがたいのだか、ありがたくないのだか……
「それにしても、ヒョーさんはよく僕だと分かりましたね。樒でも、すぐには分からなかったというのに」
「当然でちゅ! 我が主は、隠し撮りした優樹君の画像を眺めてニヤニヤしながら妄想するのが日課でちゅ。この程度のメイクでは騙されないでちゅ」
ひぃいい! そんな事してたんかい!
やっぱりありがたくない!
考えるまでもないか。僕をつけ回していたのだな。
「ちゅー!」
ネズ子は突然、人化を始めた。
セーラー服をまとった女子高生の姿に。
ただし、頭にはミッ○ーマ○スのような大きなネズミ耳がついている。
「な……なんで、あたしがいる事が分かったのでちゅ?」
ネズ子の質問に、ディレクターは『なに言ってんだ? こいつ』と言いたそうな顔で答える。
「だから、私も霊能者なの。見えて当然でしょ」
「あたしは、気配を消せるステルス式神でちゅ。並の霊能者では、近くにいても気が付かないはずでちゅ」
「あら? そうだったの。でも、たまたま視界に入ってしまえば、気配を消していても無駄でしょ」
「では、あたしを見つけたのは、偶然だというのでちゅか?」
「そう。偶然よ。言われてみれば、あなた全然気配がないわね。偶然視界に入らなかったら、私も気が付かなかったわ」
「そうでちゅか。偶然でちゅか」
ネズ子は不意に僕に近寄り、耳元に囁いた。
「優樹君。気をつけるでちゅ。この女、何か禍々しい気配があるでちゅ」
いや、禍々しいのは君でしょ。
「社さん。それでこの式神は何者なの?」
僕はディレクターの方を振り向いた。
「呪殺師ヒョーが使役する式神です」
「呪殺師ヒョー!? なんでそんな人が……」
「話せば長い事ながら……」
とりあえず、手短に事情を話してみた。
「なるほど、だいたいの事情は分かったわ。呪殺師ヒョーは女で、君に一目惚れして追い回していると」
まあ、そうなるのかな。
「呪殺師のイメージが台無しね」
それは同感。
「とにかく、事情は分かりました。仕事の邪魔ですから、お引き取りください」
「そうは行かないでちゅ。こっそり見張るつもりでちゅたが、見つかった以上は仕方ないでちゅ。直接聞きまちゅ。なんで、優樹君は女装しているでちゅ?」
う……
「優樹君に、女装趣味はないはずでちゅ。それなのにテレビで女装している姿を見て、無理矢理やらされているのではないかと、我が主は心配になったでちゅ。だからこうして、あたしを偵察に向かわせたでちゅ」
ええ! ヒョーもあの番組を見ていたの!?
「あら? 天下に名高い呪殺師ヒョーも、『六道魔入の怪奇レポート』を見ていてくれていたの?」
嬉しそうに言う魔入さんの方にネズ子は顔を向けた。
「三年ぐらい前から見ているでちゅ。そんな事より、質問に答えるでちゅ。優樹君は、なぜ女装しているのでちゅ?」
「それは……」
魔入さんは、不意にディレクターを指さした。
「この人のせいです」
「え? 私」
「この人のミスで、社さんの素顔を隠していたモザイクが外れてしまったのです」
「それは……確かに私のせいだけど……」
「そこで、またモザイクが外れてもいいように、社さんの正体が絶対ばれないようなメイクをしたのです」
「それで女装をしたのでちゅか?」
「素性を隠すには、女装が一番いいのです。それに女装は、英雄ヤマトタケルノミコトも使った由緒正しいやり方です」
「それでは仕方ないでちゅね」
いや、仕方なくないよ。ヤマトタケルノミコトと、これに何の関係が……
ネズ子は僕の耳に口を寄せて囁いた。
「優樹君。ヒョー様は君の味方でちゅ。辛いことがあったら、いつでも助けに来まちゅね」
「はあ」
ありがたいのだか、ありがたくないのだか……
「それにしても、ヒョーさんはよく僕だと分かりましたね。樒でも、すぐには分からなかったというのに」
「当然でちゅ! 我が主は、隠し撮りした優樹君の画像を眺めてニヤニヤしながら妄想するのが日課でちゅ。この程度のメイクでは騙されないでちゅ」
ひぃいい! そんな事してたんかい!
やっぱりありがたくない!
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