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第三章

6 魔王

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スイがいなくなって、探して捜して捜しても、何処にも見つからず、情報も得られなくなって早数週間。
スイがどこにもいない世界に戻っただけなのに、宮殿内はどこか寂しく、冷たい。
レインは漸く仕事に復帰したが、私たちとは目を合わさず、ただ単調に仕事を熟すだけ。
皆の表情には焦燥、疲労などが見られ、目の下の隈が目立つ者さえ現われた。
私たちも仕事が手につかないくらい、身体がだるくて重い。
碌に眠れていないせいなのはわかっている。
だが、ベッドに潜り込んでも眠りたいはずの身体は拒否をし、寝させてくれはしないのだ。
そろそろ私の身体も限界を迎えようとしている最中に、ざわざわと宮殿内が騒がしくなった。

「何だ?この世界にやってきた『神子』の気配がしないが?」
「「ま、魔王っ!?」」

真っ黒の髪と瞳。頭には角が生え、背中にはこれまた立派な漆黒の翼がはためいている。
この世界で知らぬ者はいない、魔王国の王、『レギウス・アルセルク』が、宮殿内を闊歩していたのだ。
「何故、ここにおられるのですか?レギウス殿」
「ん?ああ、第三王子か?親書を送っても返事がないから赴いたまで。何も魔族だからといって嫌う必要はないだろう?」
「っ!!!何をっ!」
魔族は人族を攫い、食事として『性』を貪り尽くし殺すと言われている。
誰しも魔王国には近づかないし、近づけない。
近づけない理由は人を食事として捉えているだけでなく、『瘴気』が凄いからだ。
「その瘴気がお前たち人間の仕業だと言うことがまだわからないのか?」
「我々が悪いと?」
「ああ、そうだ。我ら魔族に良い感情を持たぬ人族の責任であろう?」
「人を食事としてしか見ていないお前らに何がっ」
「食事?ああ~人の間で言われていることか?人間の『性』など不味いだけだ。好んで誰も食わん。だが、何故かそんな根も葉もない嘘が出回って我ら魔族は大変困っている」
「嘘のはずが・・・・・・・・」
「はっ!笑わせる!ま~~いい。かの者がここにいないのなら用はない。ん?ああ~『元の世界』に戻ったのか」
「「っ!!!え?」」
レギウスが向ける目線の先には神獣の青龍がひっそりと佇んでいたのだ。
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