婚約破棄がしたくて一人二役をする婚約者が可愛い

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 使用人にノアを探らせていたはずが、ある日、ノアが祖父の恩人として謙次の家に訪れた。

「今日からぁ、よろしくお願いしまぁす」

 急激すぎる展開に謙次は先ほどから頭痛が酷い。

 表面上、ニコニコと対応してベルを引き連れて自室に戻った。

「どういうことだ??」
「...私としても展開に追いついていません」
「...あれ、前に見たあのノアだよな?」
「...そうだと思われます」

 地獄のような沈黙が謙次とベルの間に漂った。

 謙次の祖父は、辺境伯を引退後、領地の片隅に家を構えていたはずだった。
 先程の話はとても妙であった。祖父が道端で倒れていた?使用人も護衛の1人もおらず?
 偶々、祖父が息抜きをしていたとして、それを先ほどのノアが助ける可能性はどれ程あるのか。

「...刺客か何かか?」
「それにしては頭が悪そうでしたが」
「あのノアの家と祖父の家、結構距離あるよな」
「馬車で1日程はあるかと」
「祖父があの女をいたく気に入ってるな。本家の使用人に捩じ込もうとされるなんて」
「なんとかこちらと関わらないように、先代辺境伯様の元で過ごすように誘導すべきでは?」
「あの女をか?」
「あの女をです」

 謙次とベルはお互いを見ながらうなづき、行動に移すことにした。


***

 謙次とミリスの目に入るところには来ないように徹底した教育を侍女長に命じ、ミリスの実家にノアと思われる人物が現れたことと事の経緯を書いた手紙を出した。

 ベルに早急に届けるように頼み、返事も頂いてきたのだが、ベルから聞いたミリスの家族の様子は凄まじかったらしい。

 まず、ミリスの母が倒れ、ミリスの父が使用人に早急にミリスとノアに接点がなかったか徹底的に洗い直せと退き迫る勢いで指示をした。

 ミリスの父母は、結婚前の話し合いでミリスが学園でノアとして通っていたことにも大層驚いていた。
 結婚前に気持ちが落ち着かないからと気晴らしに旅行に行ってるはずだったらしい。
 謙次とのお茶会の日には必ず帰ってきていたから、信頼して送り出していたのだと。

 協力していた使用人達は軒並み解雇にされかかったが、ミリスのとりなしの元、解雇されずに済んだ。

 そのようにミリスへの対応が正直甘い部分があるミリスの父母だが、ノアの件については全く信じていなかった。

 謙次の交友関係については徹底的に調査していた様で、愛人の影すらないことは把握済み。

 該当しそうな人物もおらず、ミリスが変装したノアがミリスと真逆の人物だったので、政略結婚への不安と不満がそうさせたのかと思っていたらしい。

 ミリスの父母からの返信には、『早急に調査し報告する』とあった。

 ___これで、何かしらヒントがあればいいけど。

 はぁ、と謙次の口からため息がでた。
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