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第3-1章 私は聖地より脱出しました
私は王子と結ばれました
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「ようやく明かしてくれたって喜ぶべきなのか、今まで信用されてなかったんだって落ち込むべきなのか」
私は何も言い返せませんでした。彼が思っているようにこれ以上余計な心配をしてほしくなかったから喋らなかったのではなく、単に知る必要は無いと判断したからです。私が些事と思っていてもチェーザレにとっては違うとしたら、申し訳なく思います。
「他に知ってる奴はいるのか?」
「セラフィナとトビアには話しました。二人とも同じ境遇でしたので」
「……本当か? 今まで気づかなかった」
「お父様にもお母様にも打ち明けていません。そう言った意味ではチェーザレに初めて聞いてもらいました」
「……そうか」
セラフィナが転生したベネデッタだったので乙女げーむの設定は根底から覆ってはいます。別に祝福の奇蹟なんて羨ましいとも思いませんし、素敵な殿方との恋愛に興じても関係ありません。むしろこれからも良き姉妹関係のままでいたいと思うほどです。
それでも、私が人並みの幸せを得るには脚本に記された破滅への道標を何としてでも打ち壊さねばなりません。その為にもアウローラには何としてでも女教皇に就任していただき、救出の恩をもって色々と便宜を図ってもらわねば。
「チェーザレの心配は嬉しいのですが、アウローラ様が帰還しないと意味がありません。私は聖女方と共に最後まで残ります」
「……事情は分かった。なら、俺も残る」
チェーザレは私の隣に座り、私の手を取りました。私の手が痛くならないよう、優しく添えるように。
「チェーザレは王子なんですから無理を通せば明日にでも聖地から離れられますよね。家臣の方からは進言されなかったんですか?」
「キアラも俺の身を案じてくれてるんだと思うけれど、俺はキアラが残る限り離れるつもりは無い。俺が絶対にキアラを守るから」
チェーザレは身体をこちらに向け、真正面から私を見つめました。座高も差があるので私は少し顎を上げる形になります。間近で見ると端正な顔立ちをしています。まつげも長く瞳は輝き、顎の線ががっちりしてきており男らしさを感じさせます。
「言っておくが、俺は聖女とキアラだったらキアラを取るからな。自分より先に聖女を救え、なんて言うのは無しな」
「私だってわが身は可愛いですからそんな命を捨てる覚悟は……確かに本当にそんな状況に遭遇してしまったらそう口走るかもしれませんね」
「神託より自分の方を優先して欲しいんだ。何だったらキアラを待っている人のためにって思ってもいい」
「……それなら確かに生き延びなければって思えますね」
チェーザレが奥側の手を私の奥の肩に添えました。自然と私の身体もチェーザレに向きます。彼との距離がとても近く、周りが静かなのもあって彼の吐息の音が聞こえます。それより自分の心臓の高鳴りがうるさくなってたまりません。
「……キアラ」
「……何でしょうか?」
「俺は、キアラに幸せになってほしい」
「ええ」
「俺がキアラを幸せにしたい」
「ええ」
更に二人の距離が近づきます。既にお互いの吐く息が相手の顔にかかるぐらいに。身体も寄っているので既に私の膨らんだ胸と彼の鍛えられた胸が触れ合っています。いつの間にか彼の太い腕が私の背中に回されていました。私も自分の手を彼の首に回します。
私が救った時にはあんなにもか弱かったのに。
今ではこんなに立派になって私を守ってくれる、私を想ってくれる。
私は……そんな彼と一緒に幸せになりたいと願います。
「キアラ、愛してる」
「愛しています、チェーザレ」
大切に思う心を愛と表現し、私達は自然と相手の全てを欲しました。
恋しい人を求め、愛する人を受け入れ、思い人に全てを捧げます。
かけがえのない人の名を何度も口にします。
これまで私達が抱いていた思いをさらけ出しました。
互いを確かめ合い、むさぼるように味わいました。
嗚呼。私は今、チェーザレと一つになっています。
私は何も言い返せませんでした。彼が思っているようにこれ以上余計な心配をしてほしくなかったから喋らなかったのではなく、単に知る必要は無いと判断したからです。私が些事と思っていてもチェーザレにとっては違うとしたら、申し訳なく思います。
「他に知ってる奴はいるのか?」
「セラフィナとトビアには話しました。二人とも同じ境遇でしたので」
「……本当か? 今まで気づかなかった」
「お父様にもお母様にも打ち明けていません。そう言った意味ではチェーザレに初めて聞いてもらいました」
「……そうか」
セラフィナが転生したベネデッタだったので乙女げーむの設定は根底から覆ってはいます。別に祝福の奇蹟なんて羨ましいとも思いませんし、素敵な殿方との恋愛に興じても関係ありません。むしろこれからも良き姉妹関係のままでいたいと思うほどです。
それでも、私が人並みの幸せを得るには脚本に記された破滅への道標を何としてでも打ち壊さねばなりません。その為にもアウローラには何としてでも女教皇に就任していただき、救出の恩をもって色々と便宜を図ってもらわねば。
「チェーザレの心配は嬉しいのですが、アウローラ様が帰還しないと意味がありません。私は聖女方と共に最後まで残ります」
「……事情は分かった。なら、俺も残る」
チェーザレは私の隣に座り、私の手を取りました。私の手が痛くならないよう、優しく添えるように。
「チェーザレは王子なんですから無理を通せば明日にでも聖地から離れられますよね。家臣の方からは進言されなかったんですか?」
「キアラも俺の身を案じてくれてるんだと思うけれど、俺はキアラが残る限り離れるつもりは無い。俺が絶対にキアラを守るから」
チェーザレは身体をこちらに向け、真正面から私を見つめました。座高も差があるので私は少し顎を上げる形になります。間近で見ると端正な顔立ちをしています。まつげも長く瞳は輝き、顎の線ががっちりしてきており男らしさを感じさせます。
「言っておくが、俺は聖女とキアラだったらキアラを取るからな。自分より先に聖女を救え、なんて言うのは無しな」
「私だってわが身は可愛いですからそんな命を捨てる覚悟は……確かに本当にそんな状況に遭遇してしまったらそう口走るかもしれませんね」
「神託より自分の方を優先して欲しいんだ。何だったらキアラを待っている人のためにって思ってもいい」
「……それなら確かに生き延びなければって思えますね」
チェーザレが奥側の手を私の奥の肩に添えました。自然と私の身体もチェーザレに向きます。彼との距離がとても近く、周りが静かなのもあって彼の吐息の音が聞こえます。それより自分の心臓の高鳴りがうるさくなってたまりません。
「……キアラ」
「……何でしょうか?」
「俺は、キアラに幸せになってほしい」
「ええ」
「俺がキアラを幸せにしたい」
「ええ」
更に二人の距離が近づきます。既にお互いの吐く息が相手の顔にかかるぐらいに。身体も寄っているので既に私の膨らんだ胸と彼の鍛えられた胸が触れ合っています。いつの間にか彼の太い腕が私の背中に回されていました。私も自分の手を彼の首に回します。
私が救った時にはあんなにもか弱かったのに。
今ではこんなに立派になって私を守ってくれる、私を想ってくれる。
私は……そんな彼と一緒に幸せになりたいと願います。
「キアラ、愛してる」
「愛しています、チェーザレ」
大切に思う心を愛と表現し、私達は自然と相手の全てを欲しました。
恋しい人を求め、愛する人を受け入れ、思い人に全てを捧げます。
かけがえのない人の名を何度も口にします。
これまで私達が抱いていた思いをさらけ出しました。
互いを確かめ合い、むさぼるように味わいました。
嗚呼。私は今、チェーザレと一つになっています。
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