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謝罪

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「リーチェ。いや、辺境伯夫人。今さらだが……、これまで何も知らず申し訳なかった。疑ったことも心から謝罪する。先は手を上げようとしたことも……どんな罰も受け入れる所存だ」

 私があの人について考えていたところ、父は一人用のソファーから立ち上がって、床に膝を付き、頭を下げていました。

 そんな父の姿を見ても、私には困惑しかありません。

「謝罪など受け入れなくていいぞ、リーチェ。当主として何も知らなかったことは罪だ。そのうえ先には君を殴ろうとまでした男だからな。うちの法で処分してもいい」

「言い分は分かるが、落ち着け辺境伯。ここは王都でな?しかも城の中なんだ」

「私の妻を殴ろうとしたのですよ?我が領であれば数多の拷問のうえ処刑です」

 あの、旦那さま。
 確かに領内で辺境伯家の人間を害そうとすれば処刑もありえますが。

 うちでも拷問はなかったかと。
 そのうえ数多とは一体……。

「ご立腹はもっともだよ。だがな、数多の拷問はちとまずい。もちろん罪はしかと裁くが、すまぬがここは王家に任せてくれないか?」

「父上。それに辺境伯。裁き云々の前に、ここはまず夫人のお気持ちを聞くところでしょう」

 はっとされた旦那さまが私を見ます。
 落ち着かれたようで良かったです、旦那さま。

 穏やかで優しいいつものお顔も素敵で大好きですよ旦那さま。

「リーチェはどうしたい?」

 正直なところ、謝罪に対しては何も感じていなければ、何も望んではおりませんでした。
 けれども辺境伯夫人としてはここで何らかの罰を望むべきなのだと分かります。

 どうしましょうか。

 父はずっと頭を下げていました。
 その頭を見ていたら、何故かそれは口から零れていたのです。


とお話をしてから決めたいです」


 この後に続いた長い沈黙はまた、とても気まずい時間となりました。



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