225 / 343
Ⅱ‐64 魚料理と獣人たち
しおりを挟む
■火の国の南海岸
マリアンヌとハンスがいると分かった獣人たちは、いったん村に帰って酒や魚を大量に持ってきた。皆が座れるように砂浜にレジャーシートを敷いてやり、車座で飲める環境を作ってマリアンヌさんを中心に大人たちの大宴会が始まった。ハンスやショーイも目覚めて、獣人たちの中で楽しそうに飲み始めた。リンネはビーチチェアで寝そべったまま、その様子を見ている。
14時を回ったところで少女たちも袋がいっぱいになったと言って、海から戻ってきたが、サリナ達の唇は紫色で鳥肌が立っていたので、今日は水に入るのを禁止した。3人とも少し疲れてきたのか、抵抗せずにシャワーを浴びて、パーカーを被ってバーベキューコンロの傍に座り込んでいる。
「疲れたのか?」
「うん、少し寒くなってきたの」
「エルとアナは大丈夫か?」
「私も少し寒い」
「私も・・・」
「だったら、車の中で昼寝してきても良いぞ。3人で布団に入ればあったまるだろう?」
「うん、ありがとう。・・・じゃあそうする。夜ご飯の支度は手伝うから、ちゃんと起こしてね」
「ああ、判ったよ。3人でゆっくりしてこい」
「はーい、エル、アナ、行こう!」
娘たちに昼寝をさせて海のほうを見るが、ミーシャはまだ上がってこない。さっき海面から潜る素敵なお尻と足を見たから、溺れているはずはないが、満足いく魚が見つからないのだろうか?
大人たちは何かよくわからない酒で、よくわからない話をしながら盛り上がり始めた。どうも、昔話のようで全く興味がわかないので、俺はネット情報をベースに炊き込みご飯の準備をしておくことにした。コメを洗って水につけて、しょうがと人参を細かく切って、大量にあるアワビを薄くスライスする。時間をおいて調味料と一緒に炊けば出来上がり・・・と。
―うん、思ったより簡単だな。
意外と手順通りに進むことに満足して、サザエで同じ準備をして二種類の炊き込みご飯を作ることにした。獣人たちも食べるだろうから、少しの量では足りないはずだった。
―いざとなればストレージから材料を追加しよう。
キャンピングカーで炊飯器のスイッチを入れるときにようやくミーシャ様が戻ってきた。
―うん、明らかに獲りすぎだな。
戻ってきたミーシャは白い顔が青くみえて、綺麗な唇にも血の気は無かった。その代わりモリを天秤棒のようにしてネットの袋二つに大量の魚を入れて歩いてくる。
「どうだ! お前の言う美味しそうな奴があるだろうか?」
袋から見えている魚は少なくとも大きなヒラメが2匹と根魚と青魚が入っている。美味しいのは確実だな。
「ああ、完璧だな。だが、まずはシャワーを浴びて来いよ。お湯を足してやるから体を温めないとダメだ」
「うん? そうか、そうだな。確かにずいぶんと体温が下がっているな」
俺はミーシャのためにポータブルシャワーに熱めのお湯を入れて、頭からシャワーをかけてやった。もちろんミーシャのためであって、俺を満足させるためではない。
「おぉ・・・、やはりシャワーは気持ち良いなぁ・・・、うん、ありがとう、サトル」
「いや、どういたしまして」
水着のミーシャの肌を間近で見ることができて、お礼を言いたいのはこっちだった。ただでさえ白い肌が冷え切ってさらに白くなっていたが、熱いシャワーのお湯で血行が戻り、ピンク色に変わっていく・・・、手を伸ばせば届く距離で・・・、最高です!
5分以上お湯をかけてから、バスタオルで体を拭いてもらった。
「今日はもう水に入らないだろう? 着替えてきたらどうだ? 乾いた服のほうが気持ちいいだろ?」
「そうだな、そうさせてもらおう」
「それで、良かったらこれを着てくれないかな?」
あえて水着から着替えてもらいたかったのはピンクのアロハシャツと白いキュロットのセットだった。南国気分で過ごせるデザインだし、アロハは俺も着ていて・・・、色違いのものだ。
「これか・・・、ふん、下は短いがズボンのようになっているのだな。動きやすそうだな。分かった、着替えてこよう」
「サリナ達が寝ているから、同じのを枕元に置いてやってくれ。まだ、起こさなくていいよ」
「うん、わかった」
ずっと水着姿を見ていたいという思いもあるが、あまり快適ではないだろうからな。明日もあるし、今日のところはこのぐらいで我慢しておこう。さて、ミーシャが獲ってきた獲物は・・・、デカいなぁ・・・、たくさんあるし、さばくのが大変だ。
「勇者様、その魚はどうされるおつもりですか?」
魚をネットから出して、大きなバケツの中に移していると後ろから声がかかった、振り返ると獣人の老人が3人立っている。一人はさっきも話していたジルと呼ばれた人だった。
「ええ、美味しそうな魚なので、食べようと思っています」
「そうですか、でしたらこちらの二人がお手伝いしますよ。魚をさばくのは得意ですからな」
「本当ですか!? それは助かるなぁ、少し多すぎてどうしようかと思っていたんです」
「ええ、ええ、お任せください」
ジルの後ろには、おそらくお婆さん?と言う感じの虎系と狼系の獣人が二人いる。口元に笑みを浮かべてニコニコしながら俺の傍に来た。
「それで勇者様、どのように料理しますか?」
「そうですねぇ、じゃあ・・・」
二人の獣人は俺のリクエストで手早く魚のうろこを落として、大きなヒラメは5枚におろして、それ以外の魚は内臓やエラを取る下処理をしてくれた。ヒラメは刺身にするとして、根魚はメバルとハタ系の魚だから・・・、福岡のばあちゃんなら・・・、やっぱり煮魚だな。だが、味付けは大丈夫か? 鍋のほうが楽そうだな・・・。
テントの奥に行って、何もない場所からこっそりと調理道具や調味料を追加で持ち出してきたところで、俺のミーシャ様が戻ってきた。ドライヤーで髪も乾かしたのだろう。金髪がふわふわになって、ピンクのアロハの上で踊っている。白いキュロットから出ている引き締まった足がとても素敵だった。
「もう、料理を始めているのだな。私も手伝うぞ」
「ああ、魚はこの人たちがさばいてくれたんだ。美味しそうなのは刺身で残りは焼き魚と鍋にしようと思う」
「うん、お前に任せる。それで、私は何をすればよいのだ?」
「そうだな・・・」
俺はミーシャに鍋に入れる野菜を切ってもらうことにした。獣人のおばあさんたちには魚を適当なサイズに切ってもらい、俺は大きな鍋を二つカセットコンロの上に置いて、アゴだしスープを入れて火にかけた。時間はまだ15時過ぎだが、大人の宴会モードだとこのまま夕食だか何だかわからない時間に食事が始まるのは確実だ、いや、既に始まっているのだろう。
つまみ用に先にアジに似た形の魚に塩を振って、串にさして焼き始めることにした。焼き奉行はお婆さんに任せて、俺はヒラメを刺身用と天ぷら用に切り分けた。カセットコンロと天ぷら用の鍋も追加で用意して、ヒラメの天ぷらを先に揚げる準備もする。ヒラメは刺身も美味しいが、天ぷらも柔らかくとても美味い。
「それはなんだ?」
「これは天ぷら油だな。今からミーシャが獲ってきたヒラメを揚げるんだよ」
「揚げる?」
「まあ、見ててよ」
適温になった油の中に溶いたてんぷら粉をつけてヒラメの切り身を投入すると、ジュワっという音ともに油の中で白い衣が躍っている。油の中から泡が沸き上がり、だんだんと色が変わってきたところで油から取り出して油切りの上に置いておく。
「何か、違うものになったようだな・・・」
「いや、揚げるとさっきの白い液体が衣になるんだよ」
「衣?」
「まあ、食べてみろよ」
俺は軽く塩を振った天ぷらを手でつまんでミーシャの口に運んだ。ミーシャは俺の手から躊躇なく口に入れて噛みしめ・・・。
「うぉッ! これはなんだ!? ふわふわして・・・本当に魚か? 美味いな、凄いぞ!」
―よし、初めての“あーん”だが、味も気に入ってくれた。
「気に入ってくれてよかったよ。たくさんあるからどんどん食ってくれよ」
「ああ、やはり自分で獲ってきた獲物が美味しいと嬉しいな」
「あー、なんか新しいの食べてるんでしょ!?こっちにもお願いしまーす」
ママさんが酔っぱらったままで俺に向かって手を振っている。目ざといのか耳ざといのか、新しい料理に気が付いたようだ。もちろん、おつまみにも良いと思って先に揚げ始めたのだが。魚料理はばあちゃんがやっているのを小さいころから見ていた。じいちゃんが釣ってきた魚を俺が好きな食べ方で食べさせてくれて、天ぷらは俺も手伝ったことがあるから、手順を覚えていてよかった。
油の温度を気にしながらどんどんヒラメを揚げて、ママさんと獣人たちに持っていくと驚きの声が上がった。
―これは凄い! 塩の味だが、何とも言えず美味い!
―周りについているのはパンだろうか?
―魚とは思えない味だな!
「サトルさん、これも美味しいわぁ。もっと頂戴ねぇ」
ママさんは色っぽい目線で俺に追加を要求してきたので、揚げる手を止めずにどんどん上げると、たくさんあると思った切り身があっという間に減っていく。サリナ達にも食わせないといけないから、天ぷらはここまでにして、次は焼き魚を食ってもらおう。
おばあさんたちが焼いていた魚を串から外して、食べやすいサイズに切って巣立ちを軽く振ってから皿に乗せて持って行ってもらった。何だかんだで17時を回ったので、そろそろ本格的な食事でも良いころだ。
「ミーシャ、鍋に野菜と魚を入れておいてくれよ。俺はサリナを起こしてくるよ」
「ああ、承知した」
キャンピングカーに戻ると炊き込みご飯も炊きあがったところだった。ベッドルームで少女たちは大きなベッドで3人一緒に布団にくるまっている。サリナを真ん中にエルとアナはしがみつくようにサリナに引っ付いている。アナの髪を撫でてやると少し汗ばんでいるぐらいだから、体はすっかり温まったのだろう。
アナを眺めていると二人の行く末が気になってきた。親元には返せないとして、サリナが面倒をずっと見るのか? ふむ、ママさんとも相談した方が良いな。それと、このバカンスが終わったら俺達の拠点を考える必要もある。ずっと、イースタンのところに居る訳にもいかないからな・・・、だが、本拠地があると敵に襲われる可能性があるから・・・いっそ・・・、いずれにせよ、エルとアナをずっと連れ歩くわけにはいかない。さて、サリナは何と言うだろう?それに、ミーシャともこの先・・・。
マリアンヌとハンスがいると分かった獣人たちは、いったん村に帰って酒や魚を大量に持ってきた。皆が座れるように砂浜にレジャーシートを敷いてやり、車座で飲める環境を作ってマリアンヌさんを中心に大人たちの大宴会が始まった。ハンスやショーイも目覚めて、獣人たちの中で楽しそうに飲み始めた。リンネはビーチチェアで寝そべったまま、その様子を見ている。
14時を回ったところで少女たちも袋がいっぱいになったと言って、海から戻ってきたが、サリナ達の唇は紫色で鳥肌が立っていたので、今日は水に入るのを禁止した。3人とも少し疲れてきたのか、抵抗せずにシャワーを浴びて、パーカーを被ってバーベキューコンロの傍に座り込んでいる。
「疲れたのか?」
「うん、少し寒くなってきたの」
「エルとアナは大丈夫か?」
「私も少し寒い」
「私も・・・」
「だったら、車の中で昼寝してきても良いぞ。3人で布団に入ればあったまるだろう?」
「うん、ありがとう。・・・じゃあそうする。夜ご飯の支度は手伝うから、ちゃんと起こしてね」
「ああ、判ったよ。3人でゆっくりしてこい」
「はーい、エル、アナ、行こう!」
娘たちに昼寝をさせて海のほうを見るが、ミーシャはまだ上がってこない。さっき海面から潜る素敵なお尻と足を見たから、溺れているはずはないが、満足いく魚が見つからないのだろうか?
大人たちは何かよくわからない酒で、よくわからない話をしながら盛り上がり始めた。どうも、昔話のようで全く興味がわかないので、俺はネット情報をベースに炊き込みご飯の準備をしておくことにした。コメを洗って水につけて、しょうがと人参を細かく切って、大量にあるアワビを薄くスライスする。時間をおいて調味料と一緒に炊けば出来上がり・・・と。
―うん、思ったより簡単だな。
意外と手順通りに進むことに満足して、サザエで同じ準備をして二種類の炊き込みご飯を作ることにした。獣人たちも食べるだろうから、少しの量では足りないはずだった。
―いざとなればストレージから材料を追加しよう。
キャンピングカーで炊飯器のスイッチを入れるときにようやくミーシャ様が戻ってきた。
―うん、明らかに獲りすぎだな。
戻ってきたミーシャは白い顔が青くみえて、綺麗な唇にも血の気は無かった。その代わりモリを天秤棒のようにしてネットの袋二つに大量の魚を入れて歩いてくる。
「どうだ! お前の言う美味しそうな奴があるだろうか?」
袋から見えている魚は少なくとも大きなヒラメが2匹と根魚と青魚が入っている。美味しいのは確実だな。
「ああ、完璧だな。だが、まずはシャワーを浴びて来いよ。お湯を足してやるから体を温めないとダメだ」
「うん? そうか、そうだな。確かにずいぶんと体温が下がっているな」
俺はミーシャのためにポータブルシャワーに熱めのお湯を入れて、頭からシャワーをかけてやった。もちろんミーシャのためであって、俺を満足させるためではない。
「おぉ・・・、やはりシャワーは気持ち良いなぁ・・・、うん、ありがとう、サトル」
「いや、どういたしまして」
水着のミーシャの肌を間近で見ることができて、お礼を言いたいのはこっちだった。ただでさえ白い肌が冷え切ってさらに白くなっていたが、熱いシャワーのお湯で血行が戻り、ピンク色に変わっていく・・・、手を伸ばせば届く距離で・・・、最高です!
5分以上お湯をかけてから、バスタオルで体を拭いてもらった。
「今日はもう水に入らないだろう? 着替えてきたらどうだ? 乾いた服のほうが気持ちいいだろ?」
「そうだな、そうさせてもらおう」
「それで、良かったらこれを着てくれないかな?」
あえて水着から着替えてもらいたかったのはピンクのアロハシャツと白いキュロットのセットだった。南国気分で過ごせるデザインだし、アロハは俺も着ていて・・・、色違いのものだ。
「これか・・・、ふん、下は短いがズボンのようになっているのだな。動きやすそうだな。分かった、着替えてこよう」
「サリナ達が寝ているから、同じのを枕元に置いてやってくれ。まだ、起こさなくていいよ」
「うん、わかった」
ずっと水着姿を見ていたいという思いもあるが、あまり快適ではないだろうからな。明日もあるし、今日のところはこのぐらいで我慢しておこう。さて、ミーシャが獲ってきた獲物は・・・、デカいなぁ・・・、たくさんあるし、さばくのが大変だ。
「勇者様、その魚はどうされるおつもりですか?」
魚をネットから出して、大きなバケツの中に移していると後ろから声がかかった、振り返ると獣人の老人が3人立っている。一人はさっきも話していたジルと呼ばれた人だった。
「ええ、美味しそうな魚なので、食べようと思っています」
「そうですか、でしたらこちらの二人がお手伝いしますよ。魚をさばくのは得意ですからな」
「本当ですか!? それは助かるなぁ、少し多すぎてどうしようかと思っていたんです」
「ええ、ええ、お任せください」
ジルの後ろには、おそらくお婆さん?と言う感じの虎系と狼系の獣人が二人いる。口元に笑みを浮かべてニコニコしながら俺の傍に来た。
「それで勇者様、どのように料理しますか?」
「そうですねぇ、じゃあ・・・」
二人の獣人は俺のリクエストで手早く魚のうろこを落として、大きなヒラメは5枚におろして、それ以外の魚は内臓やエラを取る下処理をしてくれた。ヒラメは刺身にするとして、根魚はメバルとハタ系の魚だから・・・、福岡のばあちゃんなら・・・、やっぱり煮魚だな。だが、味付けは大丈夫か? 鍋のほうが楽そうだな・・・。
テントの奥に行って、何もない場所からこっそりと調理道具や調味料を追加で持ち出してきたところで、俺のミーシャ様が戻ってきた。ドライヤーで髪も乾かしたのだろう。金髪がふわふわになって、ピンクのアロハの上で踊っている。白いキュロットから出ている引き締まった足がとても素敵だった。
「もう、料理を始めているのだな。私も手伝うぞ」
「ああ、魚はこの人たちがさばいてくれたんだ。美味しそうなのは刺身で残りは焼き魚と鍋にしようと思う」
「うん、お前に任せる。それで、私は何をすればよいのだ?」
「そうだな・・・」
俺はミーシャに鍋に入れる野菜を切ってもらうことにした。獣人のおばあさんたちには魚を適当なサイズに切ってもらい、俺は大きな鍋を二つカセットコンロの上に置いて、アゴだしスープを入れて火にかけた。時間はまだ15時過ぎだが、大人の宴会モードだとこのまま夕食だか何だかわからない時間に食事が始まるのは確実だ、いや、既に始まっているのだろう。
つまみ用に先にアジに似た形の魚に塩を振って、串にさして焼き始めることにした。焼き奉行はお婆さんに任せて、俺はヒラメを刺身用と天ぷら用に切り分けた。カセットコンロと天ぷら用の鍋も追加で用意して、ヒラメの天ぷらを先に揚げる準備もする。ヒラメは刺身も美味しいが、天ぷらも柔らかくとても美味い。
「それはなんだ?」
「これは天ぷら油だな。今からミーシャが獲ってきたヒラメを揚げるんだよ」
「揚げる?」
「まあ、見ててよ」
適温になった油の中に溶いたてんぷら粉をつけてヒラメの切り身を投入すると、ジュワっという音ともに油の中で白い衣が躍っている。油の中から泡が沸き上がり、だんだんと色が変わってきたところで油から取り出して油切りの上に置いておく。
「何か、違うものになったようだな・・・」
「いや、揚げるとさっきの白い液体が衣になるんだよ」
「衣?」
「まあ、食べてみろよ」
俺は軽く塩を振った天ぷらを手でつまんでミーシャの口に運んだ。ミーシャは俺の手から躊躇なく口に入れて噛みしめ・・・。
「うぉッ! これはなんだ!? ふわふわして・・・本当に魚か? 美味いな、凄いぞ!」
―よし、初めての“あーん”だが、味も気に入ってくれた。
「気に入ってくれてよかったよ。たくさんあるからどんどん食ってくれよ」
「ああ、やはり自分で獲ってきた獲物が美味しいと嬉しいな」
「あー、なんか新しいの食べてるんでしょ!?こっちにもお願いしまーす」
ママさんが酔っぱらったままで俺に向かって手を振っている。目ざといのか耳ざといのか、新しい料理に気が付いたようだ。もちろん、おつまみにも良いと思って先に揚げ始めたのだが。魚料理はばあちゃんがやっているのを小さいころから見ていた。じいちゃんが釣ってきた魚を俺が好きな食べ方で食べさせてくれて、天ぷらは俺も手伝ったことがあるから、手順を覚えていてよかった。
油の温度を気にしながらどんどんヒラメを揚げて、ママさんと獣人たちに持っていくと驚きの声が上がった。
―これは凄い! 塩の味だが、何とも言えず美味い!
―周りについているのはパンだろうか?
―魚とは思えない味だな!
「サトルさん、これも美味しいわぁ。もっと頂戴ねぇ」
ママさんは色っぽい目線で俺に追加を要求してきたので、揚げる手を止めずにどんどん上げると、たくさんあると思った切り身があっという間に減っていく。サリナ達にも食わせないといけないから、天ぷらはここまでにして、次は焼き魚を食ってもらおう。
おばあさんたちが焼いていた魚を串から外して、食べやすいサイズに切って巣立ちを軽く振ってから皿に乗せて持って行ってもらった。何だかんだで17時を回ったので、そろそろ本格的な食事でも良いころだ。
「ミーシャ、鍋に野菜と魚を入れておいてくれよ。俺はサリナを起こしてくるよ」
「ああ、承知した」
キャンピングカーに戻ると炊き込みご飯も炊きあがったところだった。ベッドルームで少女たちは大きなベッドで3人一緒に布団にくるまっている。サリナを真ん中にエルとアナはしがみつくようにサリナに引っ付いている。アナの髪を撫でてやると少し汗ばんでいるぐらいだから、体はすっかり温まったのだろう。
アナを眺めていると二人の行く末が気になってきた。親元には返せないとして、サリナが面倒をずっと見るのか? ふむ、ママさんとも相談した方が良いな。それと、このバカンスが終わったら俺達の拠点を考える必要もある。ずっと、イースタンのところに居る訳にもいかないからな・・・、だが、本拠地があると敵に襲われる可能性があるから・・・いっそ・・・、いずれにせよ、エルとアナをずっと連れ歩くわけにはいかない。さて、サリナは何と言うだろう?それに、ミーシャともこの先・・・。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
891
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる