聖剣使いの乙女は実は魔王の娘だった

桐夜 白

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魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約

魔王の娘 と 休戦締約と同盟条約 1

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──…人は、どうして争うのでしょう?
魔族は、どうして争うのでしょう?
民は、どうして争うのでしょう?

私は父から預かったコノ書状を持って、外を眺めて想う。

人は、魔族は、民は、いつから争い、そしてどうして憎み合うのでしょうか?
互いに神々を崇め、同じ大地に住みながら、どうして今日も争うのでしょうか?

私は知りたい。
誰もが争わない術(すべ)を。
そして実現したい。
コノ父から受け取った書状を、現実にすべく。

私は父から預かったコノ書状を持って、外を眺めて想う。

世界が、平和でありますように、と──



「魔王よ、覚悟! 
この天子、ジャンヌ・レインワーズ・フォン・テンペトラーが“聖剣の力”でお前を倒す!」

「ぐっ、ウワアアアア!!
お、おのれ…!
聖剣の乙女めェっ!!」

「世界は人間が統一し、平和を保つ!
コノ聖剣と共に!!」

壮麗な衣装を纏った長い髪の女性が、舞台の上で黒衣の大柄の男に蒼い剣を刺す。
魔法で包まれたソレは美しく、そして残酷に魔王と呼ばれた黒衣の大柄の男の身を貫いた。
黒衣の大柄の男が舞台の上で倒れる。
壮麗な衣装を纏った長い髪の女性は、魔王を見たまま一呼吸置くと、観客席の方を見て、蒼く輝く剣を掲げて強く言葉を放った。
ソレに誰もが息を忘れたように見続け、蒼く輝く剣が掲げられてしばらくしたらブワッと観客席の全員が立ち上がり歓喜に拍手をした。



「凄かったねー!コノ舞台!!」

「さすが聖剣の乙女!
やはり天子様が聖剣の乙女に相応しいですわ!」

「にしても流石は情熱と熱烈の国──ヴァレッタディーヴァ国!
素晴らしい迫真の演技だった!
まるで本物のようだったよ!」

情熱と熱烈の炎の国──ヴァレッタディーヴァ国国内の劇場から出てくる人が歓喜と興奮を露わに言葉を交える。
彼らはまさに心に炎を灯し、熱く語り合っていた。
まるで戦争に勝利した後のように。

「魔族との戦争も、聖剣の乙女が真に目覚めればきっと終結しますわ!」

「勿論だよ!
人間側の圧勝だよ!」

「でも今は劣勢とは聞いているけど…」

「大丈夫よ!
ココは西洋五大国よ!
国王様達は皆前線で戦ったことのある猛者ばかり!
特にヴァレッタディーヴァ国王とエンテイラー国王なんて幾度も幾度も前線で魔族の将軍達を勇猛果敢に倒してらっしゃる!
私達人間が魔族なんかに負けるはずないわ!」

「そうだな!」

「我ら西洋五大国に栄光あれ!」

「「栄光あれ!!」」



そしてその頃、太陽が真上に上る頃、西洋五大国の一つ──エンテイラー国の各国に隣接する国境──大聖堂会議場で、西洋五大国各国の長──国王達が集まっていた。
国王達は同じ高さの席に座り、ソノ上の階に金髪糸目の青年が杖を掲げて立っていた。

「カレイディル帝国王、アミール国王、スウォレウォンペティラ水国王、エンテイラー国王、ヴァレッタディーヴァ国王、今回諸国君主らに集まってもらったのは他でもない。
諸国君主らも、諸国の巫女や神官、神職者達から既に聴いていることだろう。
我らが天子──ジャンヌ・レインワーズ・フォン・テンペトラー様も神から御告げを今朝賜った。

ついに!
聖剣の乙女が目覚めるという!!

現れるのだ!
ついに聖剣を持った乙女が!!」

西洋五大国の各国王達は見上げていた。
ソノ金髪糸目の杖を持った青年を。

彼の名はクリステン。
役職は大司教。
普段は西洋五大国の中心地に浮遊する大地──大教会の中で、天子──ジャンヌ・レインワーズ・フォン・テンペトラーと共に、また他の神職者達と共に日々祈りを神々に捧げて暮らしている。

天子、大司教、教会は各国にとって平和の象徴。
一国の国王であっても、五大国の国王達であっても、地位は彼らの方が上なのだ。
故に、王達は見上げる。

各国の国王達は真剣な眼差しで、しかし冷静な眼差しの者も居れば興奮冷めやらぬ眼差しの者も居た。

「実に喜ばしいことだ!
これで魔族と対等に…、いや!
魔族を滅ぼすことが出来るというもの!!」

そう口を開いて拳を握って立ち上がったのは、隻眼に浅黒い肌を持つエンテイラー国王だった。
ソレはまさに興奮、という言葉が相応しい姿だった。

「クリステン卿!
聖剣の乙女が目覚めたらすぐにでも進撃致しましょう!
にっくき魔族を根絶やしにするのです!!」

エンテイラー国王は上段に居る大司教──クリステンに向かってそう高らかに声を挙げた。
ソレに顎を触り違った考えを口に出さず示したのはスウォレウォンペティラ水国王。
カレイディル帝国王とアミール国王は互いに目を合わせ意思疎通を図った。
そしてヴァレッタディーヴァ国王は顎をさすりながらコレは面白そうだと言わんばかりに、ニヤニヤとクリステン卿とエンテイラー国王を交互に見た。

「ッた!
大変でございます!!」

そんな時だった。
バン!!と勢いよく扉が開かれて、騎士が入ってくる。
側には馬まで居た。
恐らくエンテイラー国国境端の伝達早馬係の兵士だろう。

「何事だ!」

エンテイラー国王が声を挙げると同時に、早馬の騎士は叫んだ。

「大山脈──ウウィーグツィ・ザハルフアを越えて、魔族の娘と名乗る者が──」

「ぐわっ」

「ッく!」

「わあッ」

「遅い!
遅い遅い遅い!
私を退屈させるなんて随分なことね!
早馬で伝えに行くと言いながら待ちくたびれて飛んで来てしまったわ!
私の翼で来る方がずっと早いじゃない!
早く各諸国の王と合わせて頂戴!

はい、アンタも邪魔!」

「うわァアッ」

「くそ…!
コノ女、強すぎる!!
剣だけでこんな…!」

エンテイラー国王を始めとして誰もが開かれた扉を睨んだ。
そしてソノ者は堂々と可憐に優雅に現れた。

右手には赤い剣、左手には書簡らしきモノを手にして。

「あら、貴方達が国王陛下達かしら?
ごきげんよう。
私は魔族が長、魔王の娘──エディーリン・アザレリア・フォン・ナナレイア!
今回は戦ではなく、父から貴方達人間に向けて、“人間と魔族の休戦締約と同盟条約”の書簡を預かって参りましたの!
お取次ぎ…、願えるかしら?」


ソレは堂々としていた。
黒く長い艶やかな髪に、非加熱のルビーのような赤い瞳。
そして背には竜のような黒い翼。
エディーリンと名乗った少女は、わずか16歳くらい程の少女でしかないのに、醸し出すソレは少女と呼ぶには相応しくない大人びたモノを感じられた。

壮麗で荘厳な大聖堂会議場に、少女の強い声が響く。
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