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私が来てやったぞ

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 来たぞ、来たぞ、来たぞ。
 ついにこの私が王都にやって来たぞ!

 それは早々に諦めた計画をターゲットを変えずに再実行し、今度は成功して王子との結婚の手続きのために王都にやってきた、という話ではもちろんない。

 まぁな、この王都で別の男相手に計画を実行しようと考えていたところではあったのだが。

 姉にそれだけはやめようか?と泣きつかれてしまったので。
 私はこの王都に姉の付き添いがてらのただの観光客としてやって来たのである。

 そうそう、これも姉に泣かれたときの話だ。

 いずれかのときに狙いを定めるためにも、私の結婚相手について軽く相談しておくかと話し始めたところ。
 姉が真っ青な顔をして「今は考えなくていいんだ」と言いながら、私の両肩を揺らしたんだ。

 こんなに真剣に伝えてくるということは、今は考えない方がいいことなのだろう。

 ならばこそ、計画を実行するそのときのために、技を磨いておくことを考えついたのだが。
 こちらも上手くいかなかった。
 何故かタイミングが合わず諸先輩方と会えなかったので、私の腕前を見て助言を貰うことが出来なかったのだ。

 ならば今度こそと、個人的に鍛錬をしておけばいいと考えた。
 一人だって技は磨ける。うちには練習相手になりそうな男も盛り沢山だ。

 ところがそれも頓挫した。
 騎士たちをより鍛えて欲しいと姉が言うから、そちらに掛かり切りとなって、結局計画実行のためには何も出来なくなったのだ。

 まぁ身体をいつも以上に鍛えられて私としては良かったけれどな。
 今は相手を探す手間も省けているおかげか、早朝、朝昼夕夜、夜分と、どの時間の鍛錬もいつも以上に楽しくなっている。

 だから聞け。
 王都の猛者を倒す準備は万端だぞ!

 と意気込み乗った馬車は、すでに王都に入ってから大分進んでいるのだが。

 おかしい……。

「何かお気に障るようなことがございましたか?」

 目のまえに座るマイクが話し掛けてきた。
 実はマイクの方が文官王子よりもお喋りが好きな男だったのだ。

 マイクが言うには、王子の手前あえて言葉数を減らしていたらしい。
 護衛対象者の前で話し過ぎは良くないだろう?ということだが。

 いや減らすというよりあれは無視では?

 疑問は感じたが文官王子が良しと言うなら、私から言うことはない。

 そして喋りたいなら、私の前では好きに話してくれよな。
 私は相手が誰でも受けて立つ、寛容な女なんだ!安心して話せ!




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