リサシテイション

根田カンダ

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第13話 終末の始まり

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 嶋は自分のオフィスに帰った。
 オフィス内には真一と真一をガードするよう言われたボディーガード2人が居た。

「井上さん、お待たせしました。体調に違和感はありませんか?」

 真一をナノマシン治療をしてから数時間が経っていた。
 ナノマシンは真一のDNA情報を基に構成され、拒絶反応の起きる可能性は0だったが、それでも万全を期すためにオフィスに残ってもらっていた。

「大丈夫です。事故にあったのが本当なのか…信じられないくらい何ともありません(笑)」

 嶋は軽く頷いて

「良かった(笑)では今日はお帰りになられても大丈夫です。
 お送りします。」

 嶋達は徒歩で真一を自宅に送った後、数分間真一のマンションの周りを調べた。

「井上さんを監視してる奴等はいないようですね。
 私達を監視してる奴等はいますけど(笑)
 ところで、私を狙撃した奴は今何してますか?」

 「レオンが面倒見てます(笑)後輩思いの奴ですから…(笑)」

 その時『アリサ』から通信が入った。

ーーーローウェン・アシュリー氏が来社されました。アメリカ大使が同行してますーーー

「CIAが来たようです。予想よりかなり早いですが(笑)
 戻りましょう。」

 嶋達はオフィスへ、ゆっくり時間をかけて戻った。
 その間に『アリサ』がスキャンをし、データや目的を抜き取り、嶋に転送していた。

 アメリカ大統領は、嶋とフィフティ・フィフティの関係を築く事を決断したのだった。

 嶋にそのつもりは無かったが

[それでみんなの安全が保証されるなら、問題はない。]

 そう思いアメリカ大使の申し入れを受け入れ、狙撃兵を彼らに返した。
 元CIAのレオンに、二度とスナイパーライフルを撃つ事は出来ないくらいに可愛がられてはいたが。

 ローウェンと大使は、嶋やエンジニア達だけでなく真一を含めた友人やその家族までの安全を保証し、真一を襲った作戦指揮官のウォーレンを逮捕拘束し、DIAの作戦も解体。
 ウォーレンに協力を要請したチームも拘束したと伝えた。

 その後ローウェンと大使は、後日正式に大統領との会談をセッティングすると言って帰っていった。



 その頃真一は、《シマー》にログインしていた。

スナイプを始め、メンバー全員がまだログインしていたからだった。
 『ヒメカ』もまだログインしていた。

 チームはシュミレーションモードで、敵拠点の攻略訓練をしていた。
 真一も合流しメンバーオーバーとなる為に、交代で1人サロンで待機しながら、フォーメーションの確認や、所持銃器のクセや反動などを確認していった。
 スナイプは既に所有ライフルの全てで、距離1000メートル以内のターゲットならば初弾狙撃成功率を95%に上げていた。
 ケンややっさんも、所有銃器の反動やクセを一応は把握出来ていた。

 ヒメカである夏菜に至っては

「ヒメカちゃん、マジで《シマー》初めてなの?!ってくらい適応してんだもん!
 今の俺達でやっと足引っ張らねぇくらいだもんな…(笑)
 落ち込むよ…(笑)」

 スナイプの言葉に、夏菜はポーズを取っていた。

「私、サバゲやジム通ってるもん!実弾?の反動には驚いたけど、慣れればラクショー!てか、真一くん!じゃなくて影虎、社長との話は?」

 チーム全員サロンに戻っていた時にヒメカが聞いた。

「えっ?!」

 ナノマシンの話は嶋から口止めをされていた為、真一は戸惑った。

[社長、ヒメカちゃんは知ってるって言ってたけど…]

「社長のスポンサーの話、良かったでしょ?
 みんながコザショに専念出来る様、プロ契約して、それぞれ年俸2000万で賞金もみんなの物。海外遠征のセッティングもしてくれるって話(笑)」

「「「「2000万?!」」」」

 真一まで驚いて声を上げた。

「ぼ…僕らに年俸2000万ずつ?!そんな話してないよ!」

 真一は慌てて言ったが

「もう~、契約書ちゃんと見た?最低で20万ドルだから、2000万。大会の賞金は、全額みんなの総取りって…、書いてあったじゃん!」

 確かに焼肉店で見てはいたが…

「そこまで見ていなかった…」

「ダメだよ、影虎!契約書はちゃんと見なきゃ!
 詐欺とか、騙されちゃうよ!」  

 夏菜は呆れていたが、他のメンバー達は驚き過ぎて、思考力が停止していた。

「明日さ、みんなで社長のオフィス来て!社長近々インドに仕事に行くからさ、その前にちゃんともう一度話聞かなきゃ!
 社長には私が伝えるから!」





 翌日秋葉原駅で夏菜と真一のチーム全員が合流して嶋のオフィスへ向かうと、ビルの玄関前で嶋が手を振っていた。

「た…、田中社長が!」

 真一達は、一気に緊張した。

「社長!おはようございま~す!」

 夏菜は笑顔で手を振った。

「夏菜さん、みなさん!おはようございます!お待ちしていました!」

 真一達はみな、緊張したままだった。世界的な富豪でもある以上に、真一達の憧れの存在。
 《シマー》発表当初は、嶋が《シマー》開発者だと思ってたくらいだった。
 真一達はエレベーター内でも直立不動だった。

「みんな緊張してる!(笑)リラックス、リラックス~(笑)
 社長は、ゆるゆるの人なんだから~(笑)てか社長、飯塚さん達は?」

「飯塚さんと塩田さんは、一足先にインドへ。今はもう羽田ですかね?
 難波さんは、みなさんに見せたい物があると、今ご自身のオフィスへ取りに言ってます。」

 オフィス内へ入ると

「影虎様、スナイプ様、ケン様、やっさん様、ようこそ。
 私はこのビルを管理する『アリサ』です。よろしくお願い致します。」

 部屋全体から『アリサ』の声がした。
 真一は素早く反応し

「量子コンピューター『アリサ』さんだよ!量子だよ、量子!
 世界初の実用量子コンピューターの『アリサ』さん!
 このオフィス全体も『アリサ』さんの一部なんだよ!」

 真一は両拳を握りしめ、興奮して言った。

「実質的には量子単体ではありません(笑)
 本体の量子コンピューターを、通常コンピューターのサーバーで補助して居ます。
量子単体だと、優柔不断と言うか…かなり適当なんで(笑)」

「失礼ですね。社長程ルーズではありませんよ。」

 『アリサ』は不機嫌そうに、冗談混じりで言った。

 スナイプとけん、やっさんは緊張と驚きで、声も出せずにいた。

 その時オフィスのドアがノックされ、難波が入って来た。

「失礼します。みなさんお揃いで、毎度お世話になってます難波です(笑)」

 難波は笑顔で挨拶した。

「難波さんは、みなさんをご存知なんですか?」

 嶋が不思議そうに聞いた。

「当然でしょう!みなさんが使ってるコントローラーは、私が製作したコントローラーです。でも…
《シマー》のお陰で、私はお手上げです…。コントローラーの需要がなくなりますから…」

 コントローラーを必要としない《シマー》の登場は、コントローラー製作をメインにしていた難波には、死活問題だった。
 が!

「《シマー》トレーニング用に、新しいデバイスです!
 《シマー》では『肉体』がコントローラーみたいなもんですから、武器使用の反動や挙動、特に銃火器に置いて日本で実物の反動や挙動がわかるのは、警察や自衛隊くらいですからね!
 そのトレーニング用のデバイスです!コール・ザ・ショットメインのみなさんには、特に必要と思い開発しました!
 どうぞ手に取って見て下さい。」

 難波は真一達それぞれの前に、アルミのアタッシュケースを置いた。
 ケースの中にはメタルの模造銃と模造ナイフ、センサーの付けられたグローブが入っていた。
 スマートフォンの様な小型のタブレットも。
 

「まずタブレットで、ご自身の使用する銃火器の設定をして下さい。
 その後グローブを着けて下さい、銃やナイフのモックを持つと、設定した銃やナイフの重さがグローブのセンサーを伝わって、筋肉に作用します。
 持ってみて下さい。付属のパーツを銃に付ければ、ライフルやサブマシンガン設定が出来ます。
 さ、早く!みなさん試して下さい!」

 グローブを着けづに銃のモックを持っても、感じる重量は1キロも無い拳銃くらいだが、グラブを着けて持つと

「おっ!実感あります!《シマー》で使ってるレミントンと同じ重さだ!」

 スナイプが驚いて言うと真一やケン、やっさんも同じく自身のライフルと同じだと言った。

「じゃあ腰溜めでいいんで、少し離れて撃ってみて下さい。弾丸は出ませんが、実物と同じ反動が来ます。
 もちろんリミッターが付いてて、怪我をする様な反動は抑えられますが、実物に近い反動を体感出来ます。
 さ、どうぞ!」

 全員立ち上がり、安全な距離を取って引き金を引いた。

「「「「おわっ!」」」」

「来たでしょう?タブレット見て下さい。弾丸の着弾点も出てるでしょ?
 引き金を引いた瞬間の銃口の位置と、反動によってズレた着弾点。
 付属のスコープデバイスを付けて、距離と風速や風向きを入力すると、重量と風力の影響による着弾点のズレも出ます。」

 スナイプはスコープを付け、窓の外に見える岩本町交差点の信号に照準を合わせた。
 少し見下ろす角度で覗くスコープの中に、距離1050メートル。風速7メートル程で、風向きを示す三角形の印が、細かく動いていた。
 そのデータをタブレットに入力すると、狙う信号の10時の方向に仮想照準の印が現れた。
 スナイプはその位置を確認し、再度スコープを覗き、タブレットの示す位置を狙って引き金を引いた。
 瞬間、肩に衝撃が来た。スコープの先の信号機は無傷だが、タブレットの中の映像は、信号機の真ん中、黄色の信号の真ん中を撃ち抜いていた。

「お見事です!」

 嶋と難波は拍手をして讃えた。
 スナイプは、呆然としまたまま。

「現実世界でこのデバイスでトレーニングして経験値を稼げば、《シマー》内でも、経験によって距離や重力風力の影響を修正出来る様になります。
 瞬時に!本物のスナイパーの様に!」

 スナイプは自分の手のひらと嶋、難波を順番に見渡し、その後仲間達を見渡し

「凄ぇ…。これは…凄すぎる…」

 驚きに声が出て居なかった。

「凄いのは、スナイプさんの技術です。そのデバイスでは、狙撃のサポートは出来ますが、狙撃技術が無ければ標的を撃ち抜けません。
 たった一度で標的を撃ち抜いてしまうとは…。
 素晴らしい!造った甲斐がありました!」

 難波はスナイプを絶賛した。

 反動を適度に抑えて、衝撃を適度に受け流す技術がなければ、長距離狙撃は成功しない。

「これがあれば…、《シマー》に入ってなくてもトレーニング出来る!
 自宅が射撃練習場になるって事ですよね?」

 真一が興奮して聞いた。

「そうです。ナイフも、タブレットに色んなシチュエーションを入力出来ますので、ナイフ格闘のシュミレーションも、モンスレの様な、大型の刀のトレーニングも出来ます。
 もちろん、弓やボウガンのデバイスも製作中です。
 現実世界のあらゆる武器、ゲーム内でのあらゆる武器に、これから対応して行きます!」

 難波は胸を張って言った。

「でも、これって…いくら位するんですか?」

「そう、難波さんのデバイスは高性能だし、僕達は値段が…」

「そう、そう…」

 真一達は不安そうにたずねた。

「値段を付ければ、500万くらいですかね?
 需要が増えれば、まだ値は落とせると思いますが、基本オーダーメイドですからね。」

「500万!欲しいけど…」

「うん…手が出ない…」

 値段を聞いて沈み込む真一達に

「あなた達は我が社所属のプロになって頂けるんでしょ?
 ならば当然みなさんには無償提供に決まってるじゃないですか(笑)」

 真一達の表情は明るくなり、それでも不安そうに嶋と難波の顔を見た。
 4人の問いかける様な眼差しに、嶋と難波は笑顔で頷いて答えた。

「本当に頂いても?」

「当然です!その代わり、みなさんそれぞれ用に細かい調整の時間は頂きますが(笑)」

「僕達それぞれの専用の調整!ワンオフ物って事ですか?!」

「ワンオフオーダーは、我がNGDのこだわりです!
 私は今まで、みなさんに使って頂いていたコントローラーもワンオフじゃないですか(笑)」

「そうだった!」

 難波は量産のデバイスは造らない。それぞれの手の大きさ、指の長さや可動域のデータを取りながら、完全一点物のオーダーでの製作しかしていない。
 それが難波をゲームデバイス製造のトップエンジニアとして、世界に名を知らしめた理由になっていた。



 それから真一達は正式に契約をし、難波のオフィスへ向かい、デバイスの調整に入った。
 嶋は夏菜と共にすぐに羽田へ向かい、インドへと旅立った。10時間程のフライトで到着したニューデリーでは、飯塚と塩田、ボディーガードの古田達3人が待っていた。

「お疲れ様です。レオンが車の手配をしてくれました。
 昔の仲間を頼ったそうです(笑)」

 レオンは元CIA。オフィスを訪れたCIAのローウェンとも顔見知りだった。
 
[ローウェンを脅したな?(笑)]

 嶋はそう思ったが、事実そうだった。
 レオンは車だけでなく、嶋達のインドでの活動に協力するよう要求していた。
 宿泊先のホテルもCIAが提供し、更に警備もCIA警備局が請け負っていた。
 『アリサ』から、CIAと思われる10名以上が、嶋達と距離を起き活動していると通信が入っていた。

[まあ奴等には俺が何をしてるかわかる筈もないし、いいか。]

 嶋は夜中の内に、自身のナノマシンの何%かで、身体の表面だけの身代わりのダミーをつくり、本体は『リサシテイション』を研究していたムンバイへと飛んだ。
 空気人形のダミーと言っても、『嶋』として思考し独立活動も可能だった。
 充分CIAの目は誤魔化せ、その間『嶋』本体は自由な調査活動が出来る。

 筈だった。

 『リサシテイション』の研究をし、《リサシテイションシステム》を開発したムンバイにあった研究施設も廃墟のままだった。
 施設を所有していたマハラジャもIT企業も既に無く、管理者もいない廃墟にはホームレスが入り込み、数家族が暮らして居た。
 施設に入り込んでる家族達も30年の間何度か入れ替わっているが、特殊な技術を持っている様な家族や人物は居なかった。

[『アリサ』この施設に通信可能な機器はあるか?]

ーーーありません。ーーー

[テレビ等の機器は?]

ーーーありますが、前時代の旧式ブラウン管テレビですので通信は不可能です。ーーー

[何か判ったら連絡くれ。]

ーーーかしこまりました。ーーー

 続いて嶋は、ボディーガードの古田に通信をした。

[古田さん、ムンバイには何もなかった。やはり、通信をハッキングしてのダミーだったみたいです。
 インドには何もないでしょう。数日観光でもして帰りましょう。]

[了解しました。寺院でもまわりますか?ガンジスの夕日も見たいですし(笑)]

 『アリサ』からもそれから特別な通信はなく、結局嶋達は数日観光だけをして日本へと戻った。



 それから2ヶ月が経った頃、再び《シマー》が世界的なニュースになった。

 身体や脳にハンデキャップのある人達が《シマー》にログインした場合、身体のハンデキャップと脳の障害が修正され、健常者としての生活が可能になると言うニュースだった。
 《シマー》発売当初ログイン出来なかった両足を失って昏睡状態だった少女も、その後ログインに成功し、両足も再生され《シマー》内で両親と生活していた。

 が…

 ハンデキャップを持ったユーザー達は、《シマー》内では健常者として活動出来る事から、ログアウトして現実世界へ戻って来なかった。

 《シマー》は発売から2週間ですぐにアップデートが入り、ゲームコンソールに接続されていなくてもNPCとしてあらゆるゲームに参加可能となり、その場合プレイヤーが稼いだポイントの30%が支給される仕様となった為、そのポイントで現実世界と同じ生活が可能だったからだ。

 現実世界に戻ってまたハンデを背負っての生活となるより、《シマー》のバーチャル世界で健常者として生きる事をえらんだのだった。

 しかし《シマー》にログインしたままだと、現実世界の肉体は食事も取れない為、ハンデキャップを持ったユーザーだけでなく、ゲームプレイヤー達の中にも現実世界に戻らなかったユーザー達は、死体となって見つかっていた。

 《シマー》発売から2ヶ月で、ログアウトせず死亡した人数は数万人に昇り、世界的な問題になっていた。
 だが現実世界で死亡したユーザー達もバーチャル世界で生き続けていた為、【不老不死】の噂が拡まり《シマー》を求めるユーザーは増え続け、今や2億人近くが《シマー》ユーザーとなっていた。

 世界の国々はやっと危機感を抱き、国連臨時総会を開き、《シマー》禁止に動きはしたが、【不老不死】に取り憑かれた権力者もいた為、決議には至らなかった。

 嶋は《シマー》制御サーバーや美保子捜索を急いだが、何の手掛かりも掴めないままさらに数ヶ月が経った頃、朝鮮半島に突如謎の軍勢が現れ、わずか数週間の間に半島を壊滅させてしまった。

 謎の軍勢は数100万人にものぼり、更にはドラゴン等のモンスターやクリーチャーも含まれ、人類の武器は何一つ役に立たなかった。

 核すらも…。

 国連だけでなく、アメリカと中国、ロシアが手を取り半島に進軍した時は、既に謎の軍勢は跡形もなく消えていた。



 

















 












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