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Interlude1 アレクサンドラのその後
公爵令嬢コンスタンサの覚醒(前)
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■Side コンスタンサ
私、バエティカ王国の公爵家に生を受けたコンスタンサは、短い人生の中で今一番混乱していると思います。多分この感覚は誰に説明しても理解してもらえないでしょうし、私自身頭の中で整理しきれませんので。
そうですね、まずは軽く今の自分について振り返ってみましょう。
バエティカ王国の公爵家はタラコネンシス王国同様に建国時に王家と盟友だった者の家系です。そのため一代または二代限りで臣籍降下する王族と異なり、致命的な不祥事やバエティカ王国そのものが終焉を迎えるまでは公爵のまま、権威を維持します。
そんな由緒正しい家柄のため、度々王妃となる娘を輩出しています。今回は数多のご令嬢方を退けて私が次の王妃となるため、王太子殿下の婚約者に選ばれました。名誉あることですので両親はおろか私自身もとても誇らしく思ったものです。
王太子殿下、カルロス様はとても紳士的な方でした。文武両道で教養も兼ね備え、非の打ち所が無く、次の代も安泰だ、と讃えられるほどです。私に対しても誠実で、私を気遣ってくださり、彼との時間はとても有意義で楽しいものでした。
唯一欠点をあげるとすれば、若干思い込みが激しくて視野が狭くなる傾向にあるところでしょうか。ですが完璧な人間などこの世には存在しませんし、それなら伴侶となる私が彼の代わりに広く見渡さば済む話だ、とあまり深刻に考えていませんでした。
国王となったカルロス様をこの私が国母となり支える。
そんな未来像を疑ってすらいませんでした。
――あのお方と会うまでは。
国王陛下が崩御なさり、フアナ王太子殿下が即位なされた際、宴が催されました。公爵家の娘でありカルロス様の婚約者でもある私は当然参加することとなりましたが、私はあの方、隣国の王太子妃であらせられるアレクサンドラ様と出会いました。
お母様と妃殿下は学友だったそうで、二人の会話はとても打ち解けたものでしたし、その縁で私も妃殿下とは何度もお会いしたことがあります。お母様が交流を続けるのも納得なほど立派でしたし格好良いとも思えました。
(ただ、あの方が私を見る目……妙に気になるのよね)
友人の娘、未来の王太子妃を見つめる眼差しとは異なる色が混ざっていると気付いたのはいつ頃でしょうか? それとも私が成長するに連れてその色を深めていったのでしょうか? とにかく、苦手を通り越して警戒すら覚え始めていました。
そんな彼女は、私にこのように囁いてきました。
「私はコンスタンサほど優秀なら別に嫁がなくてもいいとも思うのだけれどね」
嫁がなくてもいい? どこに? もちろん王家に。
私が嫁がなかったらどうなる? 私が公爵家に留まる。
私に公爵家のお荷物になれと……いえ、違う。妃殿下は暗にこう言っていました。
「コンスタンサが公爵家を継げばいいじゃない。王家なんか突き放してさ」
ご冗談を、と、なんとか取り繕いましたが、おそらく妃殿下にはお見通しだったでしょう。弟のエクトルにも余計な重圧になるはっぱをかけましたし、妃殿下は明確な意図をもって私に可能性を投げかけたのでしょう。
アレクサンドラ妃殿下の身に起こった出来事は私も把握しています。
当時タラコネンシス王国王太子だったアルフォンソ殿下の婚約者だった彼女は、婚約破棄の動きを事前に察知し、返り討ちにした挙げ句、別の王子と添い遂げました。そしてじきに王妃へと上り詰めることでしょう。
そんな彼女だからこそ、私もまた同じようにカルロス様に婚約破棄されると危惧されているのでしょうか? 今のところカルロス様との仲は良好ですし、何も心配する必要無いのに。そう、無いはずですが……。
「とっておきの教師を紹介してあげる。人生の先輩から学ぶべきことがまだあるんじゃないか、って思うの」
そして妃殿下の提案には耳を疑いました。バエティカ王国にはタラコネンシス王国に引けを取らない優秀な教師が多くいましたし、既に王太子妃教育も佳境に入っている私に今更余所者から学ぶことなど無いというのに。
更には第二王子殿下をこちらに留学させると表明なさいました。一体何をお考えなのか。これから先何が起こるか知っているのか。色々と疑問は付きませんでしたが、お母様方が反対しなかったので受け入れることにしました。
そして、お母様と妃殿下の内緒話がただ事ではないと確信させたのです。
「貴女様はまた出る、とお考えなの?」
「出る、とは? ああ、『傾国』が、ですか」
「そう、『女狐』ですわ」
つまり、妃殿下は明らかに確信なさっている様子でした。
この私は何もしていなければ婚約破棄された上で破滅するだろう、と。
私、バエティカ王国の公爵家に生を受けたコンスタンサは、短い人生の中で今一番混乱していると思います。多分この感覚は誰に説明しても理解してもらえないでしょうし、私自身頭の中で整理しきれませんので。
そうですね、まずは軽く今の自分について振り返ってみましょう。
バエティカ王国の公爵家はタラコネンシス王国同様に建国時に王家と盟友だった者の家系です。そのため一代または二代限りで臣籍降下する王族と異なり、致命的な不祥事やバエティカ王国そのものが終焉を迎えるまでは公爵のまま、権威を維持します。
そんな由緒正しい家柄のため、度々王妃となる娘を輩出しています。今回は数多のご令嬢方を退けて私が次の王妃となるため、王太子殿下の婚約者に選ばれました。名誉あることですので両親はおろか私自身もとても誇らしく思ったものです。
王太子殿下、カルロス様はとても紳士的な方でした。文武両道で教養も兼ね備え、非の打ち所が無く、次の代も安泰だ、と讃えられるほどです。私に対しても誠実で、私を気遣ってくださり、彼との時間はとても有意義で楽しいものでした。
唯一欠点をあげるとすれば、若干思い込みが激しくて視野が狭くなる傾向にあるところでしょうか。ですが完璧な人間などこの世には存在しませんし、それなら伴侶となる私が彼の代わりに広く見渡さば済む話だ、とあまり深刻に考えていませんでした。
国王となったカルロス様をこの私が国母となり支える。
そんな未来像を疑ってすらいませんでした。
――あのお方と会うまでは。
国王陛下が崩御なさり、フアナ王太子殿下が即位なされた際、宴が催されました。公爵家の娘でありカルロス様の婚約者でもある私は当然参加することとなりましたが、私はあの方、隣国の王太子妃であらせられるアレクサンドラ様と出会いました。
お母様と妃殿下は学友だったそうで、二人の会話はとても打ち解けたものでしたし、その縁で私も妃殿下とは何度もお会いしたことがあります。お母様が交流を続けるのも納得なほど立派でしたし格好良いとも思えました。
(ただ、あの方が私を見る目……妙に気になるのよね)
友人の娘、未来の王太子妃を見つめる眼差しとは異なる色が混ざっていると気付いたのはいつ頃でしょうか? それとも私が成長するに連れてその色を深めていったのでしょうか? とにかく、苦手を通り越して警戒すら覚え始めていました。
そんな彼女は、私にこのように囁いてきました。
「私はコンスタンサほど優秀なら別に嫁がなくてもいいとも思うのだけれどね」
嫁がなくてもいい? どこに? もちろん王家に。
私が嫁がなかったらどうなる? 私が公爵家に留まる。
私に公爵家のお荷物になれと……いえ、違う。妃殿下は暗にこう言っていました。
「コンスタンサが公爵家を継げばいいじゃない。王家なんか突き放してさ」
ご冗談を、と、なんとか取り繕いましたが、おそらく妃殿下にはお見通しだったでしょう。弟のエクトルにも余計な重圧になるはっぱをかけましたし、妃殿下は明確な意図をもって私に可能性を投げかけたのでしょう。
アレクサンドラ妃殿下の身に起こった出来事は私も把握しています。
当時タラコネンシス王国王太子だったアルフォンソ殿下の婚約者だった彼女は、婚約破棄の動きを事前に察知し、返り討ちにした挙げ句、別の王子と添い遂げました。そしてじきに王妃へと上り詰めることでしょう。
そんな彼女だからこそ、私もまた同じようにカルロス様に婚約破棄されると危惧されているのでしょうか? 今のところカルロス様との仲は良好ですし、何も心配する必要無いのに。そう、無いはずですが……。
「とっておきの教師を紹介してあげる。人生の先輩から学ぶべきことがまだあるんじゃないか、って思うの」
そして妃殿下の提案には耳を疑いました。バエティカ王国にはタラコネンシス王国に引けを取らない優秀な教師が多くいましたし、既に王太子妃教育も佳境に入っている私に今更余所者から学ぶことなど無いというのに。
更には第二王子殿下をこちらに留学させると表明なさいました。一体何をお考えなのか。これから先何が起こるか知っているのか。色々と疑問は付きませんでしたが、お母様方が反対しなかったので受け入れることにしました。
そして、お母様と妃殿下の内緒話がただ事ではないと確信させたのです。
「貴女様はまた出る、とお考えなの?」
「出る、とは? ああ、『傾国』が、ですか」
「そう、『女狐』ですわ」
つまり、妃殿下は明らかに確信なさっている様子でした。
この私は何もしていなければ婚約破棄された上で破滅するだろう、と。
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