上 下
93 / 184
第二十六章 西沢守の告白

目覚めた西沢

しおりを挟む
あの時、俺は一旦葉月をあきらめかけた。

それなのに、葉月は諦めなかった。

俺と葉月はこのままでいいのか。

その時、由子は冨樫に「帰りましょう」と声をかけた。

葉月もまた冨樫を追いかけたかった気持ちを堪えていた。

しばらくして、西沢は一般病棟の個室に移ることが出来た。

だが、意識は戻らない。

葉月は毎日寄り添い、西沢の看病を続けた。

「西沢さん、早く意識を回復して、私はあなたにこれ以上ないほど、助けられています、
今回は命を助けて貰いました、でも、あなたの気持ちに答えることが出来ないひどい女です、
許して」

葉月は西沢の手を握り、涙を流した。

その涙が西沢の頬にポトリと落ちた。

西沢はピクっと反応した。

「西沢さん、西沢さん」

西沢はゆっくりと目を開いた。

「西沢さん、葉月です、分かりますか、今、ナースコールしますね」

まもなく、担当医師と看護師がやってきた。

「分かりますか、ここは病院です」

西沢の意識は回復したが、しばらく入院を余儀なくされた。

西沢はじっと葉月を見つめるが、反応がない。

私を覚えていないの?

先生は西沢の病状を説明してくれた。

「西沢さんは一時的な記憶障害です、ご自分の今の状況を受け入れられないのでしょう、
自己防衛本能で、自分自身を守っています、ちょっと時間かかりますが、
頑張って治療していきましょう」

記憶障害。

私のこと誰だこいつって思ってるんだろうな。

案の定、病室へ戻ると「お前、誰だ」と言われた。

私は西沢さんとのことを話し始めた。


『葉月に執着する山辺は、極道には極道だと、金にものを言わせて、
西沢組若頭、西沢守に葉月を自分の元に連れてくるように依頼した。
西沢組は金のためならなんでもやる。
特に守は血も涙もない、極悪非道のヤクザだ。
そんなある日、葉月に付き添って買い物に来たのはヤスシだった。
葉月とヤスシはあっという間に拉致された。
薬で気絶したため、気がついたのは辺りが薄暗くなってからだった。
身体はロープで縛られて身動きが取れなかった。
マンションの一室のような部屋だと言うことはわかった。
隣には相当痛めつけられて、虫の息であるヤスシが転がっていた。
「ヤスシさん、ヤスシさん」
そこへ、守が入ってきた。
「お嬢さん、やっとお目覚めかい」
「ヤスシさんの手当てをしてあげてください」
「痛めつけた相手を手当てするほど、優しい心は持ち合わせてないんだ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貧乏庶民に転生!?将来楽しみな子を見つけたので私が守ります!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:668

夜の帝王の一途な愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,868pt お気に入り:86

はじまりの恋

BL / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:168

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:22,288pt お気に入り:270

いつから魔力がないと錯覚していた!?

BL / 連載中 24h.ポイント:17,773pt お気に入り:10,478

【新章突入】ショタたちがいろんなものに襲われる話

BL / 連載中 24h.ポイント:738pt お気に入り:328

おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:8,546pt お気に入り:3,855

【R18】はにかみ赤ずきんは意地悪狼にトロトロにとかされる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,256pt お気に入り:162

処理中です...