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初夜、ふたたび ①
しおりを挟むクリストフがカーテンを開けた。
薄暗かった寝室が、星明かりで少し明るくなる。
目が慣れると、彼のたくましい上半身が夜空を背景にして浮かび上がった。
大きな窓の横に立った彼の、赤い髪。首から肩にかけての力強さ。大胸筋は盛り上がっていて、わたしの胸よりも大きそうだ。
少し下に目をやると、腹筋はくっきりと割れ、腰から斜めに線が入っているように見える。
筋肉の作り出す陰影は、古代の戦士の彫像を思わせた。
荒々しくて美しい芸術品……。
けれど、美術館に飾られている彫像とは違う。
腹筋のさらに下、トラウザーズの股間がありえないほど大きくふくらんでいる。
「あの、クリストフさま、それは」
「男の象徴だ。……やはり怖いか?」
「こ、怖くなんかありませんよ!」
クリストフはそのふくらみを隠しもせずに、わたしの目を見て真剣な顔で言った。
「前回はすまなかった。頭に血がのぼってしまって痛い思いをさせたが、今度はきちんと慣らしてから挿入する。やり直させてくれないか」
「そ……挿入!? 慣らす!?」
思わず体が硬直した。
彼の心を得るためなら、大胆不敵に強気で行こうといつも思っているけれど、さすがに直接的な言葉には免疫がない。
ぼう然としていると、クリストフが近づいてきた。歩幅が大きいので、壁のような肉体があっという間に目の前に来る。
「ミルドレッドが見かけ以上に大人であることはよくわかった。……今夜、いいか?」
「はっ、はい!」
うまい言い回しが思い浮かばなくて――でも、いやがっているとは思われたくなくて、とりあえずはっきりと肯定の返事だけは返す。
とたんに力強い腕に抱き上げられた。
「きゃっ」
一歩、二歩。ものすごい歩幅でベッドに到着すると、シーツの上にそっと下ろされる。
「服を、ぬ、脱がせるぞ」
「は、はい」
お互い態度がぎこちないけれど、媚薬の力を借りずに素面で向かい合っているのだ。これが初夜だと思えば、こんなものなのかもしれない。
クリストフの指がわたしのドレスのリボンをほどく。続けてコルセットを取り去ろうとするけれど、うまく行かない。
「んん? これはどういう構造になっているんだ。全然結び目がほどけない」
「あっ、ちょっと待ってください! 無理やり引っ張ると壊れちゃう。編み上げのリボンをゆるめないと」
「す、すまない」
体型を整えてドレスを美しく見せるコルセットは、結構複雑な構造になっている。慣れていないと、なかなかすんなりとは外せないだろう。
(クリストフさまは、あまり女性のコルセットを外したことがないのかしら)
ふと疑問に思ったけれど、とにかくこの機会を逃してはならない。
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