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不明
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言葉を返さなかったことが、侯爵夫人を酷く苛立たせてしまったようです。
「何よその顔は?嫁いだらもう母のことなど忘れてしまったなんて、そんな薄情なことは言いませんわね?わたくしはそのような娘に育てた覚えがありませんことよ?」
私もまた、あなたに育てられた記憶がないのですが。
「そう。結婚したらあなたはそうなるのね。ならば離縁して戻ってらっしゃい」
「は?」
旦那さまのお声が先でした。
私も同じように聞き返そうとは思っていたのです。
「だいたいあなたは我が家をめちゃくちゃにした元凶なのよ?どうして自分の口から責任を取るために離縁して戻ると言えないわけ?」
「いい顔を少し見せていれば……私の妻に離縁して戻れだと?」
「婿殿は黙っていらして。これは我が家の問題ですわ!」
「あなたの婿ではない。私がリーチェの夫で、リーチェが私の妻だ!」
旦那さま、その言い方ですと侯爵夫人には意味が伝わらないと思いますよ?
そこは、我が家の嫁だ、と言ってくださってよろしかったですのに。
え?私は嫁ではない?
そんな……三年も過ぎましたのに……え?違う?そうではない?
お義父さまやお義母さまのものにはしないから?
お話が分かりません、旦那さま。
でもそのお顔はとても素敵です。
「あなたには末の娘をやります。それでいいでしょう?」
「お母さま!本当によろしいのね!きゃあ、わたくしついに結婚するのだわ!」
「よくない!誰が離縁などするものか!私の妻はリーチェだけだ!」
旦那さまが私の分まで怒ってくださるおかげで、私は冷静にこの状況を観察出来るようになりました。
特に気になりましたのが、大人しく俯いている弟の様子です。
自分の母親が何をしているか、弟はちゃんと理解出来ているのかもしれません。
そういえば、舞踏会の会場でもあっという間に逃げておりましたし。
何もかも分からない弟のままではないということ。
「ですから婿殿は黙っていらして。それより、リーチェ!あなたよ!どうして黙っていられるのかしら?自分で責任を取るとも言えないわけ?それに何よ、母親の体調が悪いと聞いても、手紙ひとつ寄越さない、すぐに帰っても来ない。何様になったつもりなの?」
何様と言われましても。
今の私は辺境伯夫人でしょうか?
「辺境伯との結婚を決めたときもそうだわ。何故あなたはこの母に泣き付いて来なかったわけ?」
「はい?」
思わず声が出ました。
侯爵夫人からどのような言葉を掛けられるか、一応想定し準備をしてきた私ですけれど。
この方はいつも私の想像を軽々と超えられます。
それは私が母という人を分かっていないからなのでしょうね。
家に戻らない父は知らない人でしたけれど、同じ家で過ごした母はいつまでも理解出来ない人でした。
「何よその顔は?嫁いだらもう母のことなど忘れてしまったなんて、そんな薄情なことは言いませんわね?わたくしはそのような娘に育てた覚えがありませんことよ?」
私もまた、あなたに育てられた記憶がないのですが。
「そう。結婚したらあなたはそうなるのね。ならば離縁して戻ってらっしゃい」
「は?」
旦那さまのお声が先でした。
私も同じように聞き返そうとは思っていたのです。
「だいたいあなたは我が家をめちゃくちゃにした元凶なのよ?どうして自分の口から責任を取るために離縁して戻ると言えないわけ?」
「いい顔を少し見せていれば……私の妻に離縁して戻れだと?」
「婿殿は黙っていらして。これは我が家の問題ですわ!」
「あなたの婿ではない。私がリーチェの夫で、リーチェが私の妻だ!」
旦那さま、その言い方ですと侯爵夫人には意味が伝わらないと思いますよ?
そこは、我が家の嫁だ、と言ってくださってよろしかったですのに。
え?私は嫁ではない?
そんな……三年も過ぎましたのに……え?違う?そうではない?
お義父さまやお義母さまのものにはしないから?
お話が分かりません、旦那さま。
でもそのお顔はとても素敵です。
「あなたには末の娘をやります。それでいいでしょう?」
「お母さま!本当によろしいのね!きゃあ、わたくしついに結婚するのだわ!」
「よくない!誰が離縁などするものか!私の妻はリーチェだけだ!」
旦那さまが私の分まで怒ってくださるおかげで、私は冷静にこの状況を観察出来るようになりました。
特に気になりましたのが、大人しく俯いている弟の様子です。
自分の母親が何をしているか、弟はちゃんと理解出来ているのかもしれません。
そういえば、舞踏会の会場でもあっという間に逃げておりましたし。
何もかも分からない弟のままではないということ。
「ですから婿殿は黙っていらして。それより、リーチェ!あなたよ!どうして黙っていられるのかしら?自分で責任を取るとも言えないわけ?それに何よ、母親の体調が悪いと聞いても、手紙ひとつ寄越さない、すぐに帰っても来ない。何様になったつもりなの?」
何様と言われましても。
今の私は辺境伯夫人でしょうか?
「辺境伯との結婚を決めたときもそうだわ。何故あなたはこの母に泣き付いて来なかったわけ?」
「はい?」
思わず声が出ました。
侯爵夫人からどのような言葉を掛けられるか、一応想定し準備をしてきた私ですけれど。
この方はいつも私の想像を軽々と超えられます。
それは私が母という人を分かっていないからなのでしょうね。
家に戻らない父は知らない人でしたけれど、同じ家で過ごした母はいつまでも理解出来ない人でした。
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