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だい1わ 異世界へGO!~コスケお兄さんとフシギな少女~

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この物語はテレビ局「首都テレビ」のスタジオから始まる…
始まりの舞台となるのは半世紀近い歴史を持つ子供番組「うたってコンコロリ!」のスタジオ…ここにこの物語の主役がまさに今お仕事中なのだが…

「みんな~!!こんにちは~!今日も元気~?コスケお兄さんは元気~!」
…この方が物語の主役、歌のお兄さんの井沢コスケお兄さん・28歳である。この番組のお兄さんを歴代最長の10年務めてきたのだが…今日が転機となる、いろんな意味で…
「リカお姉さんも元気元気!!」
もうひとり、コスケお兄さんの大事な相方、リカお姉さん…彼女も大事な番組の顔だが、物語上正直出番は少ないかもしれない…なぜかって?読んでくれればわかるさ…
「スタジオのみんな!テレビの前のみんな!きょうもい~っぱい楽しもうね~!…といいたいところなんだけど今日はコスケお兄さんから大事なお知らせがあります…お兄さん、どうぞ!」
「はい!お兄さんは今日までこのスタジオでみんなと歌って踊って遊んできましたけど、今日でコンコロリを卒業することになりました!」
…この収録時点ではまだお兄さんの卒業は公式発表されていない。関係者以外ではこの日収録に参加した子供たちがそれを知る初めての人たちとなるわけだ。当然子供たちはびっくり…
「え~っ!?」「コスケお兄さんやめちゃうの?」「大好きだったのに~」「なんで?ギャンブルでやらかした?どっかの通訳みたいに…」
…ただいま一部不適切な発言がありましたことをお詫びします。放送ではちゃんと編集で消してますのでご安心ください。それとこの物語はフィクションのため実際の人物は関係ありません。本当ですってば。あと、お兄さんお姉さんは現役期間中はギャンブル禁止だからギャンブルなんてしてません。信じてください。
「そんな…初めてお兄さんと会えると思ってずっと前から楽しみにしてたのに今日でお別れなんて…」
「あ~!泣かないで!お兄さんは卒業しても心の中ではずっとみんなと一緒だよ!さあ!顔をあげて元気に行こう!」
「お姉さんも最初ビックリしちゃったわ…でもお姉さんはこれからもお兄さんのお友達よ!だからキミも笑って今日はみんなで楽しんでコスケお兄さんを送り出しましょう!」
「うん!もう泣かない!」

…泣き出してしまう子も出てくるということがコスケお兄さんが子供たちにとってどれだけ偉大な存在だったか見て取れるだろう。
その後も収録は無事進んでいき子供たちと歌って踊ってゲームをしたりしてたのしんだお兄さんたち、いよいよエンディング。コスケお兄さんの歌のお兄さんとしての最後の舞台、そしてバトンタッチの時だ。
「まずはリカお姉さんから花束の贈呈です!お兄さん!10年間お疲れさまでした!そしてスタジオのみんなからも先ほどのちぎり絵のプレゼントです!」
…卒業を初めて知った子供たちは番組の中でお姉さんと一緒にちぎり絵のメッセージカードを作り、お兄さんにプレゼント。代表として渡すのは先ほど泣いていたあの子…
「コスケお兄さん、今まで楽しい歌と踊りを届けてくれて本当に…本当にありがとう…!ごめんなさい…もう泣かないって決めたのに…涙が…」
「それぐらいいつも僕のことを応援してくれてたんだね…ありがとう!」
「それでは最後にコスケお兄さんからメッセージです!」
「みんな!今まで長い間本当にありがとう!スタジオのみんな、そしてテレビの前のみんなといっぱい歌って踊って楽しんだ思い出はお兄さんの一生の宝物です!歌のお兄さんになれて本当によかったと思います!本当にありがとう!そして来週からみんなとこのスタジオで新しい遊ぶお兄さんを紹介します!ドリマルお兄さ~ん!」
「は~い!みんな、初めまして!僕が新しい歌のお兄さん、ドーリック松丸お兄さんです!みんな、ドリマルお兄さんって呼んでね!」
「ドリマルお兄さんは僕の昔からのお友達でもあるんだ!みんな!ドリマルお兄さんをよろしくね!」
…新しいお兄さん、ドーリック松丸ことドリマルお兄さんはドイツ人の父と日本人の母を持つハーフ。ドーリックは父方の名字、松丸は母方の名字からとった芸名であるが幼少期から「ドリマル」を自ら愛称として名乗っていた。。日本語、ドイツ語、英語の3か国語を話せるトライリンガルのハイスペックお兄さん。年は離れているため一緒に通ってた時期はないが、コスケお兄さんの高校の後輩でもあり、ガチで以前から2人は面識があった。だが彼のハイスペックっぷりをこの物語で披露する機会はないかもしれない…

…こうしてコスケお兄さんの最後の収録は終了。撮影が終わって子供たちが帰った後、スタッフや共演者からもお兄さんからのねぎらいのプレゼントが渡された…
「コスケお兄さん!私が右も左もわからない新人の頃から良きパートナーとして支えてくれてありがとう!10年間本当にお疲れさまでした!これで美味しいもの食べてきて!!」
リカお姉さんからは各地の飲食店で使えるグルメ券。
「ありがとうございます!リカお姉さんもこれからも頑張って!ドリマルお兄さんのサポートよろしく!彼お調子者なところあるから…」
「おっと!コスケ先輩!それじゃあオレがいつまでもガキみたいじゃないですか~!オレだってこれからは歌のお兄さん!ちゃんと自分の足でしっかりやってみせるさ!…おっと!プレゼントがまだでした!はい!オレの伯父のところで作ったビールっす!卒業したから飲めるようになったっしょ?18からお兄さんやってたからまだ飲んでないっすよね?記念すべき初飲酒はぜひこれで!オレはこれからしばらく飲めなくなるから」
…ドリマルお兄さんの父の実家はドイツの伝統あるビール醸造所。今は父の兄、すなわちお兄さんの伯父がついでいる。
そしてコンコロリのお兄さんお姉さんには「現役期間中の飲酒禁止」というルールもある。18歳でお兄さんに就任したコスケお兄さんはちゃんとこのルールを守り続けて10年間走ってきたのだからまだ酒というものを口にしたことがないのだ。一方のドリマルお兄さんは大の酒好き。歌のお兄さんのオーディションの話をいただいた時、酒をとるかお兄さんをとるかで迷ったという。だが「飲めないのはお兄さんやってるときだけ。一生飲めなくなるわけじゃない」ということでオーディションを受けることにしたとか。
「ありがとう!でもいきなり全部飲める自信はないから今度実家帰った時に両親と一緒にいただくことにするよ!」
「そして我々スタッフ一同からもプレゼントだ!」
「プロデューサーさん!」
「コスケくん…キミが歌のお兄さんに就任したとき、キミはまだ18歳で就任が決定したときは最年少お兄さんの誕生に現場もかなり驚いていたな…就任したての頃は子供が歌ってるようなまだまだあどけなさの残っていたキミだったが、収録を重ねる中で全国の子供たちのよきお兄さんとして次第に成長していった!オーディションの時からずっと見てきた私はキミをお兄さんに任命して正解だったと思うよ!これは我々スタッフからのねぎらいの気持ちだ!10年間お疲れ様!ゆっくり羽をのばしたまえ!さあ、中を開けてくれたまえ!」
「ありがとうございます!…えっと中身は…羽田~ロサンゼルスの往復航空券!それにドジャース戦やミュージカルのチケットもあるじゃないですか!」
「これからは海外も自由に行けるようになるな…これからは歌のお兄さん・コスケお兄さんから世界に通用するエンターティナー・井沢コスケとして頑張ってもらいたい!そんな思いから我々はカンパしてキミの長年のあこがれの地、アメリカへの旅行をプレゼントすることにした!あこがれの地・エンターテイメントの本場で羽をのばしながら大谷や山本の活躍、ハリウッドやアメリカのエンタメ界が紡いできた歴史にしっかりと刺激を受けて今後のキミの糧にしてもらいたい!」
「ありがとうございます!」
「コスケ先輩英語大丈夫?オレもついてきたいけどこれから現役お兄さんだから海外はいけないからな…」
「そーいってドリマルはアメリカ行きたいだけだろ?」
「バレたか!!」
「ハハハ!旅行には現地のコンダクターがついてくれるから大丈夫だ!その人は英語と日本語のほか、計5か国語話せるらしいぞ!」
「5か国語!?オレより多いじゃないっすか!」
「ははは!一本取られたなドリマルお兄さん!しっかりやれよ~!」

…そんなこんなでスタジオを後にし、家路へと向かうコスケお兄さん。道中でこれからの自分のことについても考えていた…
「ありがたいことに本格ソロデビューやいろんな番組のオファーもいただいてるからこれからもしばらく忙しくなるな…先輩お兄さんお姉さん方も卒業直後はいろんな番組やイベントに呼ばれて忙しかったって言ってたからな…それにしても世界に通用するエンターティナーか…今までずっと日本ローカルの舞台で戦ってきたから世界に目を通すことはなかったけどプロデューサーさんがああ言ってくれたから海外での活動も視野に入れて…」
「ねえ、あなた歌のお兄さんでしょ?」
「え!?そ、そうだけど…」
コスケお兄さんに話しかけてきたのはボロボロのローブをまとった謎の少女。
「キミ、どうしたのかな?もしかして迷子?」
「違う…これ、歌ってほしくて…」
少女は何かが書かれたボロボロの紙をお兄さんに渡した。
「歌?知ってる歌かな…なんだこれ!?見たこともない文字だけど…なんでか意味は理解できる…でも知らない歌だな…」
お兄さんが紙に目を通した直後、突然お兄さんはプログラミングされていたかのように紙に書かれた歌を歌いだした
「♪ひとつ希望を口ずさめば~ふたつ明日を待ち望み~」
(あれ?知らない歌のはずなのに勝手に口が…)
「♪みっつ未来を夢見たならば~よっつこのうた響かせん~」
「合格よ、お兄さん…さあ、私と一緒に来て…」
「えっ!?来てってどこに!?わっ!!」
その瞬間、2人の足元に謎の魔法陣が出現し、そこから放たれた光が2人を包みこんだ。
「わ~っ!まぶしい!!」

光が収まり、気づくとそこは…
「あれ?さっきと景色が違う…なんか荒廃しているな…」
「そうよ、ここは私たちの世界…輝きと希望を失った世界」
「キミの世界?輝きと希望を失ったって?」
「そう…だからあなたに救ってほしいの…」
「えっ!?僕に!?でも僕歌うことしか…」
「いいの…それですくえるから…あの歌を歌え他あなたには救世主の資格があるのだから…」
「えっ!?僕が救世主…」
「そう、詳しく話せば長くなるから向こうにあるお城でお話しましょ…王様からも詳しいお話しがあるから…」
ローブの少女に連れられ、お城に向かうコスケお兄さん。救世主とは!?この世界はどうなってしまってるのか!?
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