婚約破棄がしたくて一人二役をする婚約者が可愛い

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 領地を見回った帰り道で、馬車の目の前で女性が転けあやうく轢きかけるという事案が起きたので、その女性の様子を確認するため使用人が確認しに行った。

「い、いったぁ~い」

 可愛らしい高い声が聞こえた。

ノア・・せっかくオシャレしたのにぃワンピースがぁ」

 何処かで聞いたことのある喋り方と名前。
 まさかな、まさかな、と思いつつ、ドアからそっと出て確認して、スッと馬車の中に避難した。

 ドッドッドットッ、と心臓が驚きで脈打っていた。

 ピンクの髪、眼は緑だったが、高く可愛らしい声。可愛らしい顔立ち。フリフリのワンピース。

 ミリスのいっていたノア・・が目の前に現れた!


***

 最初は冷静になれなかったが、よく考えると
 あのノアに関わらなければミリスは安心なのでは?という考えに至った。

 ミリスがあのノアと何処で出会ったか分からないが、よっぽど因縁があるに違いない。

 馬車に接触したわけでも無く、勝手に転んだだけだったのでそのまま放置し、家に帰ってからあのノアについて調べるよう使用人に指示をした。

 馬車に一緒に乗っていた使用人のベル__本名はベルナール___が未だに驚いた様子で謙次に話しかけてきた。

「本当に居ましたね、ノア」
「未だに信じられない気持ちだ」
「まさかとは思うんですけど、謙次様はあのノア・・に恋をしましたか?」
「恋をしたと思うか?」
「ですよね~、謙次様はミリス様に首ったけですもんね~~」
「五月蝿いぞ」
「早く、謙次様のお子様をお世話したいです」
「うるさい」

 ベルと話しつつ、先ほどのノアを思い出したが、無意味なことだと思った。

 現在、辺境伯家では使用人ですらピンク髪の女性は謙次に近づけないようになっているのに、庶民であろうあのノアが謙次と今後関わる可能性は無に等しかったからだ。

 ミリスの言ってたノアらしき人物__謙次は正直なところミリスの妄想の人物だと思っていた__の居所は把握できそうだったので、ミリスの憂も晴れる可能性も高い。

 謙次とミリスが結婚してからもうすぐ半年。
 ミリスとの距離感は相変わらずであったが、これから進展できるかもしれない。

 謙次は嬉しくて「ふふっ」と1人でに笑って、ベルに引かれた。
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