上 下
38 / 51
新辺境伯が見守ってきた大切なもの

罪人を成敗した日

しおりを挟む
 はぁ?なんだと?
 誰に何を言われたって?

『おねえちゃまはあたちのとちにはもっとかちこかったの?あたちはおねえちゃまとそんにゃにちがうの?』

 おい泣いているぞ?
 私の可愛い妹が泣いているのだぞ?

 お前たち、何をしていた!!!

 妹に付けていた侍女兼騎士らに話を聞けば、勉強中に騎士は要らないと先生方に部屋から追い出されたのだとか、逃げ回ると追いつけなくてだとか、あろうことか私の前で言い訳を並べたので、きついお灸を添えたのち、妹がまた会いたいと言う日まで配置換えをしてやった。

『そんな!せっかく軍神の加護持ち様のお側付きになれましたのに!』

 煩かったそいつらの口もしばらくは開けぬようにしてやったのだったな。
 今思えば、あれでは処分が甘かっただろうか。
 その程度で済ませたのは、まだ妹が彼女たちを気に入っている可能性があったからである。

『おねえちゃまのようにできにゃいから。あたち、だめにゃこだって。おねえちゃま、だめにゃいもうとでごめんにゃしゃい。おねえちゃまはあたちがいもうとでかわいそうにゃの』

 小さい頃の妹はそれは可愛かったんだぞ!
 今もそれは可愛いけどな?

 今と違って、使う言葉も可愛らしくて。
 もうな、それはそれは、可愛くて可愛くて……。

 そんな可愛い妹に醜い話を吹き込んだ者たちは、ここ辺境伯領で普段から生きにくさを感じていた若者たちだった。
 我が領では珍しく賢いからとそれだけで家庭教師に任命したことを悔まれる。

 そいつらは王都の優秀な大学を卒業出来てはいても、王都での就職先に恵まれず戻ってきた奴らだったのだ。
 喜んで故郷に戻り、うちのために賢い頭を使って働いてくれるのだと期待していた私が馬鹿だった。

 即刻妹の家庭教師役から外したのち、そいつらは徹底的に処分済みだ。

 ふん、我が家の象徴とも言え、民からも期待される妹に悪意を植え付け、幼いうちから潰すつもりだったのか、自身の鬱憤を晴らしたかっただけなのかは知らないが、我が妹に手を出してここで無事に生きられるわけがなかろう。

 そんなことで、私はこのときから可愛い妹の教育を人任せにしないことも誓ったのである。
 それからは妹が逃げ回ることもなくなっていく。

 すると余計に逃げ回る男が目立つようにも変わったが。
 あれでもまだ伯爵位を持っている当主だからと、ひとたびは泳がせておくことにした。

 どうせあれは早々に私に爵位を譲ろうと動くことが分かっていたからな。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【長編版】婚約破棄と言いますが、あなたとの婚約は解消済みです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,323pt お気に入り:2,190

失敗したクラス転移をやり直して復讐+無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:773pt お気に入り:5

わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:29,508pt お気に入り:2,542

完結 愛人の子 それぞれの矜持

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:142

聖女を召喚したら、現れた美少女に食べられちゃった話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:994pt お気に入り:13

処理中です...