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第3章
第109話 リリーの教えと大浴場※
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僕は茹でだこみたいになっちゃった顔をパタパタと手で仰いでさましながら部屋に戻った。思っていたより遅くなってしまった。クライス。怒ってないかな?
キーカードでドアを開けるとすぐそこにクライスがいた。もしかして遅いからここで待っていてくれたのかな?
「ただいま。ごめん、遅くなっちゃった」
「ああ、キルナ、おかえり。今日は風呂どうする?」
お風呂!! なんてタイムリーな質問だろう。まぁでもそうだよね。大浴場は19時までだものね。だけどまだ、心の準備が……。あ、でも待たせていたのだし早く答えないと……。
(婚約者なら普通にみんなやっている?じゃあ僕にもできるはず? ああ、どうしよ)
「今日は……大浴場に、行く」
僕はどうしたらいいのかわからないままとりあえず入浴セットを持ってクライスの腕に自分の手をかけた。
「わかった、いくぞ」
かけ声に合わせて、ぎゅうっと彼に掴まる。久しぶりの彼の体温。彼が近くにいる。ああ、どうしよ。それだけで心臓がドキドキする。なんでだろう。今までも転移魔法なんて何度もやってきたことなのに。どうして今日はこんなに落ち着かない気分になるの!?
僕はクライスとこうしてくっついていることが無性に恥ずかしくなってきて、手足をばたつかせた。
「おい、なんだ、キルナ。危ないから暴れるな」
転移中は術者の体から離れてはいけない。そうしないと魔力が途切れてどっかに飛ばされてしまう可能性があるから。クライスは僕が飛んで行かないように、両腕で僕を包み込んでぎゅうっと抱き抱えてくれた。ちょっと力が強すぎる気がするけど、これなら絶対に飛ばされることはない。安心だ(あぁ、いつも通り、クライスは……優しいな)
ぽおっと彼に見惚れている間に、無事転移が成功し大浴場に着いた。まずは体を洗う派の僕はいつも通り洗い場へと向かう。
すぐ隣でクライスは自分の体を洗っている。男らしい引き締まった体。なんて格好いいのだろう。彼から目が離せない。
ごしごしごしごし。
僕も横でごしごしと体を洗う。お風呂がちょうどいいよ、と言ったリリーの顔が思い浮かぶ。
手早く頭を洗い、手や足を洗い、胸を洗っているクライス。
早くしないとクライスが洗い終わってしまう、と僕は焦った。
あわあわあわ もこもこもこ
手元では考え事をしているせいで無意味に泡立てられた泡がののんみたいになっている。
そんな時、ばしゃっと体の泡を流し終えたクライスがこちらを向いた。そして真剣な眼差しで僕の方を見て言った。
「キルナ、あとで大切な話がある。部屋に戻ったら聞いてほしい」
僕は無言で頷いた。
(何の話だろう。まさか、ノエルのこと? ノエルがいるから僕はもういらないとか、そういう話?)
泡だらけになっている手が震える。嫌だ、そんな話聞きたくない。でも、僕にはノエルに勝てるものが何一つ見つからない。どうしよう。
ーー実際勝ち目ないでしょ。それくらいやらなきゃ。
リリーの言葉が頭の中に響いた。
内容が恥ずかしすぎて実際のメモ帳には書かなかったけど、心のメモ帳に書いた師匠の教えを思い出しつつ、僕は言った。
「ねぇ、クライス、あのさ、き、気持ち良く……してあげる」
「え?」
「ちょっと、目つぶっててくれる? すぐ済ませるから」
「なんだ? 背中を洗ってくれるのか?」
クライスは背中をこちらに向けようとしたけれど、そのままでいいから座っといて、と注意した。
僕は座っている彼の足をよいしょっと少し広げ、その間に入ってしゃがんだ。リリーが教えてくれた。ここをしゃぶれば男は誰でも気持ち良くなるって。
(ここを、な、舐めるって? みんなやっている? 本当に?)
いざ向き合うと訳がわからない。クライスは言われた通り目をつぶっている。僕は目の前にある彼のものをまじまじと見つめた。
(僕のより立派……。大きいな。形もきれい。洗い立てだし、これなら、大丈夫そう?)
緊張でごくりと唾を飲み込んだ。
いい、もうここまできたらやってみるしかない。やり方はリリーが懇切丁寧に教えてくれた。その通りにやればいい。まずは、手でそうっと持ち上げて、アイスキャンディーを舐めるみたいにゆっくりと舌を這わせていく。
ぺろっ。無味無臭。あ、石鹸の香りが少しするかも。
「はっ?なっ、キルナ。何して……」
クライスは驚いて目を開いてしまったみたい。そりゃ驚くよね、大切なところを食べられそうな状況なんだから。でも大丈夫。食べたりしない。舐めるだけだよ。と僕は証明するようにぺろぺろとそこを舐めてみた。
ぴちゃぴちゃぺろぺろぺろ。前世では精通していたし、大体どの辺が気持ちいいかは想像がつく。(もちろんここを舐めるなんて、考えたこともなかったけれど。)この辺かな? ぺろぺろ。裏筋? ぺろぺろ。キルナの体はまだ精通を迎えていない。彼は、どうなのだろう。
「くらえふ。もーへいふうひへうろ?」
僕がそこをしゃぶりながら喋ると、彼は何言っているかわからない、と息も絶え絶えに答えた。
そか、それは後で聞こう。これで合っているかな? 気持ちいいかな? それだけは気になるから教えて欲しい。
「きもひい?」
「はっ、ああ。き、気持ちいい、けど」
気持ちいいんだ!! やったぁ。うまくできているみたい!
僕はなんだかうれしくなってきて、だんだん調子がついてきた。リリーの説明の続きを思い出す。
次はお口に咥えて、と。
「んぐ」
彼のはかなり大きくて僕の口に入りきらない。
先っぽだけちゅぱっと咥えてあとは手でごしごししたらいいかな? 手で彼のものを擦りながら先っぽをなめていると……透明の汁が溢れ出てきた。
「キルナ、もうやめろ。だ、めだ。で、出る」
あ、と思った時にはもう遅かった。熱い液体が勢いよく僕の口の中いっぱいに流れ込んできて、僕はそれをどうしたらいのかわからなくって、そのまま喉の動くままごくごくと飲み干した。(さっきの質問の答えは聞かなくてもわかった、クライスは精通していたらしい。彼は僕よりずっと発育がいいもんね)
「キルナ。すまない。お、俺」
「ん、はぁ、苦っ……」
ん~なにこれ!! 苦いっ。おいしくない!! でも流れ込んできたもので、なんだかお腹がぽかぽかしている。すごく満たされているような感じがする。
「の、飲んだのか?」
「ふぇ、うん。全部飲んじゃった」
「……」
クライスは信じられない、という顔をして、しばらく何も言わずに椅子に座っていた。
(あれ? この表情。僕にくらっとして……いない?)
僕、間違えちゃったかな? もしかして、リリーまた僕に嘘を? 砂時計の時に彼が嘘つきだって学んだはずなのに、僕はまた騙されたのかもしれない。
(なんてこと!!?)
僕は急に正気に戻った。あんなところを舐めるなんて変態だと思われたかもしれない。僕だってそう思うよ、やばいよ。嫌われてしまった!? ノエルとクライスのことで頭がいっぱいで、僕とんでもないことをしでかしたかもしれない。
おそるおそるもう一度彼を見ると、クライスと目が合った。射精後でとろんとしていた目が、だんだん険しくなっていく。やがてその目はキッと僕を睨みつけた。ゲームだったらラスボスが出てくる時みたいにゴゴゴゴゴ~って効果音がついてきそうな恐ろしい雰囲気!!
「おい、キルナ」
「ひぃ、は、はい、何、でしょう」
思わず敬語になっちゃった。
「こんなこと、どこで覚えてきたんだ」
「ど、どこでって……」
ふぇ~ん。クライスがす~っごく怖いよぉ。僕はやっぱり間違えてしまったらしい。
「悪い子にはお仕置きが必要だよな」
「は…ィ」
怖すぎて反射的に返事をしてしまった。
ん~あれ? またお仕置き? なんで? と考えているうちになぜか体がどうしようもなく熱くなってきた。
「はぁ、は、ぁ。んんっ、な、にこれ? ……ねぇクライス。なんか熱いの。た……すけて」
クライスは僕のすがりつく手を握って、もう一方の手で僕の頬に手を添え目の奥を覗き込んできた。
「ちっ、魔力酔いだ。俺の魔力を大量に取り込んだから」
(ふぇ、魔力酔いって……何?)
視界がゆらゆら揺れて、頭がくらくらする。体に力が入らなくて崩れ落ちそうになったのを、クライスが抱きとめてくれた。そしてなぜか僕に、お前は精通しているかと聞く。僕はなんでこんなときにそんな質問? と思いながらゆるゆると首を横に振った。そして、なら口を開けろ、というから言われた通り口を開く。
「ん、」
クライスの美しい唇が僕の唇と重なるのがわかった。
キーカードでドアを開けるとすぐそこにクライスがいた。もしかして遅いからここで待っていてくれたのかな?
「ただいま。ごめん、遅くなっちゃった」
「ああ、キルナ、おかえり。今日は風呂どうする?」
お風呂!! なんてタイムリーな質問だろう。まぁでもそうだよね。大浴場は19時までだものね。だけどまだ、心の準備が……。あ、でも待たせていたのだし早く答えないと……。
(婚約者なら普通にみんなやっている?じゃあ僕にもできるはず? ああ、どうしよ)
「今日は……大浴場に、行く」
僕はどうしたらいいのかわからないままとりあえず入浴セットを持ってクライスの腕に自分の手をかけた。
「わかった、いくぞ」
かけ声に合わせて、ぎゅうっと彼に掴まる。久しぶりの彼の体温。彼が近くにいる。ああ、どうしよ。それだけで心臓がドキドキする。なんでだろう。今までも転移魔法なんて何度もやってきたことなのに。どうして今日はこんなに落ち着かない気分になるの!?
僕はクライスとこうしてくっついていることが無性に恥ずかしくなってきて、手足をばたつかせた。
「おい、なんだ、キルナ。危ないから暴れるな」
転移中は術者の体から離れてはいけない。そうしないと魔力が途切れてどっかに飛ばされてしまう可能性があるから。クライスは僕が飛んで行かないように、両腕で僕を包み込んでぎゅうっと抱き抱えてくれた。ちょっと力が強すぎる気がするけど、これなら絶対に飛ばされることはない。安心だ(あぁ、いつも通り、クライスは……優しいな)
ぽおっと彼に見惚れている間に、無事転移が成功し大浴場に着いた。まずは体を洗う派の僕はいつも通り洗い場へと向かう。
すぐ隣でクライスは自分の体を洗っている。男らしい引き締まった体。なんて格好いいのだろう。彼から目が離せない。
ごしごしごしごし。
僕も横でごしごしと体を洗う。お風呂がちょうどいいよ、と言ったリリーの顔が思い浮かぶ。
手早く頭を洗い、手や足を洗い、胸を洗っているクライス。
早くしないとクライスが洗い終わってしまう、と僕は焦った。
あわあわあわ もこもこもこ
手元では考え事をしているせいで無意味に泡立てられた泡がののんみたいになっている。
そんな時、ばしゃっと体の泡を流し終えたクライスがこちらを向いた。そして真剣な眼差しで僕の方を見て言った。
「キルナ、あとで大切な話がある。部屋に戻ったら聞いてほしい」
僕は無言で頷いた。
(何の話だろう。まさか、ノエルのこと? ノエルがいるから僕はもういらないとか、そういう話?)
泡だらけになっている手が震える。嫌だ、そんな話聞きたくない。でも、僕にはノエルに勝てるものが何一つ見つからない。どうしよう。
ーー実際勝ち目ないでしょ。それくらいやらなきゃ。
リリーの言葉が頭の中に響いた。
内容が恥ずかしすぎて実際のメモ帳には書かなかったけど、心のメモ帳に書いた師匠の教えを思い出しつつ、僕は言った。
「ねぇ、クライス、あのさ、き、気持ち良く……してあげる」
「え?」
「ちょっと、目つぶっててくれる? すぐ済ませるから」
「なんだ? 背中を洗ってくれるのか?」
クライスは背中をこちらに向けようとしたけれど、そのままでいいから座っといて、と注意した。
僕は座っている彼の足をよいしょっと少し広げ、その間に入ってしゃがんだ。リリーが教えてくれた。ここをしゃぶれば男は誰でも気持ち良くなるって。
(ここを、な、舐めるって? みんなやっている? 本当に?)
いざ向き合うと訳がわからない。クライスは言われた通り目をつぶっている。僕は目の前にある彼のものをまじまじと見つめた。
(僕のより立派……。大きいな。形もきれい。洗い立てだし、これなら、大丈夫そう?)
緊張でごくりと唾を飲み込んだ。
いい、もうここまできたらやってみるしかない。やり方はリリーが懇切丁寧に教えてくれた。その通りにやればいい。まずは、手でそうっと持ち上げて、アイスキャンディーを舐めるみたいにゆっくりと舌を這わせていく。
ぺろっ。無味無臭。あ、石鹸の香りが少しするかも。
「はっ?なっ、キルナ。何して……」
クライスは驚いて目を開いてしまったみたい。そりゃ驚くよね、大切なところを食べられそうな状況なんだから。でも大丈夫。食べたりしない。舐めるだけだよ。と僕は証明するようにぺろぺろとそこを舐めてみた。
ぴちゃぴちゃぺろぺろぺろ。前世では精通していたし、大体どの辺が気持ちいいかは想像がつく。(もちろんここを舐めるなんて、考えたこともなかったけれど。)この辺かな? ぺろぺろ。裏筋? ぺろぺろ。キルナの体はまだ精通を迎えていない。彼は、どうなのだろう。
「くらえふ。もーへいふうひへうろ?」
僕がそこをしゃぶりながら喋ると、彼は何言っているかわからない、と息も絶え絶えに答えた。
そか、それは後で聞こう。これで合っているかな? 気持ちいいかな? それだけは気になるから教えて欲しい。
「きもひい?」
「はっ、ああ。き、気持ちいい、けど」
気持ちいいんだ!! やったぁ。うまくできているみたい!
僕はなんだかうれしくなってきて、だんだん調子がついてきた。リリーの説明の続きを思い出す。
次はお口に咥えて、と。
「んぐ」
彼のはかなり大きくて僕の口に入りきらない。
先っぽだけちゅぱっと咥えてあとは手でごしごししたらいいかな? 手で彼のものを擦りながら先っぽをなめていると……透明の汁が溢れ出てきた。
「キルナ、もうやめろ。だ、めだ。で、出る」
あ、と思った時にはもう遅かった。熱い液体が勢いよく僕の口の中いっぱいに流れ込んできて、僕はそれをどうしたらいのかわからなくって、そのまま喉の動くままごくごくと飲み干した。(さっきの質問の答えは聞かなくてもわかった、クライスは精通していたらしい。彼は僕よりずっと発育がいいもんね)
「キルナ。すまない。お、俺」
「ん、はぁ、苦っ……」
ん~なにこれ!! 苦いっ。おいしくない!! でも流れ込んできたもので、なんだかお腹がぽかぽかしている。すごく満たされているような感じがする。
「の、飲んだのか?」
「ふぇ、うん。全部飲んじゃった」
「……」
クライスは信じられない、という顔をして、しばらく何も言わずに椅子に座っていた。
(あれ? この表情。僕にくらっとして……いない?)
僕、間違えちゃったかな? もしかして、リリーまた僕に嘘を? 砂時計の時に彼が嘘つきだって学んだはずなのに、僕はまた騙されたのかもしれない。
(なんてこと!!?)
僕は急に正気に戻った。あんなところを舐めるなんて変態だと思われたかもしれない。僕だってそう思うよ、やばいよ。嫌われてしまった!? ノエルとクライスのことで頭がいっぱいで、僕とんでもないことをしでかしたかもしれない。
おそるおそるもう一度彼を見ると、クライスと目が合った。射精後でとろんとしていた目が、だんだん険しくなっていく。やがてその目はキッと僕を睨みつけた。ゲームだったらラスボスが出てくる時みたいにゴゴゴゴゴ~って効果音がついてきそうな恐ろしい雰囲気!!
「おい、キルナ」
「ひぃ、は、はい、何、でしょう」
思わず敬語になっちゃった。
「こんなこと、どこで覚えてきたんだ」
「ど、どこでって……」
ふぇ~ん。クライスがす~っごく怖いよぉ。僕はやっぱり間違えてしまったらしい。
「悪い子にはお仕置きが必要だよな」
「は…ィ」
怖すぎて反射的に返事をしてしまった。
ん~あれ? またお仕置き? なんで? と考えているうちになぜか体がどうしようもなく熱くなってきた。
「はぁ、は、ぁ。んんっ、な、にこれ? ……ねぇクライス。なんか熱いの。た……すけて」
クライスは僕のすがりつく手を握って、もう一方の手で僕の頬に手を添え目の奥を覗き込んできた。
「ちっ、魔力酔いだ。俺の魔力を大量に取り込んだから」
(ふぇ、魔力酔いって……何?)
視界がゆらゆら揺れて、頭がくらくらする。体に力が入らなくて崩れ落ちそうになったのを、クライスが抱きとめてくれた。そしてなぜか僕に、お前は精通しているかと聞く。僕はなんでこんなときにそんな質問? と思いながらゆるゆると首を横に振った。そして、なら口を開けろ、というから言われた通り口を開く。
「ん、」
クライスの美しい唇が僕の唇と重なるのがわかった。
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