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第七十話.セントブルグ 1 冒険者養成学校 1 オフ氏

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 セントブルグにある、王都冒険者養成学校に来た。

 ここは、魔法も剣も槍も弓も戦闘技術はもちろんの事、狩りの仕方から解体の仕方、乗馬やテントでの生活、護衛の基本など、冒険者になるための事を教えてくれる学校だ。

 貴族の子や、陪臣の子も多くいる。商人の子や一般の人でも入学可能で簡単な試験に受かれば学費を払って通えるようだ。

 若くて優れた才能があり、特別試験に合格すれば学費免除と寮費無料で特待生として入れる制度もあるそうだ。

 決まりは無いが主に10歳から18歳くらいが対象のようだ。

 俺達はすでにBランク一流冒険者であり、サンタマルタ辺境伯の推薦もあるので、特別生として、好きな授業だけ受けれる事になった。

「学校なんて初めてで緊張しますね」

「そうね。私なんか特にそうよ。お父さんにしか習った事ないんだもん」

「そうか。意外な才能も見つかるかもな」

 数日間いろんな授業を受け、知識と技術を学んだ。

 アルフィーは特に才能が開花し、魔法も戦闘技術もぐんぐん上達している。美人でおっぱいはでかいし優しく優秀なので、生徒からも先生からも注目を集め、アイドルのようになっていた。ファンクラブが出来ているほどだ。

 シルフィーも順調に才能を伸ばしていた。シルフィーは愛想は良くないのでアルフィーのようにはなってないが、それなりに取り巻きが出来て楽しそうにしている。美人でおっぱいもでかいので、隠れて見ているファンが多くいる。いつのまにか親衛隊が出来ていた。


 そして俺は、すごい才能があったのだ。


 実は……。


 とはならずアイテムボックス以外に何の才能も無い事が判明した。

 ……うん。そうですよね。

 やっぱり来るんじゃなかったな……。


 しょうがないので、魔道具研究サークルにお邪魔する。

 ここは、学生が好きな魔道具を考えたり作ったりと研究する場所なのだ。

 どちらかというとオタク系なサークルである。


 ああ、ここは居心地がいいな。


 魔道具をこよなく愛するオフロン15歳と仲良くなった。

「エル氏。拙者が開発した。この【透けて見エール】をつければ、あんな物やこんな物まで透けて見えるのでござる」

「素晴らしいなオフ氏。この眼鏡みたいので、女子のおっぱいや巨乳が透けて見える訳だな」

「さようでござるがエル氏。おっぱいと巨乳はどちらも同じではござらぬか」

「おお、さすがオフ氏。そこに気が付くとは、お主、天才だな」

「いや、さすがにそれは分かるでござるよ。なぜなら、エル氏はいつもおっぱいの事しか考えておらぬゆえ」

「なんと、オフ氏は俺の心まで透けて見えておるのだな」

「フフフ。エル氏の事はすべてお見通しでござるよ」

 延々と二人でアホな事をしゃべってるだけだが、物凄く楽しいのだ。

 しかも彼の発明はほとんどが失敗で役に立たない物ばかりなのだが、たまにこれは! という物があるのだ。

 この【透けて見エール】も完全に失敗作で女の子のおっぱいを見ても、透け過ぎて骨が見えてしまう。

 とは言え透けては見えるので、地面などを見ると下に何が埋まっているか分かったり、壁の奥の物が見えたりと使い方によっては有効に使えるのだ。

 本人はまったく気づいていないが。

 そんなこんなでとにかく面白いので、いつも二人で遊んでいるのだ。

 お互いにボッチなのだ。

 ほっといてくれ。

「なあ、オフ氏。空を飛ぶ乗り物が欲しいんだが何とかならないのかな」

「さすが、エル氏。空からおっぱいを覘こうなどとはアッパレな事でござるな。拙者、感服いたした」

 それはいいな。

 でもそうじゃない。

「ああ、それはそれでいいんだけど、出来ないかな」

「いや、実は構想はあるのでござるが、飛ぶとなると大きなエネルギーが必要になるでござる。大きな魔石が必要なのでござるが、拙者貧乏ゆえ実験も出来無いのでござる」

 オフロンは王都の北東に領地を持つ、ヌックレン男爵の部下マーベラル家の3男で、10歳でこの学校に入学し、寮生活をしているそうだ。(体よく追い出されたのだろう)

 今月で15歳になり、家からの仕送りも無くなるためどうしようか悩んでいるところだった。

 この国では15歳で成人となり一人立ちの目安になっている。

「そうかオフ氏。では、もし資金があれば、空飛ぶ乗り物は出来るんだな」

「もちろんでござる。理論上は可能でござる。これを見て欲しいでござる」

 オフ氏の設計図を見る。数人が乗れそうな飛行船だ。

 上に大きな風船があり翼が付いている。

 下に乗る場所があり、乗る場所の後ろから風が出て、前に進むようだ。

 うん。これなら飛べそうだ。

「いいじゃないかオフ氏! これなら飛べるんじゃないか」

 するとオフロンは悲しそうな顔をした。

「そう言ってくれるのはエル氏だけでござるよ。先生にも見せたのでござるが、相手にもしてもらえなかったでござる。拙者ももう15歳になり、仕送りも今月で最後でござる。冒険者になる腕も力もない拙者には、この絵は所詮夢だったのでござる。この数日、エル氏に会えて夢のような時を過ごす事ができ申した。これも最後に神が拙者を哀れんで夢を見させてくれたのでござろう。エル氏。短い間でござったが、今までありがとうでござる」

 そう言って頭を下げたオフロンは泣いていた。

 俺も一緒に泣いていた。

「オフ氏。これからどうするんだ」

「もう、この学校に居るだけのお金も無いでござる。なんとかどこか雇って貰える所を探すつもりでござる」

 寂しそうに語るオフロンを見る、俺の心はすでに決まっていた。

「オフ氏。俺と一緒に来てくれ。お前は俺の友達だ。こう見えても俺は騎士だ。俺の領地に来て研究を続けてくれ」

「ほっ本当でござるか。エル氏」

「ああ、田舎で何も無いが、一から町を作っていくところだ。オフ氏の力が必要なんだ」

「ありがとう。ありがとうエル氏。もちろんどこへでも付いて行くでござる。エル氏は拙者の唯一の友達ゆえ」

 俺達は二人でガッチリと固い握手を交わした。


 その後、あと数日で、寮から出なければならない状態のため、オフロンと一緒にオフロンの部屋へ行った。

 思った以上にぐちゃぐちゃだ。

「いやん、はずかしいでござる」

 乙女かお前。

「オフ氏。これはひどいな。全部ゴミじゃないのか」

「いやいや。すべて必要な物でござる」

「どうやって持ってくつもりだったんだ」

「考えてなかったでござる」

 頭をかくオフ氏。

「しょうがないな。じゃあ、全部収納しちゃうぞ」

「どうするのでござるか」

 溢れるゴミ(に見える何か)をアイテムボックスにすべて収納した。

「なっなんと!? エル氏はアイテムボックス持ちでござったか。しかもこの部屋の物全部を収納できるとは」

 マジックバッグ100倍を出し。ゴミを全部詰め替える。これでスッキリだ。

「おおっなんと!? しかもこれほどの容量のマジッグバッグを持っているとは。エル氏。実はすごい男だったのでござるな」

「実はそうなんだ。内緒にしてくれよ」

「もちろんでござるよ。話す相手もおらぬでござる」

「……」

 見つめ合う二人。

 ……うん。そうだね。

 この秘密は確実に守られるだろう。


「このバッグをオフ氏に預ける。大事に使ってくれ」

「いいのでござるか。エル氏。拙者にこれほどまでの信頼を……。よし。拙者がんばるでござる。必ず飛行船を造って見せるでござる」

 オフロンの目が今までに無くキラキラと輝いた。

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