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昼ですね(1)
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「いつまでふてくされているんですか?お嬢様」
リビングでソファに座ってクッションを抱えている私に、再び榛瑠は声をかけた。
いつまでだってふてくされてやるんだから。
彼の小さなため息が後方から聞こえる。
私が身なりを整えて部屋に入って来た時、榛瑠は窓際で壁にもたれながら立って本を読んでいた。
これも最近知ったんだけど、彼はあまり座って読まない。なんだか知らないけれど、彼的に立っている方が読み進められる、らしい。
高層マンションの大きな窓から入ってくる柔らかい早春の光が、生成りのシャツに身を包んだ榛瑠をつつんでいて、一瞬見とれてしまった。
それでもって、見惚れた自分に腹をたてる。
本当にこの人は見かけだけは描いたみたいにキレイなんだから。でも、見た目で騙してるあたり悪魔並だわ。というか、いつまで騙され続けてるんだろう、私。
で、私はそのまましばらくふてくされている。
「そんなにいつまでも怒らないで、一花」
榛瑠がソファの背もたれ越しに言う。私の座っている横に、後ろからぽんっと本が置かれる。英語表記の題に銀色の愛想のない表紙。日本語で書かれていても私には理解不能のヤツだ。
「何がそこまで気に入らないんです?」
「……だって、せっかく早く来たつもりだったのに、もう、お昼だよ」
私は振り向かずに言った。時計がそろそろ正午を示そうか、という時間だった。
「それはどちらかというと、眠ってしまったあなたのせいでは」
言い返したかったが、やめた。下手に口を聞くといつも彼のペースになってしまう。
代わりに私は黙って顔を横に向けた。
小さくため息の音がした。呆れてるんでしょ、わかってる、くだらないよね。わかってるわよ。でも、私の気持ちも少しはわかりなさい。
「一花はあれだね」
なによ。
「ベッドの中のほうが素直だよね」
私は振りかえるとソファ越しに抱えていたクッションを思いっきり彼の顔にぶつけた。
榛瑠は腕でよけつつ声を出して笑った。
「だって、そうだろ。どっちも可愛いけど」
「調子のいいことばっかり言ってないでよ!」
「ごめん、そんなに怒らないで」
榛瑠が後ろから耳元に優しい声で言う。その時点で既にあざといわ。
「そう言うけど、私にとっては悪くない休日ですよ? さ、そろそろ機嫌直して? せっかくの休日なんだから。お腹空きませんか? 何か召し上がります?」
そう言われて、まあそうだけど、と思う。あんまり怒っていてもいいことないし。なんか納得できないけど……。
「何かって、なに?」
「サンドイッチくらいなら用意できますよ。外食でもいいですし。召し上がりたいものありますか?」
外に行きたいなあって思う。でも、榛瑠のご飯も食べたい。最近、食べる機会なかったし。どっちも捨てがたい……って、私、食べ物で懐柔されすぎだよ。
「サンドイッチだったら中身はどんなの?」
トゲトゲしい私に彼は穏やかに答える。
「ベーコンとトマト、あとは バジルチキンサンドってとこかな」
待って、なにそれ。私の好きなやつじゃない。家にあるものでっていうのじゃなくて、わざわざ用意してあるやつでしょ。
毎日、忙しいのに。昨日だって終業間際にトラブル起きて遅くまで残業になったの知ってる。一事務員の私はさっさと定時に帰ったけど。
で、一週間疲れたあ、って小学生並みの時間に寝ちゃって。それで今日は早起きできたのよね。
「……おうちで食べる」
申し訳なさで逆にふてくされたような声になってしまった。榛瑠は微笑して、用意しますね、と言ってキッチンに向かう。
私はとっさにその腕を掴んだ。
リビングでソファに座ってクッションを抱えている私に、再び榛瑠は声をかけた。
いつまでだってふてくされてやるんだから。
彼の小さなため息が後方から聞こえる。
私が身なりを整えて部屋に入って来た時、榛瑠は窓際で壁にもたれながら立って本を読んでいた。
これも最近知ったんだけど、彼はあまり座って読まない。なんだか知らないけれど、彼的に立っている方が読み進められる、らしい。
高層マンションの大きな窓から入ってくる柔らかい早春の光が、生成りのシャツに身を包んだ榛瑠をつつんでいて、一瞬見とれてしまった。
それでもって、見惚れた自分に腹をたてる。
本当にこの人は見かけだけは描いたみたいにキレイなんだから。でも、見た目で騙してるあたり悪魔並だわ。というか、いつまで騙され続けてるんだろう、私。
で、私はそのまましばらくふてくされている。
「そんなにいつまでも怒らないで、一花」
榛瑠がソファの背もたれ越しに言う。私の座っている横に、後ろからぽんっと本が置かれる。英語表記の題に銀色の愛想のない表紙。日本語で書かれていても私には理解不能のヤツだ。
「何がそこまで気に入らないんです?」
「……だって、せっかく早く来たつもりだったのに、もう、お昼だよ」
私は振り向かずに言った。時計がそろそろ正午を示そうか、という時間だった。
「それはどちらかというと、眠ってしまったあなたのせいでは」
言い返したかったが、やめた。下手に口を聞くといつも彼のペースになってしまう。
代わりに私は黙って顔を横に向けた。
小さくため息の音がした。呆れてるんでしょ、わかってる、くだらないよね。わかってるわよ。でも、私の気持ちも少しはわかりなさい。
「一花はあれだね」
なによ。
「ベッドの中のほうが素直だよね」
私は振りかえるとソファ越しに抱えていたクッションを思いっきり彼の顔にぶつけた。
榛瑠は腕でよけつつ声を出して笑った。
「だって、そうだろ。どっちも可愛いけど」
「調子のいいことばっかり言ってないでよ!」
「ごめん、そんなに怒らないで」
榛瑠が後ろから耳元に優しい声で言う。その時点で既にあざといわ。
「そう言うけど、私にとっては悪くない休日ですよ? さ、そろそろ機嫌直して? せっかくの休日なんだから。お腹空きませんか? 何か召し上がります?」
そう言われて、まあそうだけど、と思う。あんまり怒っていてもいいことないし。なんか納得できないけど……。
「何かって、なに?」
「サンドイッチくらいなら用意できますよ。外食でもいいですし。召し上がりたいものありますか?」
外に行きたいなあって思う。でも、榛瑠のご飯も食べたい。最近、食べる機会なかったし。どっちも捨てがたい……って、私、食べ物で懐柔されすぎだよ。
「サンドイッチだったら中身はどんなの?」
トゲトゲしい私に彼は穏やかに答える。
「ベーコンとトマト、あとは バジルチキンサンドってとこかな」
待って、なにそれ。私の好きなやつじゃない。家にあるものでっていうのじゃなくて、わざわざ用意してあるやつでしょ。
毎日、忙しいのに。昨日だって終業間際にトラブル起きて遅くまで残業になったの知ってる。一事務員の私はさっさと定時に帰ったけど。
で、一週間疲れたあ、って小学生並みの時間に寝ちゃって。それで今日は早起きできたのよね。
「……おうちで食べる」
申し訳なさで逆にふてくされたような声になってしまった。榛瑠は微笑して、用意しますね、と言ってキッチンに向かう。
私はとっさにその腕を掴んだ。
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