タイムリープした俺には逆らえない〜未来の知識で嗜む復讐のカルテ〜

刹那冥夜

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5話

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​ あれから十日が過ぎた。

​ あの日、玲奈が「先生の手伝いで抜け出せなかった」と言い訳をしたことで、ミナたちの作戦は失敗に終わった。

 その後も、彼女たちは必死になって俺を「引き立て役」にしようとした。
教科書を隠したり、水をかけたり、あの手この手で俺を窮地に追い込み、くるみを登場させようとした。

​ だが、全て無駄だ。

 俺は未来の知識と、協力者の玲奈を使って全ての工作を事前に察知し、のらりくらりと回避し続けたからだ。

 そして、その結果は劇薬となって返ってきた。


​「……ねえ、もういいよ」


​ 放課後の教室。くるみが冷え切った目でミナたちを見下ろした。

​「何度やっても失敗ばかり。透くんと仲良くするチャンスを作ってって頼んだのに、これじゃ私の邪魔をしてるだけじゃない?」

「ち、違うのくるみ! 次こそは……」

「ううん、もう話しかけないで。一緒にいると私まで頭が悪そうだと思われるから」




​ 切り捨てられた。

 それだけではない。翌日から、クラスには奇妙な噂が流れ始めた。

 『ミナって、裏でパパ活してるらしいよ』
 『アイリ、手癖が悪くて人の財布から抜いてるんだって』

 根も葉もない、けれどあまりに具体的で悪質な噂。

 発信源はもちろん、可憐な笑顔を振りまく小日向くるみだ。

​ クラスの空気が変わるのに時間はかからなかった。

 昨日までカースト上位にいた二人は、今や嘲笑と無視の対象となった。

​ 行き場を失った二人のストレスは、当然のように俺に向かった。

 誰にも見られない場所で俺を殴り、罵る。
 それはもう、くるみへのアピールではない。
 俺という「自分より下の存在」を確認しなければ、自我が崩壊してしまうからこその、悲痛な自衛行為だった。


​ ――機は熟した。


 俺は、二人を別々に狩ることにした。




~~~~~~~~~




          
​ 放課後の理科準備室。

 俺が中に入ると、アイリが一人で俺の実験に使う衣服を切り刻んでいた。


​「死ね、死ね、死ねっ……! あんたのせいで、あんたのせいで!」

​ 涙を流しながらハサミを振るう姿は、鬼気迫るものがある。

 俺は背後から近づき、静かに声をかけた。

​「……楽しそうだな」

「ひっ!?」

​ アイリが飛び上がり、ハサミを取り落とす。
俺は床に落ちたハサミを拾い上げ、切っ先を彼女に向けた。

​「器物破損に、以前の暴行の録音データ。これを持って職員室に行けば、お前の推薦は確実になくなるな」

「や、やめて……! お願い、言わないで……!」
​ アイリがその場に泣き崩れる。

 教室では無視され、くるみには捨てられ、ここで退学になれば彼女の人生は終わりだ。

​「怖いか? 孤独になるのが」

​ 俺はしゃがみ込み、震える彼女の肩を抱いた。
 ビクリと体が跳ねるが、俺は構わず優しく抱き寄せる。

​「か、かわいそうに。辛かったな、アイリ」

「え……?」

​ 予想外の言葉に、アイリが涙で濡れた顔を上げる。

​「くるみに裏切られて、みんなに無視されて。お前の味方はもう誰もいない」

「う、うう……っ」

「だが、俺だけは違う」

​ 俺は彼女の涙を親指で拭い、そのまま唇を塞いだ。

​「んっ!? ……ん、ふぅ……」

​ 抵抗はなかった。
心が弱りきった人間は、差し伸べられた手に――それが悪魔の手であっても――縋り付くものだ。

 俺は彼女の耳元で甘く囁いた。
​「俺だけは、お前を見てる。俺だけは、お前を受け入れる。だから……お前も俺だけを見ろ」

「透、くん……」

​ 恐怖の中に確かな安堵を感じる。

 アイリの瞳から光が消え、俺への歪んだ希望を見つめる瞳へと変わる。

「………一人は……嫌なの…」






~~~~~~~~~~~



​ その日の夕方。帰り道にある公園の公衆トイレ。
 俺はミナを壁に押し付けていた。

​「は、離してよ! キモい!」

​ ミナはまだ気が強い。だが、その目は充血し、精神的な疲労は隠せていない。

 彼女はさっき、通りすがりに俺の足を蹴りつけ、「邪魔よゴミ」と吐き捨てた。

 その報復だ。

​「キモい男に、これから全てを奪われる気分はどうだ?」

​ 俺はスマホを取り出し、画面を見せた。

 そこには、彼女が万引きした商品の写真(玲奈から提供させた捏造証拠)が表示されている。

​「な、何これ!? 知らない、私やってない!」

「誰が信じる? 今のクラスでお前の味方をする奴なんて一人もいないぞ。くるみが『ミナちゃんならやりかねない』って言えば、それが真実になる」

​ ミナの顔色が土色に変わる。

 彼女は理解してしまったのだ。
自分の立場が、いかに脆く、絶望的であるかを。

​「いや……嫌よ……私…」

「助かりたいか?」

​ 俺は彼女の顎を持ち上げ、強引にキスをした。

 ミナが暴れる。俺の唇を噛み切ろうとする。

 だが俺は構わず、彼女のブラウスの中に手を滑り込ませた。

​「んぐっ!? や、め……!」

「お前はもう、独りなんだよ。誰も助けに来ない。俺以外はな」

​ 冷徹な事実を突きつけながら、巧みな手つきで彼女の身体を愛撫する。

 孤独感という寒さに震える心に、暴力的なまでの体温を注ぎ込む。

​「ほら、感じてるじゃないか。お前の体も、寂しいって言ってるぞ」

「ちが、う……あ、あっ……こわ…いっ…」

​ やがて、抵抗の手が弱まる。
彼女は、無意識の内、嗚咽交じりに俺の名前を呼んだ。

「ぁ……と…おる……」

「ああ、いい子だ。俺だけがお前を愛してやる」
​ プライドの高かったミナが、泣きながら俺に縋り付いてくる。

 学校中が敵に回っても、この男の腕の中にいれば「肯定」される。

 その錯覚こそが、俺が彼女たちにかけた呪いだ。
​ 二人の「駒」が、新たに盤上に加わった。

 くるみの手足をもぎ取り、逆に俺の手足として付け替える作業は順調だ。


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