辺境伯の5女ですが 加護が『液体』なので ばれる前に逃げます。

サラ

文字の大きさ
61 / 103

61. アイテムボックスと配達事故

しおりを挟む
「クゥー」と可愛らしくアルファント殿下のお腹が鳴った。思わず殿下の顔を見ると気まずげに苦笑いをしていた。

「ちょうど、お昼を食べようとしたところだったんだ。切りがいいところまで仕事をしていたから」
「後少しで終わるからとお昼を伸ばされるからですよ。アーク様とリーナ様はもうお昼は済まされたのですか」

侍従のランディ様が私達に尋ねてきたのでお兄様が

「はい、食べ終わってデザートも済ませました。今日のお昼はなんと、散らし寿司だったんですよ。リーナが朝からせっせと作っていましたから。肉じゃがと自家製チャーシューもありましたよ。分厚く切ったやつ」

と、得意そうに答えたのに合わせて殿下のお腹がまた鳴った。殿下は慌ててお腹を押さえていたけど。

「あの、もしよろしければ、ですが」
「もちろん、いいですよ。沢山作っていましたから。多分、殿下への差し入れ用に多めに作っていたんですよ。愛情たっぷり入っています。俺とリーナの。俺は応援しただけですけど味見で協力しました」
「もう、お兄様!」
「ごめん。リーナ。もし、良ければ」
「ああ、はい。もちろん構いません。殿下のお口に合えばいいんですけど」

申し訳なさそうに、でも、凄く食べたいという顔をした殿下に頼まれたので、神殿の食堂でランチを皆さまに振る舞った。
ノヴァ神官は早めのお昼だったそうだけど、大丈夫です、というので少な目に差し上げたのだけど何だか残念そうな顔をされてしまった。
ランディ様は最初、なにこれ! という顔をされたけど直ぐにかきこむように急いで食べ終えてしまった。スプーンで。
殿下とノヴァ神官はすごく上手にお箸を使うがランディ様は急いでいるとまだうまく使えないそうだ。

「この散らし寿司というのは初めて食べましたが変わった美味しさですね。癖になりそうです」
「癖にならなくていいから、忘れてしまえ」
「なんですか、殿下。独り占めしようとしてはいけませんよ。美味しいモノは分け合わないと」
「ああ、殿下、お願いがあるんですけど」
「何だ、アーク。君の願いなら何でもかなえよう」

「いや、そのお米を輸入した大陸にワサビはないですか? もし、あったら取り寄せてもらえたらいいなぁと」
「わさび! 握りか」
「そうです。殿下、握りずし、食べたいですよね。日本茶はあるから後はワサビがあれば」
「お兄様、握りずしは作れないわ。私が作れるのはてまり寿司」
「手まりも握りも変わらないだろう。だがリーナにばかり負担はかけられない。よし、私がガンバって寿司職人になろう。この世界で初めての寿司職人だ」
「殿下、他の大陸には寿司があるかもしれません。この世界ではなくこの国で初めて、ですよ」
「いえ、殿下は職人にはなれません。王族ですから。むしろアークがなればいいのでは」
「いや、俺は食べる専門で」
「ん、そう言えばさっき日本茶、と言ったか?」

あぁもう、お兄様の口の軽さとうっかり発言は如何してくれよう。
殿下に日本茶の事は内緒にしていたのにバレてしまった。結局、日本茶が出せる事とお兄様が「俺、麦茶ね」というので各種お茶が出せる事が居合わせた皆さまにバレてしまったので、仕方なく煎茶と麦茶を出しました。
お兄様は喜々として自分のアイテムボックスからミルクを出して麦茶にイン、したので殿下から変な目で見られているけど、どうする気だろう。

「そういえば、アークは自分のアイテムボックスを持っているのか? 結構、高価なのに良く買って貰えたな」
「いえ、まさか。これはリーナが」

お兄様、今更しまったって顔しても、もう遅い。

「リーナが?」
「えーと、リーナ、どうしたんだっけ?」

何故、こちらに振る! もう仕方がない。

「実は小さいモノに限るのですが『隠蔽の加護』のアイテムボックスは機能を付与できるんです。ですので、お兄様のウエストポーチをアイテムボックスにしました」

はい、『隠蔽の加護』のレベルが上がって、最初に付与した時にはカバンサイズだったのに、いまでは6畳ぐらいの容量はあるみたい。レベルが上がる都度、お兄様のウエストポーチには付与を掛けなおしているから。
お兄様、最近は自分のアイテムボックスにつきたてのお餅と餅つきの道具も一緒に持ち歩いて、自分の部屋でも餅つきしている。
前はラシーヌ様と二人で餅つきしていたのに、今じゃ一人でお餅つきをして「いい運動になる。筋肉ついたかなぁ」と喜んでいるから、まぁ、良いかなと思っているんだけど。

「凄いですね。聖女の加護がこんなに有用だったとは」
「やはり、長く使うとレベルが上がって、できる事がふえるんだな。『水魔法の加護』も想像力が鍵なのかな。ポーションはじめ出し汁にお茶も出せるなんて素晴らしい」
「アーク様とリーナ様がいるとどこに行っても食料の心配はありませんね」
「そうだな。まして、『隠蔽の加護』のアイテムボックスには沢山の食べ物が備蓄してあるらしいから、何があっても安心だ」

という事で色々ばれてしまったので殿下のウエストポーチにアイテムボックスの機能を付与した。ついでに、アンコロ餅とバター餅、散らし寿司も桶(お兄様のパンの殻)に一杯入れておく。ミルクとオレンジジュース、リンゴジュースにピーチのジュースの味がするポーションもタップリと。
お疲れの時には役に立つと思います。
実はポーションの効果も上がっているので殿下のポーションは効果大になっているけど多分、問題はないと思う。

ふと、殿下を見るとお顔がにやけて居る。口元の笑いを押さえようとしている? なんだか喜びが体中からあふれている? そんなにアイテムボックスが嬉しいのかしら?
と、その手に持っているのは何でしょう?!
あれは私のボツにした手紙じゃない! なんでここにあるの!?

「殿下、それは何!?」
「何ってリーナからの手紙。ありがとう。とても素直な気持ちが嬉しい」
「ウソ!? それはボツにした手紙なんです。どうしてここにあるんですか。読まないでください。お兄様! どうしてこの手紙を殿下に渡したのよ!」
「えっ、リビングのテーブルに置き忘れていたから殿下に渡すのかなって」
「宛名もなかったでしょう?」
「無かったけど、殿下の手紙を持って部屋に行ったから、その後、手紙を持ってきたら殿下宛かなって思うじゃないか。ポケットに入れていたのを大切そうにテーブルに置いてたから忘れないように持ってきたんだよ」

お兄様の有難迷惑な親切心でボツ手紙は殿下の手に渡ってしまった。
好きです。しか書かれてないのに、こんな素晴らしい手紙は家宝にするといって大切そうに胸元に仕舞われたのでなんとも言えなくなった。
字は、字は割と綺麗だったと思う。ただ、内容がストレートすぎるだけで。

ああ、もう恥ずかしい。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。 2025/9/29 追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...