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第一章 厄災の王女
29.虚構の功績
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ゼインの内心の動きなど知らずして、重臣はこれまでの鬱憤を吐き出すように、しかし冷静な言葉で侯爵の実態を明かしていった。
ひと月前に謁見の間で騒いでいたのが嘘のように、冷徹で落ち着いた声が出る。
「前線へと急遽送られてきた兵士らは、戦中は数を多く見せるためだけに存在しておりました」
兵に対してこれほどの侮辱はない。
侯爵とてこれには我慢ならなかった。
「ものを知らぬ若造が勝手なことを言いおって!我が侯爵家を貶めるつもりか!」
ゼインの重臣が相手と変わるや、侯爵の発言が尊大に変わった。
発言者を誰が選んで重臣に据えてきたか、やはりそこまで回る頭はないのだろう。
「貶めるもなにも、私は事実しか語っておりませんよ。彼らは皆一様に侯爵家の兵士だから後衛が当然と主張して、前に出て戦おうという者は一人とておりませんでした。仕方がないので彼らの希望通りに後方へと回しましたが、あまりに後ろでは今度は侯爵家の兵士として相応しい位置ではないと煩く、正直戦闘が激化中には邪魔でしかありませんでしたよ」
「邪魔とはなんだ、邪魔とは!我が侯爵家を侮辱するか!」
「事実を侮辱と言われましてもね。だいたい侯爵は事前の案内も怠っていたでしょう?急に現れた兵士たちに、敵襲かと騒ぎになった戦場もありましたからね?それをお分かりか?」
「我が侯爵家の兵士たちを敵と見間違うなど。そんなものは、お前たちがものを知らぬせいだろう!」
「戦場における連絡の大事さは基本中の基本でありましょうに。いまだお分かりいただけなくて残念にございますが。侯爵家から送られてきた兵士らもこれを知らず。こちらで一から教育しようにも、侯爵家の者だからとこれまた大騒ぎで、こちらの意見は何も聞こうとはいたしません。戦場で上からの命令を聞けないのであれば、組織を乱すだけの存在ですし、一兵卒として最前線に送ることも考えましたけれど、かえって味方の士気を下げ、敵に勝利の勢いを与えてやるだけとなりそうでしたからね。邪魔なので後ろに並び立っていて貰った次第なのですよ」
「なんという!なんという物言いか!陛下、斯様に礼儀も弁えぬ者をお側に置くことを何故許されているのです?」
お前が言うな、と思っていたゼインは薄く笑って、また別の重臣に話すよう促した。
「まだ話は終わっていないぞ、侯爵。次はお前だな?」
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「前線へと急遽送られてきた兵士らは、戦中は数を多く見せるためだけに存在しておりました」
兵に対してこれほどの侮辱はない。
侯爵とてこれには我慢ならなかった。
「ものを知らぬ若造が勝手なことを言いおって!我が侯爵家を貶めるつもりか!」
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