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負けた理由の五箇条
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『試合に負けた、じゃあ、次は頑張って勝ちます、だけじゃダメなんだ。
何か負けた理由があるはずなんだ。
第一に試合内容、第二に練習方法、第三に休養の取り方、第四に栄養の取り方、第五に試合前の過ごし方。
必ず負けに繋がるなにか理由があった。それを自分で見つけろ。
そして、改善法を考え実践する。次の試合に勝つためにも負けた理由を見つけるんだ。
ボクシングは、倒すか倒されるかで勝敗を決めるただの殴り合いじゃない。ちゃんと理にかなった、科学的なスポーツとして捉えなくてはならないんだ』
わたしは、この剣崎さんの言葉を【負けた理由の五箇条】と、勝手に命名して、これらの項目を自分なりに考えに考えてみた。
一番に思い当たったのは、試合の2ラウンド辺りから足ががくがくと震えて力が入らなくなったこと。
それは、指摘されたように明らかに走り込みの不足だった。部活の時、一週間に一度のペースで新宿御苑の周りをみんなで走っていたけれど、それだけじゃ全く足りないと言われる。
そこで、毎日早朝のロードワークを自分に課した。
初めは布団の誘惑を断ち切るのが大変だったけれど、なんとか続けている。今郷館から王子の飛鳥山公園まで走り、公園で少しだけシャドーボクシングをやって、そのまま帰るというコースだ。
その後、部の練習の時に剣崎さんに走り込みの時間とコースを聞かれた。すると、翌日飛鳥山公園にジャージ姿の剣崎さんがいたのだ。
吃驚していると、有無を言わさずいきなりシャドーボクシングをやれと剣崎さんに言われた。
その日から毎日、剣崎さんは飛鳥山公園に配達のバイクで来てくれて、指導をしてくれた。
これで、絶対に早朝のロードワークはサボることができなくなった……。
「じゃあ、今度は、ステップアウトしながらジャブを打って」
「はい」
とは言うものの、下がりながらのジャブは打ったことがないので、スムーズにパンチが出ない。
「あまりこの動きはやったことがないようだね。この練習も大事なんだ。ステップアウトしながらでも、ジャブを出す。例えば、試合やスパーの時、自分が下がったときに相手はチャンスとばかりに出てくるだろ? その時に下がりながらでもジャブを出せば、相手の足を止めることができるんだ」
そう言えば大崎さんとの試合の時も、わたしは相手のパンチを避けるのに真っ直ぐに下がってしまって、追ってきた大崎さんのパンチを何発も貰ってしまっていた。
これも改善しなくてはならない問題のひとつだ。
何回も同じ動きをする。
ワンツーの後に、右のガードが下がる癖があることも指摘される。これは、自分でもわかっていたこと。最近は、修斗先輩に教えて貰った顎にタオルを挟む練習を疎かにしていた。これも、右の拳のガードが完全に癖になるまで、また続けなくてはならない。
辺りは大分明るくなってきて、散歩や犬を連れている人たちもちらほらと見るようになる。その人たちの視線も気になる所だが、剣崎さんは全く周りを気にすること無くわたしの指導を続けてくれる。
およそ1時間の練習が終わると、剣崎さんにお礼を言ってわたしは今郷館に走って帰る。
それからシャワーを浴びて朝食を食べ、学校に行く。授業が終わると、新宿キャンパスに行って練習をやり、くたくたになって帰ってくるという生活が続いていた。
何か負けた理由があるはずなんだ。
第一に試合内容、第二に練習方法、第三に休養の取り方、第四に栄養の取り方、第五に試合前の過ごし方。
必ず負けに繋がるなにか理由があった。それを自分で見つけろ。
そして、改善法を考え実践する。次の試合に勝つためにも負けた理由を見つけるんだ。
ボクシングは、倒すか倒されるかで勝敗を決めるただの殴り合いじゃない。ちゃんと理にかなった、科学的なスポーツとして捉えなくてはならないんだ』
わたしは、この剣崎さんの言葉を【負けた理由の五箇条】と、勝手に命名して、これらの項目を自分なりに考えに考えてみた。
一番に思い当たったのは、試合の2ラウンド辺りから足ががくがくと震えて力が入らなくなったこと。
それは、指摘されたように明らかに走り込みの不足だった。部活の時、一週間に一度のペースで新宿御苑の周りをみんなで走っていたけれど、それだけじゃ全く足りないと言われる。
そこで、毎日早朝のロードワークを自分に課した。
初めは布団の誘惑を断ち切るのが大変だったけれど、なんとか続けている。今郷館から王子の飛鳥山公園まで走り、公園で少しだけシャドーボクシングをやって、そのまま帰るというコースだ。
その後、部の練習の時に剣崎さんに走り込みの時間とコースを聞かれた。すると、翌日飛鳥山公園にジャージ姿の剣崎さんがいたのだ。
吃驚していると、有無を言わさずいきなりシャドーボクシングをやれと剣崎さんに言われた。
その日から毎日、剣崎さんは飛鳥山公園に配達のバイクで来てくれて、指導をしてくれた。
これで、絶対に早朝のロードワークはサボることができなくなった……。
「じゃあ、今度は、ステップアウトしながらジャブを打って」
「はい」
とは言うものの、下がりながらのジャブは打ったことがないので、スムーズにパンチが出ない。
「あまりこの動きはやったことがないようだね。この練習も大事なんだ。ステップアウトしながらでも、ジャブを出す。例えば、試合やスパーの時、自分が下がったときに相手はチャンスとばかりに出てくるだろ? その時に下がりながらでもジャブを出せば、相手の足を止めることができるんだ」
そう言えば大崎さんとの試合の時も、わたしは相手のパンチを避けるのに真っ直ぐに下がってしまって、追ってきた大崎さんのパンチを何発も貰ってしまっていた。
これも改善しなくてはならない問題のひとつだ。
何回も同じ動きをする。
ワンツーの後に、右のガードが下がる癖があることも指摘される。これは、自分でもわかっていたこと。最近は、修斗先輩に教えて貰った顎にタオルを挟む練習を疎かにしていた。これも、右の拳のガードが完全に癖になるまで、また続けなくてはならない。
辺りは大分明るくなってきて、散歩や犬を連れている人たちもちらほらと見るようになる。その人たちの視線も気になる所だが、剣崎さんは全く周りを気にすること無くわたしの指導を続けてくれる。
およそ1時間の練習が終わると、剣崎さんにお礼を言ってわたしは今郷館に走って帰る。
それからシャワーを浴びて朝食を食べ、学校に行く。授業が終わると、新宿キャンパスに行って練習をやり、くたくたになって帰ってくるという生活が続いていた。
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