遥香のはるかな海の歌

mitsuo

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 ランドセルのまま水族館に来ていた梨華は、キィちゃんを入れたバケツをかかえてすぐに家へ帰っていった。軽い足どりで水族館を出ていく梨華を見ていると、本当に良かったと遥香は思う。
 だけど遥香はそこでふと(私はどうなんだろう?)と考えた。
(私も乗りこえないと。今の梨華ちゃんのように、自分にとっての試練を)
 そう思ってあせる遥香の心の中では、さっきの自分自身の言葉が強く響いていた。「ミノリイシを立派に育ててみせる」と…それが今の遥香にとっての、何よりも乗りこえないといけない試練だった。
「なあ遥香、どうしてそんなところでずっと立ってるんだ?しかも顔、すごく怖いぞ」
「なんだって?」
 いきなり裕一に「怖い顔」と言われた遥香は、ますます怖い顔になって裕一をにらむ。裕一は「ひえっ!」と叫び、遥香から少し遠ざかった。
 遥香がいたのはミノリイシの水槽の前。梨華を見送った遥香はこの水槽の前で立ち止まり、ずっと思いつめていたのだ。大産卵のある七月までにはもう時間がない。
 遥香がミノリイシの世話をするようになってから一年以上がたつ。その間、このミノリイシは成長もしていないけれど、逆に骨格が崩れて小さくなることもなかった。つまり遥香の育て方はまちがってはいない。光、水温、水質…用意できるものはすべてちゃんとしている。それでも卵を生ませるためには、まだ何かが足りないのだ。
 遥香は水槽に近づいて、ミノリイシにそっと耳をかたむけた。イソギンチャクみたいな形をしたポリプから聞こえてくる彼らの声はあまりにもひそやかで、なんて言っているのか分からない。まるで呪文のようだ。
 「あきらめる」の文字が頭に浮かんだ…その時だった。
(遥香…) 
「え、お母さん?」 
 その時、遥香の耳にお母さんの声が聞こえたような気がした。
 驚いた遥香は目の前のミノリイシを見て、それからまわりをきょろきょろと見回した。だけどお母さんの姿はなく、裕一がぽかんとした顔でこっちを見ているだけだった。
「こ、今度はどうしたんだよ?」
「…ごめん。なんでもない」
 ただのカン違いだったらしい。そう思ったら余計にむなしい気持ちになって、遥香はがっくりとうつむいた。
 だけどその次の瞬間、遥香ははっと顔をあげた。自分のお母さんを思い出したおかげで、重大なことに気が付いたのだ。
(そういえばお母さんは、ミノリイシを小さなかけらからこんな大きさにまで育てたんだっけ。それじゃあ、水槽でもミノリイシを大きく育てることはできるんだ。そしてお母さんは、その方法を知っていたんだ!) 
 可能性はゼロじゃないと分かったことで、遥香はかなり元気付けられた。
 じゃあ、その「足りないもの」というのは一体なんだろう?ヒントになるのは、遥香の中にあるお母さんの思い出だけだ。遥香は目をとじて、小さい時の記憶をさぐる。お母さんに会いたくて、マリンパークをよく訪れていたころのことを。

 マリンパークにいるお母さんは家にいる時とちがってなんだかカッコ良くて、ちょっとだけ怖くて、なんだか…神秘的だった。
 そして思い出の中から浮かび上がってくるお母さんはいつも、このミノリイシの水槽の前にいる。どうしてだろう?遥香が遊びに来た時は、いつもここに連れて来たってことなんだろうか。 
「ほら遥香、よく見てるのよ」
 お母さんは自分でもミノリイシの水槽をのぞきこみながら、遥香にそっと呼びかけた。 
 遥香が水槽に顔を近づけると、お母さんが小さな声で歌を口ずさみはじめる。それは遥香が海を見るたびに思い出す、あの不思議なメロディーだった。
 その瞬間、ミノリイシがぽおっと淡い光を放つ。
 まるでお母さんの歌に反応したかのようだった。いいや、遥香の目には「まるで」なんかではなくて、間違いなくそう見えていた。
 びっくりしている遥香に、お母さんが優しげな声で語りかける。
「ミノリイシはね、とても大切なサンゴなんだよ。大産卵っていってね、五年に一回だけすごくたくさんの卵を生むの。海にはなたれた卵は海流に乗って、途中で幼生に姿を変えながら、すごく長い距離を旅をするのよ」
 遠い眼差しで語りかけるお母さんの瞳は、水槽のミノリイシが映りこんでいるせいなのか、ピンク色に光っているように見えた。
 いつものお母さんじゃないみたいで心細くなる。お母さんもミノリイシの卵と同じように、遥香の知らない場所に行ってしまうような気がした。
「遠い遠い海の中に、ミノリイシだけでできたすごく大きなサンゴ礁があるの。そこは乙姫様が一人で守っている特別な世界でね、海の生き物たちの魂が生まれ変わる前に少しお休みする場所なんだよ…あれ、遥香?」
 話を聞いているうちに、遥香はぼろぼろと涙をこぼして泣いてしまっていた。お母さんはそんな遥香の小さな体をぎゅっと抱きしめて、よしよしと頭をなでる。
「なーんてね!月浦にはね、そういう伝説が伝わっているってことなの。お父さんがすごくくわしいから、もうちょっと大人になったら聞いてみてね」
 お母さんは遥香を一生懸命なぐさめようとしているけれど、一番かけてほしい言葉を言ってはくれなかった。「大丈夫。お母さんはどこにも行かないよ」って。
 そのかわりのようにお母さんが遥香に伝えたのは、こんな言葉だった。
「ねえ遥香、よく聞いて。海の中ではすべての命はめぐっているし、つながっているの。だからみんな一人ぼっちじゃないんだよ。もしもお母さんが遥香の前からいなくなったら…そのことを思い出してね」
 なんだか本当に、もうすぐ遥香の前からいなくなってしまうかのような言い方だった。それを聞いてますます泣き出してしまった遥香のために、お母さんはさっきの歌をまた歌いはじめる。子守唄のように。だから遥香にとってこのメロディーはすごく懐かしく、心の中に強くきざみこまれていたのかもしれない。
 そしてこの歌声に合わせて、ミノリイシは、また…

「おいっ、遥香!」 
 耳元でいきなり裕一の声が響いて、遥香は急に現実に引き戻された。だけどその瞬間に目に飛びこんできた光景を見て、さらに衝撃を受けてしまう。
 目の前の水槽の中が、淡いピンクの光で満ちている。ミノリイシが思い出の中と同じように輝いていたのだ。
「ゆ、裕一…これってどういうことなの?」
「どういうことって、遥香がやったんだろう?お前が目をとじながら変な曲を歌いだしたら、急にミノリイシが光り始めたんだよ」
「え!私、歌ってたの?」
 目をとじてお母さんを思い出している間、自分でも知らないうちにあのメロディーを口ずさんでいたらしい。それも予想外だったけれど、ミノリイシが遥香の歌声に反応したというのはもっと驚きだった。
 遥香が目を開いて、つまり歌うのをやめてからしばらくたつと、ミノリイシの体からはすうっと光が消えていった。そういえば私がはじめて海の生き物の声が聞こえるようになった時も、ちょっとだけミノリイシが光ったな…と遥香は思い出す。
 試しにもう一度歌ってみると、やっぱりミノリイシは細い体の奥から光りを放つ。
 だけど、今度はそれだけじゃなかった。
 今の遥香には、ずっと聞き取れなかったミノリイシの声がはっきりと届いていた。遥香が歌うと、それに重なるようにミノリイシが一緒に歌いはじめていたのだ。
 声はポリプの一つ一つから発せられているようだ。小さな声がいくつも重なって、子供の大合唱のように聞こえてくる。
(そうか。ミノリイシはメリーやお魚たちとはちがって、この歌に反応する性質があるんだ。そしてお母さんは、そのことを知っていたんだ)
 その時、遥香は重要なことに気がついた。
(もしそうなら…お母さんも私みたいに海の生き物の声が聞こえたってことだよね?)
 とんでもない事実に気がついて、遥香は思わず歌声をふるわせる。だけどこの神秘的な光景を前にして考えをめぐらせていたのは、遥香だけではなかった。  
 遥香の隣でこの不思議な光景を口をあんぐり開けてながめていた裕一の表情が、突然ふっときりかわった。急に何かを思い出したかのように。それから彼は別人のように真剣な目つきで水槽を見つめ、遥香の歌に耳をかたむけていた。
 ミノリイシの枝はすべてのポリプがうんと開いていて、満開の花をつけた桜の木のようだった。それを見つめる二人の胸の中は今、それぞれ違う思いで満たされていた。

「ただいまあ」
 その日の夕方。遥香のお父さんが家に入ると、台所から誰かの鼻歌が聞こえてきた。
「…綸(りん)さん?」 
 思わず口から出たのは、遥香のお母さんの名前だった。その名前を呼ぶのは何年ぶりだろう。すごく懐かしくなったけれど、同時にさみしい気持ちがわいてくる。
 昔はこんなふうに、玄関を開けるとお母さんの歌うこのメロディーがよく聞こえてきたものだ。そして台所に行くと料理のしたくをしていたお母さんがふり返って、にっこり笑いかけてくれる。「お帰りなさい。今夜はカレーだよ」とか言って。
 お父さんはじんわりと熱くなってきた目がしらをあわてておさえた。こんなことで泣いているのを遥香に見られてしまったら、きっと笑われてしまうだろう。
 それにしても、これを歌っているのは誰なんだろう?この歌を知っている人はあまりいないはずだ。お母さんとお父さん、そして昔からマリンパークで働いている元山さん。あとは…まさか。
 台所に行くと、そこでは遥香が一人でニンジンをきざんでいた。一瞬だけその後ろ姿がお母さんに見えて、お父さんはぎょっとする。
「あ、お父さん!お帰りなさい!」
「ただいま。遥香…その歌はどこで覚えてきたんだ?」
 歌を止めてふり向く遥香にたずねると、逆に遥香の方が目を丸くする。
「あれ?お父さんもこの歌を知ってるの?」
「うん。お母さんがよく歌っていた気がするよ」
「ああ!やっぱりそうなんだ!」
 自分の歌が記憶の中のお母さんの歌と同じだったことが嬉しくて、遥香は声をはずませる。だけどそのせいで、遥香を見ているお父さんの顔がけわしくなっていることには気がついてなかった。
「夜ごはん、遥香が作ってくれるのか?」
「うん。だってお父さん、帰っても講義の準備や自分の研究の調べ物とかで忙しいでしょう?だからやっぱり、私に時間がある時くらいは少しでも手伝えたらいいなって思って。カレーだから大丈夫でしょう?」
「カレーか…それじゃ、お願いしようかな。ところで遥香、なにかあったのか?ずい分と嬉しそうだけど」
 お父さんに聞かれて、遥香は口もとをますますにんまりさせた。
「あれ、分かった?今日はね、素敵なことが二つも起きたの!」
「へえ、どんなこと?」 
「えへへ。一つはねー、梨華ちゃんとまた仲良しになったこと!もう一つはね…」
「お母さんを思い出したこと?」
「あっ、そのとおり!よく分かったね」
 無邪気な遥香の返事に、お父さんはなぜか苦笑いを浮かべた。
 それからお父さんはネクタイをほどきながら台所を出て行こうとした。けれど遥香が「ねえ、お父さん」と声をかけて呼び止める。
「どうした?」
「あのね…教えてほしいことがあるの。私のお母さんって、どんな人だったの?」
 お父さんがぴたりと足を止めてふり返る。その顔は、まったくの無表情だった。
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
 お父さんの声はさっきと比べて低く、遥香をしかる時みたいになっている。いけないことを聞いたつもりはなかったんだけどな…遥香は驚き、混乱した。
「いや、その、あのね…マリンパークのミノリイシを見ていたら、小さいころにお母さんにこの水槽をよく見せてもらっていたのを思い出したの。そしたらお母さんのことがすごく気になっちゃって」
 それも決してまちがいではなかったけれど、遥香は大事なことをわざと言わなかった。遥香がお母さんのことが気になった一番の理由は、お母さんも自分と同じように海の生き物と会話できるんじゃないかと思ったからだ。
 だけどお父さんは遥香の顔をじっと見つめてから、きっぱりと言った。
「本当にそれだけなのか?」
「うっ」
 心の中を見ぬいているような聞き方をされて、遥香には返す言葉が浮かばなかった。
「そっ、それだけだよ!だってお父さん、今までお母さんのことをあまり話してくれなかったでしょう?自分のお母さんのことだもん、ただ聞きたいって思うのは普通でしょ?」
「うん…確かにそのとおりだ。それは僕も申しわけないと思っているし、いつかはちゃんと話そうと思っているよ。でも、それがどうして今なんだ?」
 どうして今?お父さんの変わった聞き方に、遥香はまた混乱した。
 なんでお父さんは時期を気にしたんだろう。お母さんが気になることに時期なんて関係ないんじゃないの?
 遥香は最初そう思ったけれど、すぐに大事なことを思い出して、はっとした。
 今は六月。七月の満月の夜に起きるというサンゴの産卵の季節が近づいている。しかも今年は五年に一度のミノリイシの大産卵の年だ。
 そして前の大産卵の日といえば、お母さんの…。
「それじゃ、僕は部屋に戻るよ。カレー楽しみにしてるから」
 お父さんは遥香にくるりと背を向けて、逃げるように足早に台所をあとにする。遥香は呼び止めたかったけれど、その次にかける言葉が見つからなかった。
 それでも今の会話で、遥香ははっきりと分かった。お父さんはお母さんのことで、絶対に何か大事なことを知っている。そしてその「何か」を、絶対に私に隠している…と。

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