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事故物件2

樒の事情2

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「よお! 樒ちゃ……」

 リビングに入った私に挨拶をしかけたロックさんが、不意に目を反らした。

「どうしました? ロックさん」
「樒ちゃん。俺も死神とは言え、男なんだ。その……目のやり場に困る」
「え? バスローブ纏っていますけど」
「バスローブが、はだけているのだが……」
「え? わわわ!」

 ヤバ! 気が付かなかった。

 あわててバスローブの裾を合わせる。

「樒! 若い娘が、なんてはしたない格好だ!」

 父さんが早速小言を言う。

「不可抗力よ。バスローブがはだけている事に気が付かなかったの」
「そうじゃない! お客様が来ている前に、バスローブ一枚で出てくる奴があるか! 服を着なさい!」

 ウザいなあ。また九字ぶっ放してやろうか……いやいや、やったら後が面倒だし……

「お風呂上がったばかりで、身体が火照っているのよ。しょうがないでしょ」
「そのぐらいなんだ! 客人の前で」
「まあまあ、お父さん。お客さんの前で騒ぐ方がみっともないですよ」
「む……仕方ない」

 お母さんがなだめてくれたおかげで、この場は収まった。

「さあさあ、ロックさん。お茶はありませんが、こちらのお菓子をどうぞ」
「ああ、こりゃどうも、ご丁寧に」

 母さんがロックさんに差し出したのは、夕方に私が仏壇にお供えしたお菓子。

 死神も地縛霊も食事の必要はないが、仏壇や神棚にお供えした食べ物から取り出した霊的物質で飲食を楽しむ事はできるらしい。

「美味しいですね。これは、なんて言うお菓子ですか?」
「ええっとこれは……お大福かしら? 樒。これはなんていうお菓子?」
「レアチーズ小餅。セ○ンイ○ブ○の新作スイーツよ」
「あら、そうだったの。新しいお大福かと思ったけど……」
「ふん! 洋菓子だが和菓子だか分からんような変な菓子だな……」

 嫌なら食うなよ! くそ親父! やっぱり九字を放ったろうか!

「お父さん。食べ物にケチをつけたら、仏罰が当たりますよ」
「仏罰? 何を言っている。私らはすでに仏様だぞ」
「私達はまだ、成仏していないのだから仏様じゃありませんよ」
「そうだった」

 あんたらなあ……

 あ! いけない。ロックさんがイライラしている。

「ロックさん。ごめん。話が脱線しちゃって。私に用があったのよね」
「ああ。そうなんだ」

 ロックさんは、懐から取り出した物を私に差し出した。

「これは、露ちゃんが成仏する時に預かった物だ」


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