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第百二十一話.魔物の城と中の城

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 穴を埋めて戻しながら上空へと浮かびあがった。

 俺達は、元通りになった拠点跡に着地する。

 飛行船から降りて、飛行船を回収するとそこに魔物の城を出す。

――ジャン。

 三角の立派な山城だ。よく見るとエアシル城に似ているかもしれない。

 ピラミッド型なのだ。

 大きさはアイテムボックスで持てるくらいなのでそこまでは大きくない。

 五十メートル四方位に五十メートルほどの高さだ。


 扉を開けて中に入る。

 驚いた。

 ものすごーく広い。

 空間魔法だろうか。

 奥は少なくとも向こうの端まで数キロほどはあるだろう。天井も高い……というか空がある。

 山や森や、池、川みたいな大自然があるのだ。

 すぐそこに見える小高い丘の上にはまた三角の城がある。エアシル城にそっくりだ。

「すごいな! なんだこれ……町より広いぞ?」

『主がくれたんですよ。屋敷もあります』

「あれか」

 前方の城を指さした。

『はい』

「凄いわね、エル。なんだか不思議な感じがするわね。城の中に自然とまた城があるのよ?」

 シルフィーが扉の外と中を何度も確認しながら神妙な顔をした。

「本当ですね……でもあれエアシル城そっくりじゃないですか。やっぱりエルさんが作ったんですね」

「そうですの。船そっくりなんですの」

「……不思議な感じがします。でもウルもなんだか、来た事があるような気がします」

「すげー、本当だ! ありゃあ、エアシル城だぜ」

「本当ー、そっくりー!」

「……凄すぎて言葉がでないでやんすよ」

 大丈夫。ちゃんとしゃべれてるぞガイバン。


 驚きに包まれながらも城を目指して歩いていった。

 小山の上に佇む城は小扉までも完全にエアシル城だった。

 ドキドキしながら小扉を開けて中に入る。

 おおっ城内までそのまんまだ。


 中身もまさにエアシル城だった。

「……ああー船ですの……主様、船ですの」

 久しぶりの城内を見つめてオルフィーが感極まったように抱き着いてきた。

 ふわっと甘くセクシーな香りがする。可愛いな。

 可愛い顔が目の前にあるので思わず頬にチューをする。

 最近は皆がいるのに自重出来なくなってきた。

 もちろん皆も見慣れているので気にも留められてないようだ。


「そうだな。本当そっくりだ」

「本当ですね」

「王座の間もあるのかしら」

「そうですの! 主様の部屋に行くんですの」

 皆で正面の突き当りを右に曲がり広い階段をかけ上がる。


 そのまんまだ。

 そこにはやっぱり同様に王座の間が鎮座していた。

「ああー懐かしいですの……」

 オルフィーはそれを見てボロボロと泣いていた。

 優しく抱きしめると俺の胸に顔をグリグリ押し付ける。

 当然服がベタベタになってしまったがオルフィーはスッキリしたようだ。

「……」


 王座の間の奥には俺達にしか見えないはずの扉がある。

「ウエス、オスマン、ガイバン、扉は見えるか?」

「ああ、見える。こんな扉があるんだな」

「そーかー、本当は扉があるんだねー」

「えっ何でやんすか?」

 どうやら誰にでも扉が見えるようだ。なるほど、似てはいるが中身は違う物なのだろう。


 扉を開けて王の部屋に入った。

 中もほぼ一緒だった。

「へーこんなに豪華な部屋なんだ!」

 ウエスタンが感動する。

「すごーい!」

 オスマンもソファーに飛び込んだ。

 
 宝物庫もあるのかな。

 左の扉を開けて宝物庫へ入った。

 するとその中は魔石部屋のようだった。


 城内のエネルギーをここから供給しているのだろう。

 だが、サイファーの言うとおり、残りの魔石が少ないようだ。残量がカツカツだ。

 魔石自体はエネルギーがなくなると消えるようで十畳位の台座の上には僅かな魔石の塊が数個あるだけだった。

「サイファー。昔はここに大きな魔石がいっぱいあったんじゃないか?」

『はい、そうなんですよ。主よ、なんとかなりませんか』

 ベビーサイファーが心配そうに俺を見た。


「大きな魔石があればいいんだろう。金でも銀でも銅でもいいのか?」

『はい。聖魔石じゃなければなんでもいいです』

「そうか。じゃあ、まず消えそうな魔石は回収するぞ」

 大きな魔石を置くのに邪魔そうなので崩れそうな魔石くずを回収する。

「よし、じゃあ魔石をだすぞ」

『お願いします』


 ジャンと音がして体四個分の金魔石を出した。

「でけーーー!」

「うわーーーー!」

「なーーーーーー! で、でっかい魔石でやんすーーー!」

『おおっこれは凄い……流石主です! これがあれば当分は持つでしょう』

「すごいな、エル。これが金竜の魔石か……」

「すごーい! こんなに大きいんだー」

「流石英雄でやんすなー」

「これでS+クラス、大白金貨千枚百億ドロルだぞ」

「うわっ!? しゃれにならんな……」

「そ、そーねー……」

「凄すぎるでやんす……」


 普通はそうなるよな。まぁもらったやつだからまだ一杯あるんだけど。

 ジャンジャン。

 同じくS+の銅魔石と銀魔石も取り出した。

「のわ! これが銀竜と銅竜のか。すげーなぁ」

「キレイねー」

「も、もう……駄目でやんす。凄すぎて訳がわかんないでやんす」

『わっ流石主です。やっぱり主は凄いです』

 サイファーも目を輝かせた。


「とりあえずこれでいいだろう」

『はい。数十年か、百年位は持つかもしれません』

 サイファーが踊るように喜んだ。


 念のため部屋の奥を確認する。

 宝物庫に比べて少し狭い部屋のようだ。

 奥の扉も見つからない。

 やはり似ているだけのようだ。


 敵を外に出すボタンも無い。

 エアシル城と違って船ではなく普通の城なのだろう。

 聖魔石を使うと魔物にとっては辛いのかもしれない。


 王の部屋を探索すると一応風呂もある上に、生意気にも泡まで出る。

 これはいいな。

 王の部屋の奥の扉は無かった。つまり上にはいけないのだ。


「やっぱり似てるだけだな。だけど十分凄い城だな。もうこれでいいんじゃないか」

「そうね、でもエル。流石にこの大きさは持てないでしょ」

「そうだよな……外のは持てるが、この城は多分無理だろうな。そう考えると不思議だな」

 エアシル城は東西南北に二百三十メートル四方、高さは百五十メートル位ある山城なのだ。

「そうですね。不思議な感覚ですが、落ち着きます」

「そうですの。主様……オルは嬉しいんですの」

 オルフィーはずっと俺に引っ付いている。本物の城ではないが懐かしい感じがして嬉しいのだろう。

 いつもよりオルフィーが可愛く見えた。


 とりあえず落ち着いたところで時計を見ると夕方六時位だった。

 急に腹が減ってきたなそろそろ夕食にするか。

 そう言えばお昼は軽くしか食べてない。

「腹減ったな。夕食にするか」

「おう、待ってました!」

「お腹すいたー!」

 豪華なソファーに座り、テーブルの上にビーフシチューと香ばしい柔らかパン、サラダ、お酒、鳥串焼きなどをジャンジャン取り出した。

「たまには王の部屋で食事をするのもいいだろう」

「そうね。鳥串焼きなんて珍しいじゃない。懐かしくていいわね」

「美味しいですね。お腹すいてたから余計に美味しく感じます」

「ええ、美味しいですの」

 皆もお腹がすいていたようでガンガン食べているようだ。

「あっ、このお酒美味しいですね」  

「それは《桃の香り》だな。スッキリして美味しいだろ」

「はい。ふわっと桃の香りがして、ウルは大好きです」

「本当だいい匂いがするな」

「美味しそうなお酒ねー。エルちゃん、あたしも同じやつちょーだい」

「いいでやんすね。あっしも飲んでみたいでやんす」


《桃の香り》で乾杯した。
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