おやすみ、お嬢様 〜Good night, My Lady 〜

藤野ひま

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朝ですよ(2)

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近づいても榛瑠は動かない。

ふわっとした金の髪が目にかかっている。私はそっと手を伸ばして髪をどける。

薄く笑いながら、艶のあるいたずらっぽい目が私を見る。

……しょうがない人。

私はベットに手をつくと、身を乗り出して榛瑠の唇にキスをする。それが、彼の無言の命令。

まったく。この男は眼だけで人を動かす。

榛瑠が私を引き寄せた。次の瞬間、私はベットに横たわっていて榛瑠が上から見ていた。

「うわっ、ちょっと」

キスしようとする彼に私は慌てて言った。

「なに?」

「ちょっと待って。わたし、こんなことをしにきたわけじゃあ……」

「違うの?」

悪い顔してる。そのうち嫌ってやるから。

「違うの! 久しぶりの休みだし、ちゃんとしたデートがしたいの」

「ちゃんとした? どんなの?」

「え、だから……」どんなのだ? 「例えば、映画を見に行ったり」

「今、面白そうなのやってます?」

う、たしかに今あんまりなんだけど。

「例えばだって! そのあと、お買い物行ったり」

「欲しいものでも?」

「そうじゃないけど色々いっしょに見たりしたい。お洋服とか、雑貨とか」そうよ、なんとなくブラブラしたり、とかしたことないんだから。「それで、素敵なカフェでお茶したりして」

いいなあ、したいなあ。目的なく二人でいたいなあ。

って、付き合っているハズの彼氏になんでこんなお願い、今さらしないといけないのよ。

わたし的に元凶と思われる人が、やさしく額にキスをする。

「一花、かわいいね」

ドキドキする。ほんとかな? だったら……。

「ですが、大変申し訳ありませんが、まったく興味ありません」

そう言って、榛瑠はにっこり笑った。

「えっ、でも」

「買い物したいなら屋敷に外商よびなさい」

「そういうことじゃなくて!」

「それか後から私のクレジットナンバー教えましょうか?」

「そんなのいらない! 私はネットショッピングがしたいわけじゃあ……」

唇で唇をふさがれて言葉が途切れる。バタバタしてみるも事態は悪化。

榛瑠が離れて膝立ちになって私を見下ろした。彼の白い肢体が目に入って思わずぎゅっと目を閉じる。

この人、楽しそうな、人をくうような顔してるし!

「かわいいよ、一花」

そう言って、榛瑠は目をつぶったままの私の手を取ると指にそっとキスをした。

「大丈夫ですよ」

「な、なにが?」

顔のすぐ近くに彼の気配を感じる。私の体中でドキドキいってる。

「……ちゃんと、こんなこと、で、時間使うのも悪くないって思わしてさしあげますからね」

耳元で囁かれて、抵抗してもムダだと知る。そして、甘いキスがくる。

……でも、でもね。いつもいつも。少しは私の話聞いてよ。この自己中男ーー!


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