207 / 237
事故物件2
樒の事情1
しおりを挟む
「樒。計画通りって? どういう事?」
「それはね……」
そして、樒は語り始めた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一ヶ月ほど前。
その気配を感じ取った時、私は自宅で入浴中だった。
この気配、どうやら霊的な何かが、私の部屋に侵入したらしい。
マンション二十階にある私の部屋には、強力な結界が張ってあるので普通の幽霊や妖怪の類は入ってこられない。
それでも入ってこられるのは、元から部屋にいる両親の地縛霊か、あの人くらいだな。
いや、人じゃないけど……
「あらあら、ロックさんいらっしゃい」
母さんの様子から見て、やはり死神のロックさん。
今度こそ、父さんと母さんを迎えに来たのだろうか?
いや、たぶんまた状況の説明だけで終わるのだろうな。
ちなみに私の両親は、五年前に事故で亡くなっていた。
亡くなっていたが、二人の霊は霊界の都合でまだ成仏ができないらしい。
霊界にどんな都合があるのか、人の身である私には知る由もないけど。
ただ、数カ月おきにロックさんがやってきては『すまん。まだ霊界に空きがない』とか『転生の抽選に外れてしまった』とか、状況を説明に来てくれているので、忘れられてはいないのだなという事は理解できたのだが……
とにかく、そんなわけで両親の霊は五年間もこの部屋に留まっている。
こういうのは普通地縛霊というのだけど、本人達は私の守護霊だと言い張っていた。
いや、本人達がどう思っていても、守護霊とは絶対に違う。
守護霊とは、常に守護対象者に付いて回り黙って見守っているもの。それだというのに、この人達はこの場所から離れる事はできないので私に付いてくる事はできない。
だけど私が部屋に帰ってくると、何かと五月蠅く口を出す。
些細な事で、小言を言う事も……
あんましウザいので、一度お父さんに九字を放ったら『家庭内暴力だ!』と騒がれた。
騒ぐだけならまだいい。
その後で母さんが『私はどこで育て方を間違えたのかしら』と泣き出すのにはまいった。
さすがの私も、母さんに泣かれては胸が痛む。
そもそも、私が高校生やりながら一人暮らしができるのは、霊能者協会での稼ぎだけではない。二人が生前残してくれたこのマンションと生命保険のおかげでもあるのだ。
それを思うと気が引ける。
「すみません。今日は、お二人を迎えに来たのではないのです」
やっぱり、今回も迎えに来たのではないらしい。
あれ? 私、ちょっと安心している。
そっか。
早くこのウザい親を連れて逝って……と、思う反面、いなくなったら寂しいという気持ちが私にはあるのだろうな。
「今日は、樒ちゃんに用があって来たのです」
私に? なんの用だろう?
とにかく、あまりロックさんをお待たせしては申し訳ないので、私は風呂を手早く済ませると、バスローブを羽織ってリビングへ出た。
「それはね……」
そして、樒は語り始めた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一ヶ月ほど前。
その気配を感じ取った時、私は自宅で入浴中だった。
この気配、どうやら霊的な何かが、私の部屋に侵入したらしい。
マンション二十階にある私の部屋には、強力な結界が張ってあるので普通の幽霊や妖怪の類は入ってこられない。
それでも入ってこられるのは、元から部屋にいる両親の地縛霊か、あの人くらいだな。
いや、人じゃないけど……
「あらあら、ロックさんいらっしゃい」
母さんの様子から見て、やはり死神のロックさん。
今度こそ、父さんと母さんを迎えに来たのだろうか?
いや、たぶんまた状況の説明だけで終わるのだろうな。
ちなみに私の両親は、五年前に事故で亡くなっていた。
亡くなっていたが、二人の霊は霊界の都合でまだ成仏ができないらしい。
霊界にどんな都合があるのか、人の身である私には知る由もないけど。
ただ、数カ月おきにロックさんがやってきては『すまん。まだ霊界に空きがない』とか『転生の抽選に外れてしまった』とか、状況を説明に来てくれているので、忘れられてはいないのだなという事は理解できたのだが……
とにかく、そんなわけで両親の霊は五年間もこの部屋に留まっている。
こういうのは普通地縛霊というのだけど、本人達は私の守護霊だと言い張っていた。
いや、本人達がどう思っていても、守護霊とは絶対に違う。
守護霊とは、常に守護対象者に付いて回り黙って見守っているもの。それだというのに、この人達はこの場所から離れる事はできないので私に付いてくる事はできない。
だけど私が部屋に帰ってくると、何かと五月蠅く口を出す。
些細な事で、小言を言う事も……
あんましウザいので、一度お父さんに九字を放ったら『家庭内暴力だ!』と騒がれた。
騒ぐだけならまだいい。
その後で母さんが『私はどこで育て方を間違えたのかしら』と泣き出すのにはまいった。
さすがの私も、母さんに泣かれては胸が痛む。
そもそも、私が高校生やりながら一人暮らしができるのは、霊能者協会での稼ぎだけではない。二人が生前残してくれたこのマンションと生命保険のおかげでもあるのだ。
それを思うと気が引ける。
「すみません。今日は、お二人を迎えに来たのではないのです」
やっぱり、今回も迎えに来たのではないらしい。
あれ? 私、ちょっと安心している。
そっか。
早くこのウザい親を連れて逝って……と、思う反面、いなくなったら寂しいという気持ちが私にはあるのだろうな。
「今日は、樒ちゃんに用があって来たのです」
私に? なんの用だろう?
とにかく、あまりロックさんをお待たせしては申し訳ないので、私は風呂を手早く済ませると、バスローブを羽織ってリビングへ出た。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる