リサシテイション

根田カンダ

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第12話 ワンマン・アーミー

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 《シマー》が発表された当時、オンラインゲーム内に『女の子』がいると噂になった。

 楽しそうに笑いながら走り回り、ぴょんぴょん飛び跳ねたり、女性アバダーのプレイヤーには近寄って来て抱っこをせがんだり、自由気ままに動き回り、たまに母親らしき女性が

「待ちなさい!」

 と追いかけてたり、ゲームコンソールやゲームを飛び越えて現れる事から

『《シマーβ版》の妖精』と言われていた。

 嶋もこの噂を聞き、《シマーβ版》の妖精が良く現れると言われる『モンスター・スレイヤー』をプレイしてみたが、妖精と遭遇する事はなかった。

[美保子とアリサかもしれない…]

 憶測と言うよりも、確信だった。

[《シマーβ版》ならば、プレイヤーやNPC以外の存在は開発エンジニア、リサシティションエンジニア以外に居ない!
 可能性があるのは、美保子のみ!美保子と俺の子、アリサのみ!]

 嶋を『シマー』と呼んでいたのは、リサシテイション開発仲間達しかいない。
 美保子と当時美保子のお腹にいたアリサ以外のメンバーは、美保子より前に絶命しており、他にシステムを使えた者は居なかった。

[俺への生存メッセージ!やっぱり生きていた!]

 嶋は美保子とアリサが無事『生存』していた事を喜び、そして絶望した。

[リサシテイションは世に出してはならない!
 生を願ったクセに…俺の手で抹消しなければならない…
 不老不死のバケモノとして生きるより、人として死なせてやらねば!
 世界を崩壊させるバケモノではなく、人間の母と娘として、死なせてやらなければ!]



 嶋は再度世界中のCPUをハッキングしたが、どこにも美保子とアリサは見つからなかった。
 唯一、ハッキング出来ないペンタゴンのスーパーコンピューターを除いては。

[ペンタゴンにいるのか?]

 そう思いながらも、どうしても嶋自身が侵入出来ないペンタゴンのスーパーコンピューターに美保子とアリサが侵入出来ていると思えなかった。
 美保子のたった数分後に電脳世界に入った嶋が、ペンタゴンに侵入出来なかったからだった。

 嶋はインドで《リサシテイションシステム》の研究中は、ハッキングを一切行わず、研究に没頭していた。

[8年有れば、俺の侵入方法の対策は出来る!]

 そう思い込んでいた上に、わずか数分で嶋のハッキングを阻止出来る程、例え美保子の頭脳が加わったとしても、可能とは思えなかったからだ。

 実際にはこの30年、何度か侵入には成功していたが、美保子の痕跡は見つける事が出来ずにいた。
 それは美保子がペンタゴンを出て、他国のスーパーコンピューターや、世界中の端末へと侵入していた時だった。


 美保子自身、嶋に探し出して欲しいと願っていながら、同時にアリサを守ると言う母の本能によって、嶋のハッキングすら防ぎ、捜索を掻い潜っていたのだった。


[美保子は《リサシテイションシステム》を、光コンピューターで構築しようとしていた。
 当時の技術で出来なかったが、もしかしたら『アリサ』同等の光コンピューターを開発してるかもしれない。]

 
 光コンピューターは、量子コンピューターと同じく第六世代コンピューターであり、量子コンピューターの様に極低温での冷却を必要としない。
 常温稼働が可能ならば極端な冷却装置を必要とせず、必然的に『アリサ』の半分程の大きさで『アリサ』と同等の能力を発揮出来る。

[俺が『アリサ』を開発した様に、美保子も光CPUを開発してても可笑しくない。
 事実、発表された《シマー》はBOXティッシュよりも小さい。
 《リサシテイションシステム》をあのサイズにするならば、量子では不可能。
 光しかない!《シマー》は光CPU!]

 嶋達がインドで開発した《リサシテイションシステム》は、31フィートコンテナ4つ分程の大きさだった。
 現在の電子CPU技術、嶋の超超LSIを使っても、ワンボックスカー程の大きさが必要だろう。
 量子CPUの場合は冷却装置と完全な真空空間が必要な為、最小化しても『アリサ』の30%程の大きさが必要だった。

[《シマー》が光CPUでしか不可能な以上、開発者は美保子!
 バーチャル世界に現れる妖精はアリサ!アリサを追うのは美保子!]

 嶋はアリサと美保子を一目でいいから見たくなりゲーム配信の動画を探したが、『妖精』が現れたと言われる動画はどれもノイズだらけの動画で、アリサや美保子の姿をなしていなかった。
 だが嶋には、それで充分だった。嶋には大小のノイズが狂おしい程愛おしく、モニターのノイズを指でなぞりただ泣いた。
 そして、その2人を再び『殺』さないといけない運命に泣いた。


 同じ頃美保子は、《シマー》量産体制に入っていた。

 仮想通貨のビッツコインのマイニングで得た資金を元に、当時衰退していたシリコンバレーに製作工場を確保し、無人フルオートメーションでのロボットによる生産を開始せていた。

 光CPUの心臓部は光トランジスタであり、赤外線通信や光通信のデバイスですでに可能な技術であり、電子における電気信号から光信号に変換する時の光ノイズと発熱が最大の障壁だった。
 その他にも、ただの天才ならば不可能な障壁も、天才を突き抜けた天才であり、世界中のスーパーコンピューターを自在に扱える美保子ならば、理論の現実化もその技術もクリア可能な障壁だった。
 たまにイタズラに来る【アリサ】と言う障壁以外は。

 光CPUの最大の障壁は、外部との通信接続の為のエンド・サーバーからの電気信号を光信号に変換するシステムだった。
 技術的には既に開発されているシステムだが、光CPUにおいて唯一発熱するのがこのシステムだった。
 《シマー》をゲームコンソールとして使用する以上は、可能な限りの小型化が必須で、小型化すればするほど熱の影響は強くなる。
 その上、発熱で発生する磁場の影響も強くなる。
 

 だが美保子はそれらを単純な既存技術でクリアした。
 脳を含めた人体をスキャンするのは、コンソール本体ではなくデバイスを使用し、熱磁場をデバイスのワイヤレス充電に利用する。
 スキャナーを外部デバイスにする事で、余裕が出来たスペースに、余熱の冷却ファンを取り付ける事で解決した。
 光CPU自体は、既存のCPUとの違いは可動や通信に光を使うか電子を使うかの違いでしかないが、その処理速度や能力には、とてつもない差があった。


 実用可能な量子CPUを開発した嶋、光CPUを実用化した美保子。
 この2人が協力すれば、20年近く行き詰まったままの光量子CPUの開発が可能だった筈。
 嶋も美保子も、インドで《リサシテイションシステム》の研究をしてたエンジニア達は、それ以前は特別な学歴も持たず、要職についていた訳でもなく、埋もれた天才達だった。

[死んで良かったんだろうな…人類の精神的進化は、科学の進化に追い付いていない。
 その証拠に、いまだに核の平和利用よりも、兵器利用を重視している。
 みんな埋もれているべきだった…埋もれたままなら、命を落とす事もなかった…]

 だがもし、人類の精神進化が進んでいたとしたら…
 《リサシテイションシステム》を使い、宇宙から届く星の光をスキャンし、数千万光年先の星の状態を、バーチャル世界内で再現出来ていたかもしれない。
 バーチャル世界は現実世界では【無】であっても、その電脳世界は無限の拡がりを持っている。
 宇宙空間をバーチャル世界で再現し、数千万光年先の星へ一瞬で移動し、研究する事だけでなく、宇宙旅行も体現出来ていた筈だ。
 不老不死と言う【欲】に囚われさえしなければ。


 

 美保子も、自身が不老不死の存在と言う事に気付いていた。

 20数年前に銃撃によって肉体を失ってはいたが、【美保子】としての精神や人格や記憶を持ち、更に学習能力や趣味趣向、人間として肉体以外の全て、愛情や感情をも持ち合わせていたからだ。

[クレオパトラや秦の始皇帝、国を支配してた王様は誰も永遠の命を求めた。
 その為に戦争や虐殺も…
 私達とリサシテイションの存在は、戦争を起こしてしまうかもしれない!それは智彦さんも気付いてる筈。
 でも…でも私はアリサを守る!アリサに世界を見せてあげる!その為には、悪魔に魂を売っても構わない!
 倫理を持たない人類なんか、滅んでしまえばいい!それを邪魔するのは、例え智彦さんでも許さない!]

 同時に美保子は、自身達がアメリカ合衆国の軍事施設であるペンタゴン内にとどまる事に危険を感じ、美保子とアリサを受け入れる事が出来るCPU開発も始めた。

[光CPUなら、レーザー通信を使えば通信ケーブルを使わず、全世界のCPUをコントロール出来る。
 通信が必要な時以外、エンド・サーバーと接続していなければ、存在を隠す事が出来る!]

 いかな嶋と言えど、通信接続されていないCPUに侵入は出来ない。
 端末の電源を切っていようとも、それが通信ケーブル、電気ケーブル光ファイバーケーブル問わず、繋がっていればハッキング可能だ。
 必要な時だけレーザー通信を行えば、ハッキングは不可能だ。
 レーザー通信の光CPUならば、どれ程膨大な量のデータ通信も、一瞬で可能だ。

[智彦さんでも、ハッキングどころか探知すら出来ない!
 智彦さんが出来なければ、他の誰も出来ない!
 智彦さんには、私達が会いに行けば良いんだから!]


「ママ!ママ、ママ、ママ、ママ、ママッ!」

 アリサが美保子を呼びながら、とととっと走って来た。

「あっ、はい、はい!ママですよ。」

 笑顔でアリサを抱き上げると

「お姉ちゃん達来た!お遊びしたい!」

 NANA達が『モンスター・スレイヤー』にログインした様だった。

「うん、行こうか?」

 美保子とアリサは、NANA達のキャンプへ向かった。

 



 現代の日本では、嶋はアメリカITベンチャーの代表と会う為に、赤坂のホテルにいた。
 厚木に降り立ったITベンチャー代表は、アメリカ合衆国大使館を訪れた後、すぐ近くの高級ホテルにチェックインした事を、『アリサ』が掴んでいたからだった。

 突然訪問して来た嶋にベンチャー代表は後日にと伝えたが、2人のCIA職員が大使館前に投げ捨てられていたと報告を受け、ボディーガード達を待機させて部屋へと向かい入れた。

「Welcome mr.TANAKA!」

 大袈裟でわざとらしい代表に

「白々しい!それにここは日本だ!日本語使えよ!
 それともCIAは、日本語もわからねぇ奴を日本によこすのか?」

 嶋は怒りを隠しもせず、と言うよりは喧嘩腰で声を上げた。

「申し訳ありません。郷にいれば郷に従え。ですね?
 ようこそ、田中さん。」

 ベンチャー代表はそれでも笑顔で手を差し出した。

「握手は、そっちの出方次第。まだだ。
 俺1人に向かいの部屋に2人、左右の部屋に2人ずつ、真上真下の部屋に2人ずつ。ジグ3.6インチ17発フル弾倉で、ようこそもねぇだろ(笑)あぁ?CIAさんよ?」

 政府要人など、海外のホテルへ宿泊する時は、中間層の部屋を中心に合計9~12部屋を取る。
 要人の宿泊する部屋を囲む様に、上下左右の部屋、廊下を挟んで向かいにも部屋があれば、正面とその左右。
 テロリストが直接要人を狙えない様にする為だ。
 銃器だけでなく、上下や向かいに爆発物を仕掛けられる可能性も警戒しての事だった。

 ボディーガードの人数も、『アリサ』から知らされていたが、嶋自身も視力を赤外線モードにしていた。

 ベンチャー代表は黙って頷き、部屋のインターホンを取り、ボディーガード達に警戒を解除させた。

「武装は解除させました。どうぞ、お座り下さい。」

 嶋はソファに向かいながら、テレビを指で叩き、照明を指差し、天井を数カ所指差し、最後テーブルを叩いた後、ソファ正面の窓の向こうを指差した。

「マイクやら、カメラに向かいのビルに狙撃兵(笑)
 そんなに日本人の俺が怖いかね(笑)」

 嶋の指摘に代表は窓をブラインドモードにし

「マイクやカメラのスイッチを切りなさい。」

 嶋を真正面から目をみながら言った。

 嶋は黙ってソファに座り、テーブルの上に写真を数枚投げ出した。

 真一を跳ねた2人と、2人に命令を出した上官の写真。
 【ベンチャー代表】の肩書きの男と、男の上司であるCIA副長官の写真もあった。

 真一を跳ねた2人の記憶から抜き出した写真だった。

「知らねぇとは言わせねぇ。CIAの狙いはなんだ?
 どうせあんたらの事だ。俺を取り込むのと同時に消す指令も出てんだろ?
 だがよぅ、それで民間人の井上さんを襲った事を許す気はねぇ。
 どうなんだい?」

 見た目は30代だが、実質60を越える嶋の落ち着きと貫禄に、代表の男は息を呑んだ。

「田中さん、私は…」

「知らねぇとは言わせねぇ!って言ったよな?
 井上さんが襲われた30分後にあんたは厚木に着陸した。
 知ってて時間を合わせたんだ。」

 嶋は代表の男に被せて、言い訳をさせないように言った。

「いや、私は本当に…」

「何回言やぁわかるんだ?CIAてのは語学力ねぇのか?
 知らねぇてのを聞きに来たんじゃねぇんだ。
 言ったからと言って、はい、そうですか?で帰る気もねぇし(笑)
 あんまり舐めた事ほざいてっと、てめぇらのミサイル1発、どっかに飛ばしちゃうぞ?中国がいいか?」

 そう言って嶋は立ち上がり、部屋にあったパソコンの前に座り直し、モニターを代表の男に向けてキーボードを叩いた。
 数分もしない内に、核ミサイル発射の準備画面が出た。

「核を!」

 代表の男は驚いて腰を浮かせた。

「動くな!エンター押したら、テメェらの国のミサイルが中国に向けて発射される(笑)世界大戦だ!
 で?なんで井上さんを襲ったんだ?」

 同時に男のスマホが鳴った。男は出るのを躊躇していたが

「出ろ!本国からだろう。
 この部屋の端末にミサイル発射システムがハッキングされたって(笑)」

 男は右手で嶋に落ち着くようジェスチャーをしながらスマホに出た。

「大丈夫だ。発射はされない。そのかわり、大使館に届けられた工作員2人を調べて報告しろ。
 2人はウォーレン・エルウッドの作戦諜報員だった筈だ…。
 10分…」

 『10分』を嶋に確認する様に言ったが

「3分だ。」

「3分だ!180秒で調べろ!俺のセキュリティーコードを使え!
 コードは…」

 男は32桁のコードを伝えてスマホを切った。

「お前、32桁なんだ(笑)なかなかのお偉いさんじゃねぇか(笑)」

 セキュリティコードの長さが階級を示している。
 機密レベルの高さによって閲覧コードの桁数が増え、所有コード桁数が機密レベルの閲覧許可の高さと階級の目安になっていた。

「ただ、ただこれだけはわかって欲しい!私はあなたの友人が襲われた作戦には、関わっていない!
 私はあなたと協力関係を築く為に日本に来たのです!」

「そんな事聞いてねぇし、関係ねぇ。」

 嶋はそう言いながら少し首をかしげた瞬間、ブラインドモードの窓に1センチ程の穴が空き、風切り音と同時に壁へ当たり、短い破裂音を出して壁にも穴を開けた。

「びっくりして押しちゃったじゃねえか(笑)」

 モニターはカウントダウン画面になっていた。
 残りは140秒!

「間違いだ!止めてくれ!頼む!」

「狙撃しておいて、間違いはねぇだろ(笑)」

 カウントは120秒を切っている。

 その時男のスマホが鳴った。男はすぐに出て

「DIAだ!DIAの作戦だ!止めてくれ!」

「詳しく話せ。」

 嶋はキーボードを叩きながら言った。
 カウントは残り40秒で止まっていた。

「俺が納得出来る話じゃなかったら、またカウントは始まる。
 俺がまた狙撃されてもだ。その時はもう止まらねぇ。」

 男はテーブルに手をつき、冷や汗を拭きながら肩で息をしていた。

 嶋はその姿を見下した後、窓に空いた穴を覗き込み

「あっ、狙撃兵ウチのボディーガードに捕まっちゃったよ(笑)
 いい腕だったのに(笑)もう二度と狙撃は出来なくなっちゃうな(笑)」

 嶋は笑いながら、再びソファに座った。

「田中さん、いったいあんたは…」

「でも良かったなあ(笑)弾丸が俺の頭に命中してたら、カウントどうやってもとまらなかったし(笑)
 セキュリティ書き換えた。お前のコードより長い桁数で(笑)
 まあいいや、話せ。」

 その時、部屋のドアの下から封筒が差し入れされた。

「取って来ていいか?」

 男は嶋に聞いたが

「俺が取ってくる。罠じゃねぇみてぇだしな。」

 封筒を差し入れた男が既にそこにいない事は、赤外線モードの視力でわかっていたし、封筒にも何の仕掛けもされていない事も。

 ドアへ向かう嶋の背を見ながら男は思っていた。

[この男を敵にしたら、人類を滅ぼしかねない。]

 嶋はすぐに封筒の中の資料を見ながら帰って来た。

「DIAてのは、何だ?」

「ペンタゴンだ。俺達CIAは中央情報局。大統領直属の組織だが、DIAは国防情報局。
 国防総省の下部組織だ。」

 CIAはアメリカ大統領直属のスパイ組織だが、DIAはアメリカ国防総省、アメリカ軍のスパイ組織だった。

「どっちにしろアメリカじゃねぇか。で?この資料だと、CIAがDIAのパシリして井上さん襲ったって事だな。」

「パシリじゃない…エルウッドは元々は軍人だ。
 軍人時代の関係から、DIAに協力したようだ。」

 嶋は耳の穴をかきながら

「それだけか?この大層な封筒の中身にも、それだけしか書いてねぇし。
 舐めてっと、中国だけじゃなくロシアにもミサイル飛ばしちゃうよ?」

「待ってくれ!」

 男は慌てて言った。

[この男は本当にやる!ハッタリやブラフじゃなく、本当にやる!]

 そう確信していた。
 嶋は男の悲壮感や焦りに見向きもせず立ち上がり

「3日やる。3日で全部調べろ。今、夜の12時か。丁度良いじゃねえか。
 3日後の夜12時に連絡するわ。」

 男が自分のスマホ番号を伝えようとすると

「知ってる。お前はCIAでクレイモア言われてんだろ?
 大統領の剣か?大層なあだ名だ(笑)でも本名は、ローウェン・アシュリーだっけか?」

 男は驚愕した。男の本名だけではなく、CIAのほとんどの職員の本名は高い機密事項になっている。
 工作員に至っては、名前だけでなく顔も変えてる者も多い。
 ローウェンもそうだった。副長官クラスでないと、ローウェンの本名の閲覧どころか検索すら出来ない。

[この男は危険過ぎる!たった1人で世界を滅亡可能なワンマン・アーミーだ!だからこそ、味方につけないと!]

 嶋が部屋を出て行った後、ローウェンは大統領に緊急通信を入れた。
 
 核ミサイルが発射スタンバイされた事から、大統領はホワイトハウスのシチュエーションルームにいた。
 ローウェンは大統領に、DIAが現在田中に対して遂行させている作戦の中止と、田中へは取り込み作戦以外の作戦を行わないよう要請した。
 それも田中とアメリカ合衆国が対等と言う、本来ならばありえない関係性の構築だった。
 




























 









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