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第九十四話.エアシルの町 22 飛行船 1
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イースの町を目指して空を飛ぶ。流れて行く景色を見ながらふと気が付いた。
「この飛行船、素晴らしいけど……意外とスピードは出てないのかな」
「そうですね、今は一応全速力ですけど」
アルフィーが操縦席で速度レバーを確認した。
「空飛ぶ船だしね、そんなに早くは進めないんじゃない、それにちょっと向かい風みたいよ」
シルフィーが窓から顔を出した。
風の影響もあるのだろう。高さによって風向きが変わるようだ。そう言えば気球は高さを調整して風に乗って移動するって聞いたことがある。
「シル、イースの町向きの風を探してくれないか」
「すごい注文ね、でもやってみるわ。風の調べ!」
三列目に座っているシルフィーが両手をあげて調査しているので、後ろを向いておっぱいをもむ。
当然怒られる。
「もうエル! 邪魔しないで。アルフィーさん、少し下がったほうがいいわ……10mくらいかな」
シルフィーの指示通り少し高度を下げてみる。
「あっ本当だ! なんかスムーズに進みますね」
さっきより飛行船が楽に進んでる感じがする。
「すごいな、さすがシル」
褒めながらまた、おっぱいをもむが今度は怒らない。
「ふふふ、上空の風って面白いわね。色んな風があるみたいよ」
「それでもそんなにはスピードは出ませんね」
追い風を受けてもそこまで速い感じはしない。
「そんなもんなんだろうな。馬で走ってるのと一緒位かな」
「そうかもね、でもまっすぐ進めるから、長距離なら全然早いんじゃない」
しばらくしてイースの町の上空、ニールゼンの屋敷の上に到達した。
急降下して屋敷の庭に降り立った。
外に降りてすぐ飛行船を回収する。
外にいた兵士がびっくりしてこっちへ近寄って来た。
「何かと思ったらエアシル卿じゃないですか! 今空から来ましたよね!?」
「ああ、ついに空を飛べるようになったんだよ。なんせ英 雄だからさ」
大げさに感心して納得する兵士。
「そうですね、エアシル卿ですもんね。今、旦那様に取次ぎいたします」
走って中に入って行った。
これで納得するんだ……凄いな英雄って。
「そう言えばこれ、入場税がいらないな」
空から来れば入場門をスルー出来てしまうのだ。
「あっほんとね。いいのかしら」
「うーん、難しい所ですね」
三人で悩んでいると、執事がやって来て中に案内してくれた。
しかし来客中のようだが、いいのかな。
友人との事でいいらしい。
「旦那様。エアシル男爵様がいらっしゃいました」
「おう、入ってくれ」
「お邪魔します、来客中のようですが良かったですか」
中に入ると四十台くらいの長髪の紳士が座っていた。杖を椅子に立てかけている。右足の先が木の棒だ……義足だろうか。
「ああ、良く来てくれた。紹介しよう、海の町ゴルディナの領主。ゴラン子爵だ。俺の親友なんだ。ヨーゼル、彼らがあのエアシル卿だよ」
「おおっお噂はかねがね聞いております。座ったままで失礼。ヨーゼル・フォン・ヌルス・ゴランです。是非お会いしたいと思っておりました。会えて光栄です」
座ったまま丁寧に礼をする。イケメンの渋い男だ。歴戦の強者という感じがする。濃い茶色の髪に日に焼けた肌だ。海の男なのだろうか。
「どうも、エルヴァン・フォン・エアシルです。こちらは妻のアルフィーとシルフィーです。お邪魔じゃなかったですか。僕らも遊びに来ただけで特に用事は無いんですよ」
「用事が無いのに来てくれるとは嬉しいじゃないか。いや、ヨーゼルはな。見ての通り足を怪我しちまってる。数年もあきらめていたんだが、先日ニッケルン村でアルフィー殿が足のちぎれた男を治療したと聞いてな。もしかしたら、と思って俺が呼んだんだよ。まあ遊びに来るついでだがな」
なんだ、そういう事か。
「急に申し訳ない。私も信じてはいなかったのだが、ひざが両方ちぎれていたのに完全に治ったと聞いてもしかしたらと、勝手に来てしまったのです。出来ればなんとか見てもらえないだろうか」
ゴラン子爵が頭を下げる。
「分かりました、もちろんです。出来ればベッドに寝て貰いたいのですがいいですか」
アルフィーが気軽に笑顔で言う。
「そうですか! それは有難い、おいラク!」
ゴラン子爵が嬉しそうに笑顔を見せてニールゼン男爵に催促する。
「おお、そうだな。あっちのベッドに行こう」
寝室に移動し、ベッドにゴラン子爵が寝ころんだ。義足を取って服をまくる。右の膝からすぐ下が無い。
縫ったような傷跡が痛々しいが、古い傷でも治せるのだろうか。
前は千切れた足がそこにあったからくっついたが、無い物はどうしようもないんじゃないか。
「大丈夫なのか、アル。ゴラン子爵。この傷はいつの物ですか」
「ああ、もう、7.8年前になるかな。船で碇を下げるときに注意不足でね、鎖に足を巻き込まれたんだ。馬鹿な事をしたもんだよ」
当時を思い出したのか悔しそうな顔をする。
それを見たアルフィーが優しそうに微笑んだ。
「多分大丈夫だと思います。エルさん、装備をお願いします」
「ああ」
ジャンと音がして、アルフィーが聖魔ローブセットになった。その手に聖魔の杖を渡す。
「おお、なんと神々しい……」
「ふふ。これからだぞ、ヨーゼル」
驚くゴラン子爵に向かって自慢げなニールゼン男爵がニヤリとする。
「天使の翼!」
アルフィーが呪文を唱えると、体が光り輝き、背中に大きな白い翼と光る天使の輪が現れた。
「おおおお! 天使様」
その姿を見たヨーゼルが感動し、祈りをささげるように手を合わせた。
「ではいきます。特別回復呪文大!」
アルフィーの手と聖魔の杖がまぶしく光りゴラン子爵の足に当てられた。
ゴラン子爵が光に包まれると右足がゆっくりと生え出して、数秒で綺麗な足が復活した。
「この飛行船、素晴らしいけど……意外とスピードは出てないのかな」
「そうですね、今は一応全速力ですけど」
アルフィーが操縦席で速度レバーを確認した。
「空飛ぶ船だしね、そんなに早くは進めないんじゃない、それにちょっと向かい風みたいよ」
シルフィーが窓から顔を出した。
風の影響もあるのだろう。高さによって風向きが変わるようだ。そう言えば気球は高さを調整して風に乗って移動するって聞いたことがある。
「シル、イースの町向きの風を探してくれないか」
「すごい注文ね、でもやってみるわ。風の調べ!」
三列目に座っているシルフィーが両手をあげて調査しているので、後ろを向いておっぱいをもむ。
当然怒られる。
「もうエル! 邪魔しないで。アルフィーさん、少し下がったほうがいいわ……10mくらいかな」
シルフィーの指示通り少し高度を下げてみる。
「あっ本当だ! なんかスムーズに進みますね」
さっきより飛行船が楽に進んでる感じがする。
「すごいな、さすがシル」
褒めながらまた、おっぱいをもむが今度は怒らない。
「ふふふ、上空の風って面白いわね。色んな風があるみたいよ」
「それでもそんなにはスピードは出ませんね」
追い風を受けてもそこまで速い感じはしない。
「そんなもんなんだろうな。馬で走ってるのと一緒位かな」
「そうかもね、でもまっすぐ進めるから、長距離なら全然早いんじゃない」
しばらくしてイースの町の上空、ニールゼンの屋敷の上に到達した。
急降下して屋敷の庭に降り立った。
外に降りてすぐ飛行船を回収する。
外にいた兵士がびっくりしてこっちへ近寄って来た。
「何かと思ったらエアシル卿じゃないですか! 今空から来ましたよね!?」
「ああ、ついに空を飛べるようになったんだよ。なんせ英 雄だからさ」
大げさに感心して納得する兵士。
「そうですね、エアシル卿ですもんね。今、旦那様に取次ぎいたします」
走って中に入って行った。
これで納得するんだ……凄いな英雄って。
「そう言えばこれ、入場税がいらないな」
空から来れば入場門をスルー出来てしまうのだ。
「あっほんとね。いいのかしら」
「うーん、難しい所ですね」
三人で悩んでいると、執事がやって来て中に案内してくれた。
しかし来客中のようだが、いいのかな。
友人との事でいいらしい。
「旦那様。エアシル男爵様がいらっしゃいました」
「おう、入ってくれ」
「お邪魔します、来客中のようですが良かったですか」
中に入ると四十台くらいの長髪の紳士が座っていた。杖を椅子に立てかけている。右足の先が木の棒だ……義足だろうか。
「ああ、良く来てくれた。紹介しよう、海の町ゴルディナの領主。ゴラン子爵だ。俺の親友なんだ。ヨーゼル、彼らがあのエアシル卿だよ」
「おおっお噂はかねがね聞いております。座ったままで失礼。ヨーゼル・フォン・ヌルス・ゴランです。是非お会いしたいと思っておりました。会えて光栄です」
座ったまま丁寧に礼をする。イケメンの渋い男だ。歴戦の強者という感じがする。濃い茶色の髪に日に焼けた肌だ。海の男なのだろうか。
「どうも、エルヴァン・フォン・エアシルです。こちらは妻のアルフィーとシルフィーです。お邪魔じゃなかったですか。僕らも遊びに来ただけで特に用事は無いんですよ」
「用事が無いのに来てくれるとは嬉しいじゃないか。いや、ヨーゼルはな。見ての通り足を怪我しちまってる。数年もあきらめていたんだが、先日ニッケルン村でアルフィー殿が足のちぎれた男を治療したと聞いてな。もしかしたら、と思って俺が呼んだんだよ。まあ遊びに来るついでだがな」
なんだ、そういう事か。
「急に申し訳ない。私も信じてはいなかったのだが、ひざが両方ちぎれていたのに完全に治ったと聞いてもしかしたらと、勝手に来てしまったのです。出来ればなんとか見てもらえないだろうか」
ゴラン子爵が頭を下げる。
「分かりました、もちろんです。出来ればベッドに寝て貰いたいのですがいいですか」
アルフィーが気軽に笑顔で言う。
「そうですか! それは有難い、おいラク!」
ゴラン子爵が嬉しそうに笑顔を見せてニールゼン男爵に催促する。
「おお、そうだな。あっちのベッドに行こう」
寝室に移動し、ベッドにゴラン子爵が寝ころんだ。義足を取って服をまくる。右の膝からすぐ下が無い。
縫ったような傷跡が痛々しいが、古い傷でも治せるのだろうか。
前は千切れた足がそこにあったからくっついたが、無い物はどうしようもないんじゃないか。
「大丈夫なのか、アル。ゴラン子爵。この傷はいつの物ですか」
「ああ、もう、7.8年前になるかな。船で碇を下げるときに注意不足でね、鎖に足を巻き込まれたんだ。馬鹿な事をしたもんだよ」
当時を思い出したのか悔しそうな顔をする。
それを見たアルフィーが優しそうに微笑んだ。
「多分大丈夫だと思います。エルさん、装備をお願いします」
「ああ」
ジャンと音がして、アルフィーが聖魔ローブセットになった。その手に聖魔の杖を渡す。
「おお、なんと神々しい……」
「ふふ。これからだぞ、ヨーゼル」
驚くゴラン子爵に向かって自慢げなニールゼン男爵がニヤリとする。
「天使の翼!」
アルフィーが呪文を唱えると、体が光り輝き、背中に大きな白い翼と光る天使の輪が現れた。
「おおおお! 天使様」
その姿を見たヨーゼルが感動し、祈りをささげるように手を合わせた。
「ではいきます。特別回復呪文大!」
アルフィーの手と聖魔の杖がまぶしく光りゴラン子爵の足に当てられた。
ゴラン子爵が光に包まれると右足がゆっくりと生え出して、数秒で綺麗な足が復活した。
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