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Interlude1 アレクサンドラのその後
公爵令嬢カロリーナの婚姻(後)
ニコラスの評判はこちら側にも伝わってきている。領地運営と国の政治の両面で実にやり手で、固辞しなかったら将来宰相にも抜擢されるかもしれないって讃えられるほどの有望株だ、と。
そして何よりニコラスは第一王女であり実質的な王太子でもあるフアナ殿下にとても慕われている。おじ様とか呼ばれているんだとか何とか。ある程度成長した今でもフアナ殿下はニコラスを頼っているし、信用している。
そんな感じに優秀だからか、ニコラスは彼が成人を迎えると早々と公爵の座を継承したらしい。先代公爵夫妻は彼に全てを委ねて悠々自適な引退生活を送っている、と伝えられている。
そんな彼にも二つほど欠点があってね。
一つは感情をあまり表に出さないのもあって無愛想だって点。本人も必要以上に人と関わりたくないのか、あまり社交界に姿を見せないと聞く。例外はフアナ殿下に命じられた場合ぐらいじゃないかしらね。
もう一つは、二十代も半ばに入った彼は特定の女性と婚姻どころか婚約者すらいない点ね。勿論彼が望めば引く手あまたでしょうし、交際を申し込まれた回数も両手で数え切れないぐらいでしょう。
このニコラスがフアナ殿下の王配になるんじゃないか、とまで噂されたこともあるけれど、蓋を開ければご覧の通り。じゃあニコラスは今後どうするんだ、と密かに騒がれて今日に至る、ってところかしら。
(ニコラス閣下がカロリーナの相手じゃないかしらねー。彼なら彼女に相応しいし)
それにしても……直に会ってみてニコラスにはどうも既視感を覚えるんだけれど。でも別にここ数代に渡ってうちの家からあっちに嫁いだ女性もいないし、知り合いに似てるわけでもないのよねえ。どうしてかしら?
つつがなく出迎えも終わったので隣国一団はそれぞれ滞在先に向かっていった。フアナ殿下とお付きの侍女、そして彼女の護衛騎士は王宮に留まり、貴族ご一行は各々交流がある家や外国貴族御用達の宿泊施設に滞在する予定だ。
「ようこそ我が国へいらっしゃいました、ニコラス様」
そして、ニコラスを迎えに来た馬車に描かれた家紋は案の定で、そして馬車から降りて優雅にカーテシーをした淑女もまた想像通りだった。むしろもうちょっと捻りが欲しかったぐらいだわ。
彼女、カロリーナへ歩み寄ったニコラスは、優しく彼女を抱きしめた。そして彼女にだけ聞こえるように耳元に口を近づけ、何やら囁く。カロリーナが驚きをあらわにしながらも口元を緩めて頬を染めた辺り、甘い言葉を送ったようだ。
ソレを見た観衆に電流が走る。
「嘘、ニコラス閣下に女性の相手が……!?」
「カロリーナ公爵ご令嬢があんなにも嬉しそうに……」
そりゃそうだろ的な反応ごちそうさまです。護衛騎士、使用人、貴族問わず突如降って湧いたように明らかになったこの交際は驚きものでしょうから。ニコラスに付き従ってた秘書官なんて感極まって泣きそうじゃないの。
そして隣国の人達は皆納得しているようだった。今まで婚約関係を公にしていなかったのはカロリーナに要らない心配や負担をかけたくなかったからか、って所ね。その配慮は色々と立ち位置が不安定だった彼女にとってありがたかったことでしょう。
「そういうわけで、わたくしはニコラス様に嫁ぐことになりましたの」
ニコラスからの熱い抱擁から解放されたカロリーナははにかみながら報告してきた。とっても幸せそうで何よりです。
……もしかして私もこんな感じの温かい目で見られてたんじゃないでしょうね?
「素晴らしい殿方とご婚姻なさるのはとても喜ばしいです」
「ええ。この縁が両国のさらなる架け橋になれば、と願いますわ」
ニコラスも心なしか優しい眼差しをカロリーナに送ってるし、カロリーナもデレてるし、羨ましいったらありゃしない。こうなったら私だって今晩ジェラールにいっぱい愛してもらうんだから。
……こうしてニコラスとカロリーナが並ぶと既視感が更に増した。でも私が知る人物には絵画で描かれる先人達を含めても引っかからないし。やっぱ気の所為でした、って見切りをつけるのが一番なんじゃないかしら。
「カロリーナ。私はこの日が来るのをずっと待ちわびていた。共に幸せになろう」
「まあニコラス様。嬉しいですわ……」
お二人さん、見せびらかすようにいちゃいちゃするわね。家でやりなさいよ。
この二人の愛の果てに生まれてくる子はさぞご立派なんでしょうね。
(……ん? ニコラスとカロリーナの子供?)
ちょっと待って。
隣国バエティカ王国公爵のニコラスの子供?
それから妙に心当たりがあるニコラスの見た目は……。
気付いた。気付いてしまった。
気付かなければ良かった、とまで後悔するぐらい衝撃だった。
思わず叫びだしそうになって口を塞いでしまった。
(そうよ、ニコラス公爵って、『どきエデ2』の主要キャラ、悪役令嬢コンスタンサの父親じゃないの!)
『どきエデ2』での公爵令嬢コンスタンサは王太子攻略の際に立ちはだかってくる。ただ作中に複数人いる他のライバル令嬢にもコンスタンサが助力しているためか、最終的にはその報いを受ける結末だったって記憶してる。
既視感はこのせいか。そりゃあニコラス本人から心当たりを探っても難しいわけね。けれど言われてみれば確かにコンスタンサはニコラスとカロリーナの特徴を兼ね備えているわね。それも結構いい所取りって感じ。
(そりゃあカロリーナの娘だったらアレだけ美人なのは納得だわ。ツンとした感じなのはニコラス似かしら)
思わぬ事実に『どきエデ2』のファンでもあった前世の記憶が喜びの声をあげてるんだけれど、同時に不安がよぎる。
だって、『どきエデ2』の脚本通りになったらコンスタンサは最悪破滅する。
カロリーナは友人よ。公爵家の娘って立場が一緒だったから唯一対等に接してこられたもの。時には親しく今後を語り合い、時には意見が食い違って衝突して、そうして今の私達がここにいる。
この前の断罪劇で会場内がアルフォンソ様が正義で私が悪だって雰囲気にならなかったのは事前にカロリーナが動いてくれたおかげ。攻略対象者の一人を抑え込んでもくれたし。この恩は返してない。
「カロリーナ様」
「はい、何でしょうか?」
『どきエデ』での借りは、『どきエデ2』で返すとしましょう。
「何か困ったことがありましたら力になります。いえ、そちらが断ってもお節介はかけます、と予め宣言しましょう」
「アレクサンドラ様のことですから悪いようにはならないのでしょうけれど……まだ詳細は教えていただけないのでしょう?」
「ええ、その時が来てからのお楽しみ、と言うことで」
「ふふっ。では楽しみにさせていただきますわ」
私とカロリーナは軽く抱擁を交わした。
こんな風に気さくな触れ合いは今後出来ないでしょうから、最初で最後ね。
「達者で。ますますのご活躍が聞けるのをお待ちしています」
「貴女様こそわたくし達の国をよろしくお願いしますわ」
こうしてカロリーナはニコラスへと嫁いでいき、公爵夫人になった。優秀な彼女にぎこちなさがあったのは最初だけで、すぐにその場所に順応した。フアナ殿下とも良好な関係を築き上げ、公爵家のますますの発展に貢献するだろう、とか何とか。
そして数年後、彼女から第二子誕生の手紙が送られてきた。
その名は古の大帝国の皇帝にあやかり、コンスタンサと名付けたそうだ。
丁度私の第二子、そして第二王子であるレオンと同い年のようね。
そして何よりニコラスは第一王女であり実質的な王太子でもあるフアナ殿下にとても慕われている。おじ様とか呼ばれているんだとか何とか。ある程度成長した今でもフアナ殿下はニコラスを頼っているし、信用している。
そんな感じに優秀だからか、ニコラスは彼が成人を迎えると早々と公爵の座を継承したらしい。先代公爵夫妻は彼に全てを委ねて悠々自適な引退生活を送っている、と伝えられている。
そんな彼にも二つほど欠点があってね。
一つは感情をあまり表に出さないのもあって無愛想だって点。本人も必要以上に人と関わりたくないのか、あまり社交界に姿を見せないと聞く。例外はフアナ殿下に命じられた場合ぐらいじゃないかしらね。
もう一つは、二十代も半ばに入った彼は特定の女性と婚姻どころか婚約者すらいない点ね。勿論彼が望めば引く手あまたでしょうし、交際を申し込まれた回数も両手で数え切れないぐらいでしょう。
このニコラスがフアナ殿下の王配になるんじゃないか、とまで噂されたこともあるけれど、蓋を開ければご覧の通り。じゃあニコラスは今後どうするんだ、と密かに騒がれて今日に至る、ってところかしら。
(ニコラス閣下がカロリーナの相手じゃないかしらねー。彼なら彼女に相応しいし)
それにしても……直に会ってみてニコラスにはどうも既視感を覚えるんだけれど。でも別にここ数代に渡ってうちの家からあっちに嫁いだ女性もいないし、知り合いに似てるわけでもないのよねえ。どうしてかしら?
つつがなく出迎えも終わったので隣国一団はそれぞれ滞在先に向かっていった。フアナ殿下とお付きの侍女、そして彼女の護衛騎士は王宮に留まり、貴族ご一行は各々交流がある家や外国貴族御用達の宿泊施設に滞在する予定だ。
「ようこそ我が国へいらっしゃいました、ニコラス様」
そして、ニコラスを迎えに来た馬車に描かれた家紋は案の定で、そして馬車から降りて優雅にカーテシーをした淑女もまた想像通りだった。むしろもうちょっと捻りが欲しかったぐらいだわ。
彼女、カロリーナへ歩み寄ったニコラスは、優しく彼女を抱きしめた。そして彼女にだけ聞こえるように耳元に口を近づけ、何やら囁く。カロリーナが驚きをあらわにしながらも口元を緩めて頬を染めた辺り、甘い言葉を送ったようだ。
ソレを見た観衆に電流が走る。
「嘘、ニコラス閣下に女性の相手が……!?」
「カロリーナ公爵ご令嬢があんなにも嬉しそうに……」
そりゃそうだろ的な反応ごちそうさまです。護衛騎士、使用人、貴族問わず突如降って湧いたように明らかになったこの交際は驚きものでしょうから。ニコラスに付き従ってた秘書官なんて感極まって泣きそうじゃないの。
そして隣国の人達は皆納得しているようだった。今まで婚約関係を公にしていなかったのはカロリーナに要らない心配や負担をかけたくなかったからか、って所ね。その配慮は色々と立ち位置が不安定だった彼女にとってありがたかったことでしょう。
「そういうわけで、わたくしはニコラス様に嫁ぐことになりましたの」
ニコラスからの熱い抱擁から解放されたカロリーナははにかみながら報告してきた。とっても幸せそうで何よりです。
……もしかして私もこんな感じの温かい目で見られてたんじゃないでしょうね?
「素晴らしい殿方とご婚姻なさるのはとても喜ばしいです」
「ええ。この縁が両国のさらなる架け橋になれば、と願いますわ」
ニコラスも心なしか優しい眼差しをカロリーナに送ってるし、カロリーナもデレてるし、羨ましいったらありゃしない。こうなったら私だって今晩ジェラールにいっぱい愛してもらうんだから。
……こうしてニコラスとカロリーナが並ぶと既視感が更に増した。でも私が知る人物には絵画で描かれる先人達を含めても引っかからないし。やっぱ気の所為でした、って見切りをつけるのが一番なんじゃないかしら。
「カロリーナ。私はこの日が来るのをずっと待ちわびていた。共に幸せになろう」
「まあニコラス様。嬉しいですわ……」
お二人さん、見せびらかすようにいちゃいちゃするわね。家でやりなさいよ。
この二人の愛の果てに生まれてくる子はさぞご立派なんでしょうね。
(……ん? ニコラスとカロリーナの子供?)
ちょっと待って。
隣国バエティカ王国公爵のニコラスの子供?
それから妙に心当たりがあるニコラスの見た目は……。
気付いた。気付いてしまった。
気付かなければ良かった、とまで後悔するぐらい衝撃だった。
思わず叫びだしそうになって口を塞いでしまった。
(そうよ、ニコラス公爵って、『どきエデ2』の主要キャラ、悪役令嬢コンスタンサの父親じゃないの!)
『どきエデ2』での公爵令嬢コンスタンサは王太子攻略の際に立ちはだかってくる。ただ作中に複数人いる他のライバル令嬢にもコンスタンサが助力しているためか、最終的にはその報いを受ける結末だったって記憶してる。
既視感はこのせいか。そりゃあニコラス本人から心当たりを探っても難しいわけね。けれど言われてみれば確かにコンスタンサはニコラスとカロリーナの特徴を兼ね備えているわね。それも結構いい所取りって感じ。
(そりゃあカロリーナの娘だったらアレだけ美人なのは納得だわ。ツンとした感じなのはニコラス似かしら)
思わぬ事実に『どきエデ2』のファンでもあった前世の記憶が喜びの声をあげてるんだけれど、同時に不安がよぎる。
だって、『どきエデ2』の脚本通りになったらコンスタンサは最悪破滅する。
カロリーナは友人よ。公爵家の娘って立場が一緒だったから唯一対等に接してこられたもの。時には親しく今後を語り合い、時には意見が食い違って衝突して、そうして今の私達がここにいる。
この前の断罪劇で会場内がアルフォンソ様が正義で私が悪だって雰囲気にならなかったのは事前にカロリーナが動いてくれたおかげ。攻略対象者の一人を抑え込んでもくれたし。この恩は返してない。
「カロリーナ様」
「はい、何でしょうか?」
『どきエデ』での借りは、『どきエデ2』で返すとしましょう。
「何か困ったことがありましたら力になります。いえ、そちらが断ってもお節介はかけます、と予め宣言しましょう」
「アレクサンドラ様のことですから悪いようにはならないのでしょうけれど……まだ詳細は教えていただけないのでしょう?」
「ええ、その時が来てからのお楽しみ、と言うことで」
「ふふっ。では楽しみにさせていただきますわ」
私とカロリーナは軽く抱擁を交わした。
こんな風に気さくな触れ合いは今後出来ないでしょうから、最初で最後ね。
「達者で。ますますのご活躍が聞けるのをお待ちしています」
「貴女様こそわたくし達の国をよろしくお願いしますわ」
こうしてカロリーナはニコラスへと嫁いでいき、公爵夫人になった。優秀な彼女にぎこちなさがあったのは最初だけで、すぐにその場所に順応した。フアナ殿下とも良好な関係を築き上げ、公爵家のますますの発展に貢献するだろう、とか何とか。
そして数年後、彼女から第二子誕生の手紙が送られてきた。
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