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第14話 核戦争へ
しおりを挟む朝鮮半島が壊滅して数日後、CIAローウェンと共に、嶋はアメリカへ向かっていた。
嶋が乗っているのは、地球最後の日に飛ぶと言われている軍用機だった。
「E -7ですか。何でこんなモンで…」
地球最後の日に飛ぶアメリカ空軍機E -7Bスピアヘッド。
米軍に2機ある内の1機だった。
最終作戦司令室となるE -7Bは、アメリカ合衆国所有の全核ミサイルの発射司令室を兼ねていた。
「核すら効かない謎の大軍の侵略…おそらく彼の大軍に対抗出来る可能性があるのは、田中さんだけです。
こちらをご覧下さい。」
ローウェンはモニターのスイッチを入れた。
朝鮮半島に現れた謎の大軍の映像だった。
「田中さん、いや嶋さん、貴方ならこの大軍が何者逹か知っている筈だ。
《シマー》から現実世界に現れたゲームプレイヤー達。
違いますか?」
「その前に、何故私を嶋と?」
「貴方は30年前、インドで亡くなった筈の嶋智彦。
田中学の戸籍は、我がCIAが調べても完璧だった。
ですが完璧過ぎたのです…両親を含め、田中学を知っている人物が、誰も居ない。
学校の卒業データはあっても、同級生達は、誰も貴方を覚えていない。
存在しないからです!
違いますか?それに《シマー》にログインいている者達が、現実世界で死亡してもバーチャル世界では存在し、意志を持ち活動している。
私達は嶋智彦が、インドで行っていた研究によってCPU世界に自身の全てを転送し、またなんらかの技術によって現実世界に復活した。
田中学として。
そう確信しています。」
ローウェンは自信を持って嶋に問いかけた。
「そうなんですか?」
嶋は特に気にもかけない様に、ローウェンに逆に問いかけた。
「貴方の雇ってるボディーガードのレオン。彼は元CIAです。
ですが作戦中に敵の罠に落ち、殺害されています。
彼を殺害した敵の工作員を、我々は捕らえました。
確実に頸動脈を切り、トドメに心臓を刺した。助かる筈がない!と…。
ですが彼は命を取り留めて、生きて我々の前に現れた。
貴方が助けたのじゃな…」
「ミサイル!回避を!」
嶋はローウェンの問いを遮って叫んだ。
『アリサ』から、嶋の搭乗するE -7Bに向けてミサイルが発射されたと通信が入ったのだ。
「早く!死にたいのか!」
唖然としていたローウェンに、再び叫んだ。
「機長!ミサイルが来る!迎撃を!」
ローウェンは続いてアメリカ大統領への直通回線を開いた。
「大統領はシェルターに!我々に向けてミサイルが発射されました。
我々は…」
ローウェンは確認をする様に嶋をみたが、嶋は厳しい表情のままだった。
「撃墜されるかも知れません!発射したのは…」
再度嶋を見ると
「合衆国海軍所属潜水艦…ハワイ沖200キロの太平洋上。」
「我々合衆国です!大統領!今すぐシェルターへ!
貴方が倒れれば、世界が終わる!どうかご無事で!」
ローウェンは伝達出来る事だけ伝え、通信を切った。
続いて迎撃準備中の兵士達に
「迎撃可能か?!」
「標的は4機!ステルスホーミング!レーザー誘導!
チャフ、フレア無効!目視での迎撃しか出来ません!
被弾確率90%!着弾まで300秒!
退避を!」
「迎撃システムの指揮権を。」
嶋はそう言ってキーボードの前に座った。
「システム全権を田中氏に!」
「イエッサー!」
嶋はキーボードを叩き、3Dゴーグルを着け、迎撃システムを手動に変えた。
戦闘機の操縦桿の様なコントロールスティックを操作し、M61バルカンを発射した。
ダダダダダダ…!
連続した発射音と共に、真っ赤に焼けた20ミリ弾がミサイルを追う様に弧を描いて発射され行く。
1ブロック50発の銃撃で2機のミサイルを撃墜。
続く射撃で1機を撃墜したが、残った1発は真っ直ぐ向かってくる!
「直撃します!衝撃にそなえてっ!」
嶋は3Dゴーグルを外し、ポケットから小型のレーザースキャンをデスクに置いた。
[『アリサ』乗組員のスキャンを。]
グリーンのレーザー光が、機内全てをスキャンした瞬間ミサイルが着弾し、E -7Bは大爆発を起こし、撃墜された。
嶋とローウェン他機長と副機長、戦術クルー10名を含む14人が即死した。
嶋の場合は、即死とは言えないが。
E -7B撃墜直前のスキャンによって、ローウェン達はバーチャル世界にいた。
バーチャルと言っても、真っ白で何もない空間。
空と地面の区切りもなく、ただ真っ白な空間。
「ここは?」
ローウェンと13人の軍人達は、不思議そうに周りを見渡していた。
「我々は撃墜された筈…。ここが死後の世界か?」
「ある意味そうかも知れませんね。」
ローウェン達の目前に突如嶋が現れて言った。
「田中さん!」
ローウェンは驚いて
「我々は撃墜された筈。ここは?
私達は…死んだのですか?
それとも救助されて、死の手前?
これは夢?」
理解出来る筈が無かった。
ミサイルの直撃により撃墜されたE -7Bスピアヘッド。
ミサイルの弾頭は榴散弾だった為、爆発の瞬間無数の鉄球が飛び散り、ローウェン達をズタズタに引き裂いた。
「その前に、これを見て頂きましょう。
我々が撃墜されて5分も経ってないのですが…」
嶋がそう言うと、空間にモニターが現れた。
「大統領!記者会見?」
モニターに流れる映像は、白人銀髪のアメリカ大統領アンドリュー・タイラーだった。
日本を離陸したアメリカ軍用機が太平洋上で撃墜され、乗組員14名全員が死亡したと、タイラーは語っていた。
ミサイルを発射した敵は不明で日本と協議し、同盟の強化と共同調査を発表していた。
「敵は不明?田中さん、我々を撃墜したのはアメリカのミサイルじゃなかったんですか?」
ローウェンは混乱していた。
嶋は、ミサイルを発射したのはアメリカの潜水艦だと言っていた。
当然ミサイルもアメリカ製。
「アメリカ人がアメリカ人を攻撃したとは、信じられませんか?
軍人の方達は、理解してる様ですが?」
嶋は落ち着いて大尉の階級の機長に向かって言うと
「実用可能なステルスミサイルは現在、我が国にしか存在せず、我々を撃墜したのは我がアメリカ合衆国以外に考えられません…
残念ですが。」
機長は敬礼をして答えた。
「それに貴方も、大統領にすぐに避難する様伝えましたが、彼は避難もせず堂々と大衆の前に立っている。
それも撃墜から5分程。本来なら情報収集や事実調査の為に、この様な短時間での記者会見などあり得ない!
彼は攻撃される心配が無いと理解している。もしかしたら、私達を撃墜させたのは、彼かもしれない。
しかもレーザー誘導のレーザーは、何処からだと思います?」
撃墜された場所は、太平洋上ど真ん中。高度30000フィートから見渡しても水平線。
レーザーポインターを設置可能な陸地など無かった。
「衛星から…」
「そう。だけど、レーザー照射出来る衛星は、アメリカにしかない。
射程400キロのレールガンの照準用レーザー衛星。
その衛星が使用されました。その衛星を使用出来るのは、大統領と国防長官だけ。違いますか?」
「間違い…ありません。」
モニターの中の大統領の横には、国防長官が立っていた。
「合衆国とペンタゴンは、私がアメリカに行く事が嫌だった様ですね。
私を消す巻き添えで、貴方達は命を落とした。
日本から飛び立った軍用機を使う事で、日本も巻き込む事が出来る。」
「ペンタゴンは…貴方をテロリスト級の重要監視人物に指定していた。
それを受けてCIAも貴方を監視していました。
貴方は、何者なんだ?」
軍人達も黙って聞いていた。
「軍の人達の中には、フライト中にチャンスがあれば、私を暗殺をするよう指令を受けてた人達もいるんじゃないですか?」
軍人達は何も答えなかったが、『アリサ』のスキャンによって、彼等の記憶は筒抜けになっていた。
国防長官から直接命令を受けたのはレーダー警戒管制をしていた少尉だった。
少尉からは、准尉と曹長に命令が下されていた。
嶋は3人を見ながら
「貴方達が命令を遂行する前に、私達全員が犠牲になりましたが、遂行していたとしても結果は同じだったでしょうね(笑)
極秘暗殺任務とは、そんなモノではありませんか?」
ローウェンや機長、他の軍人達も3人に驚いた様な視線を向けていた。
「そんな命令を受けてたのか?」
「存じません。」
機長の問いに、少尉は直立不動で答えた。
「まあ上官、しかも国防長官の命令ならば墓場まで持って行くのが軍人でしょう。
でも、ここは既に墓場です。貴方達は既に死亡しています(笑)」
笑顔の嶋に、全員が真剣な視線を向けた。
「それです田中さん。私達が死んでいるならば、今ここで話をしているのは?
私達はどうなっているのですか?」
ローウェンがすがる様に聞いた。ローウェンが立場的に一番の上官なのか、他の軍人達は無言で嶋の答えを待っていた。
「言葉のままですが、理解出来なくて苦しいでしょうね。
話ましょう。
ここはバーチャル世界です。『アリサ』風景を。どこかの海辺がいいですね。」
真っ白な空間が、急に南の島に変わった。
白い砂浜、透き通った海。山の緑の木々。
360度見渡す限り海に囲まれた小さな無人島。
一歩踏み出すと、砂を踏み締める感触と音。
軍人が1人海に足を入れると
「本物の海だ!」
他の軍人が海水を口に含み
「うぇっ!海水だ!本物の海と島?」
陽射しも暑い。
「本物ではありません。バーチャルです。
みなさんの意識は今、バーチャル世界にある。
《シマー》と同じです。撃墜の直前、私はみなさんをスキャンして、データ化してCPUに転送しました。
みなさんの肉体は榴散弾によって粉々に散り、すでに戦死しています。
ですがCPUの中に記憶も意識もデータとして残ってます。
それが今の貴方達。それと…私のCPU内にいると言う事は、申し訳ありませんが少尉と准尉達の記憶も把握出来てると言う事です。
昨夜の午後8時ちょうど。少尉は長官から極秘回線を使っての命令を受けた。
コードナンバーは、撃墜された機と同じ『スピアヘッド』アメリカを守る槍の穂先。間違いありませんね。
生体的に既に死亡した以上、守秘義務も消えたと解釈できますが?(笑)」
少尉は、准尉と曹長を見た。が、
「存じません。」
「そうですか、残念です。」
嶋がそう言った瞬間、少尉、准尉、曹長の姿が消えた。
「なっ、何をしたんですか!」
ローウェンが慌てて問いかけた。
「デリートしただけですよ。私を殺そうとした人間を許せる程、私は聖人ではないんでね。
右の頬を叩かれて左の頬まで差し出す貴方達の神と私は違います。
ヤラれたらやり返す!売られた喧嘩は買います!
それがアメリカ合衆国でも!
ローウェン、貴方に言った事を覚えてますよね?
合衆国の核は、私の気分で発射される。
『アリサ』ミサイル発射システムを。」
何も無い空間にカウントが表示され、嶋の手の中には、ミサイルの発射スイッチが握られていた。
「やめろ!」
軍人達は、理解出来ずにいた。
「少佐、これは…?」
ローウェンは軍内では少佐の階級だった。
「我が国の核ミサイル発射スイッチだ。数ヶ月前、システムの誤動作で処理された核発射準備事故。
あれは誤作動の事故ではなく、彼がシステムをハッキングして起こした事だ。
合衆国のすべての技術とエンジニアを投入したが、システムはハッキングされたままだ。
彼の手の中に合衆国、世界の運命がある。」
「そう(笑)貴方達の家族の命も、私の手の中だ(笑)
止めてみるか?」
軍人達は嶋に飛びかかろうとしたが、動けなかった。
「私の造った世界。神は私です。私の許可無しに、誰も動けません。
それに私に殺意を持てば、デリートするだけ。
1人…、1人が殺意を持つ度に1発発射しましょう(笑)2人ならば2発(笑)最大11発…いや、既に3人いた訳ですから、3発は撃っていいですね(笑)」
カウンターが3つになって、それぞれがカウントダウンを始めた。
アメリカ大統領の会見を中継してるモニターが慌ただしくなった。
数人の軍人が大統領に駆け寄り耳打ちした後会見は中止され、大統領はSPに守られ会見室から出て行った。
「カウントダウンが知らされた様ですね(笑)」
「狂ってる…大戦が起きて、何万人…いや、何億人が死ぬかもしれないんだぞ!」
「私の友人の命を狙い、私の命を狙ったのはアメリカだ。
喧嘩を仕掛けたのはアメリカ。私は喧嘩を買っただけ(笑)」
カウンターが5つ増え、8つになりカウントダウンをスタートした。
「あれ?5人程殺意持った様ですね(笑)私を恨むのは筋違いと理解出来ない様ですね(笑)」
嶋がそう言った瞬間、5人の軍人が消えた。
「デリート…したのか?」
「何か問題でも?(笑)」
ローウェンは焦り、残った軍人達は恐怖していた。
最初の3発のカウントは既に60秒を切っていた。
「止めてくれ!頼む!」
ローウェンは膝を付いて懇願した。他の軍人達も。
「なぜ願うのですか?私1人を殺す為に、貴方達まで犠牲にした国を守る義務はないでしょう?」
「義務ではない!人としての願いだ!」
「はははははっ!貴方達は既に死んでいて、人ではないのに?(笑)」
1発で数百万人を殺傷する兵器のスイッチを押しながら声を上げて笑う嶋に、全員が恐怖した。
そして遂に3発の核ミサイルが発射された。
「ああ…神様…」
全員が胸で十字を切った。
「今、貴方達の神は私ですけどね(笑)」
その時空間に複数のモニターが現れた。
アメリカ合衆国の核ミサイルが発射された為、他の核保有国が報復の核ミサイルの準備を始めた映像だった。
「あなたの要求は何でも聞く!だから、だから止めてくれ!」
他のカウントダウンも終わり、5発の核ミサイルが続けて発射された。
他の核保有国の核も、次々とアメリカに向けて発射された。
「終わりだ…人類が滅んでしまう…」
絶望し泣き出す軍人もいた。
「ローウェン、お前の記憶は既に知っている。お前の口から話せ。
正直に言えば、世界中の核を消してやる。」
嶋は恐ろしく冷たい目でローウェンを見下ろし、他の軍人達を消した。
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