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第二部

公爵家のお茶会にてⅥ

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「ディアナ。どこにいたの? 私も探したのよ」

 庭園にもここのホールにも姿は見えなかったのだけど。

「そうなの? じゃあ、入れ違いになったのかもね。ちょうどシャロン様にお会いしたから尋ねたら、室内ホールにいるだろうって聞いたのよ。だから、急いで駆けつけたの」

「そうだったのね。でもよかったわ。見つけてくれて」

 ディアナの姿を認めると笑みが零れました。
 親しい友人がいると心強いわ。

「おばさまはどこにいらっしゃるのかしら? ご挨拶しなくては」

 ディアナがいるということは、母親であるキャサリン様も招待されているはず。

「母はいないわよ。父に同行して外国に外遊中なの。帰国は二週間後くらいね」

「あいかわらず、お忙しいのね」

 ディアナの父親コンカドール様は外交官。
 職業柄、両親が留守することも多くて小さい頃は寂しい思いもしたとか。ディアナは三人兄妹で末っ子。一番上のお兄様が、面倒を見てくれてかわいがってもらったと話してくれたことがあったわ。

「帰ってきたら知らせるから、遊びにいらっしゃいな。お土産もあると思うしね」

「ええ。楽しみにしてるわ」

 帰国するたびに、私にもお土産を買ってきてくださるのですよね。いただくのは外国の珍しい品物ばかり。ディアナの友人だからと大切に思って、よくしてくださるその気持ちが嬉しいわ。

 ディアナは席に着くと視線を室内に泳がせます。
 それに気づいたのか、後ろを向いていたはずのメイドがディアナの元へとやってきました。

「温かい飲み物と軽くつまめるものを」

「ハイ。かしこまりました」

 メイドは一礼すると、奥のフードカウンターへと向かっていきました。

「ここって、セルフサービスでは?」

 ビュッフェ形式なので自分で料理や飲み物は取りに行く方式です。見る限り皆さん、トレイを持ってカウンターのところに並んでいます。

「基本はそうだけど。メイドもいるし、頼めば持ってきてくれるのだから、それもいいのではない?」

「それは……そうね」

 好きなものを好きなだけ選んで食べられるのがビュッフェ形式の醍醐味。その楽しみを早々に放棄しているディアナ。
 少し苦笑いを浮かべていると、先ほどのメイドが料理を運んできました。
 テーブルに並べられたのは、大皿に盛った一口サイズの様々な料理。しかもディアナが好きなチーズを使ったものがメインで、どれも二つずつ。
 これは私の分もあるってことかしら?
 
 目の前に現れた料理に目が釘付けになっていると、私のテーブルにも皿とカトラリーが準備されました。
 やっぱり。
 
「ほかに欲しいものがあればメイドに頼むか、取りに行ったらいいわ」

 ディアナは満足した様子で、ロイヤルミルクティーを飲んでいます。これもディアナの好物。料理も飲み物も指定したものはなかったはずなのに、彼女の好みを把握してるなんて……それとも、偶然なのかしら?

「こちらのメイドって気が利くのね。私の分まで用意してくれるなんて」

 普通は言われたことのみ行動するのが当たり前なのに。余計なことをするとトラブルに発展することもあるので、使用人は独自の判断はしない。これは鉄則です。例外はありますが。

「そうね。それこそお客の接待には臨機応変さが求められるから、よく訓練されているんじゃないのかしら? なんたって、筆頭公爵家ですもの」

 ディアナはお皿にいくつか料理をのせるとニコニコとした表情で食べ始めました。

「朝が早かったから、お腹がすいていたのよ」

「そういわれてみれば、私も」

 お茶会に出席するということで、いつもより早めに朝食をとって準備をしたのだったわ。先ほどまで緊張していたから感じなかったけれど、意識したら急にお腹がすいてきました。

 吟味された食材に様々な工夫を凝らされた調理方法が目を引き、食欲をそそります。勉強になるわ。
 目で堪能した後は私も料理を取り分けて口に運びました。
 しばらく、料理に舌鼓を打ちながら談笑していると、見知った令嬢が私たちの所へ近づいてきます。
 
「ビビアン様」

「こんにちわ。わたくしもご一緒してもよろしいかしら?」

 ディアナが名前を呼ぶとビビアン様はにっこりと私に微笑みかけました。


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