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夕方だ(3)
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彼と並んでのぼりながら私は聞いてみた。
「ねえ、結構見られていたけど平気? いつものことか」
彼はしょっちゅうそんな視線にさらされる。昔からだ。見ちゃう人の気持ちもちょっとわかるんだけどね。視界に入っちゃうんだもの。キレイなんだもの。
「たまに、ガンつけてんじゃねえって言いたくなる人もいますけど、大概は気になりません。きりがない」
だよねえ。でも、私だったら嫌だろうなあ。並んでるだけでも本当はちょっと嫌だもん。言わないけど。
「どちらかというと、誰かといてその人に迷惑かかりそうな時は気になります。めったにないですけど。今とかね」
「私? 私は平気だよ。誰も見てないもん、私なんて。ただ、あなたがどう思ってるのかなあって思っただけ」
私なんてせいぜい何か思われたところで、何、あの子、似合わないってくらいよ、どうせ。
「それならいいですけど。まあ、人の顔なんてすぐ慣れますからね。会社なんかではほぼいないでしょう? 最初だけですよ」
そうかなあ? 結構、違う女性社員いるような……。この前、ストレス解消とかって他部署の子が覗きに来てたらしくて、怒ってたし、私の周り……。ここだけの話、男性社員もちらほら……。
でも、確かに赴任当初に比べればずっといい。
「結局、見てくるのって関わりのない、どうでもいい第三者なんです。そんなヤツどうでもいいから」
そうかあ、そういうふうに思うんだ。これに限らず、自分にとって必要なこととそうでないことの線引きがはっきりしているなあと思う。
「もっとも例外もいますけどね」
「え?」
「会社で目がよく合う人も正直いますし。あと、なんでだか、一番慣れてそうな人がよくボケって見てくるとかね」
ボケって、あの、それってつまり……。
「え、あ、私ですか?」
「自覚あったんだ」
榛瑠が笑いながら言う。だって、仕方ないじゃない。気づくと見ちゃってたりして、でも、後の祭りというか。後から、あっ、て思うというか……。
「不可抗力なんだもん……」
「私は構いませんけど、付き合っていること隠したいんじゃないのって思うけどね。知りませんよ?」
たしかにそうなんだけど。
「大丈夫です。誰かさんが毎日、見事に無視し続けてくれるおかげでいっこうに疑われる気配はありません」
だいぶ登ったので、言ってて息が切れた。そうなの、見ようが何しようが、完全に部下、それもあまり関わりのない部下扱いで、ほぼ、無視。ええ、悲しくなるほどに。
そうしてってお願いしたのは私なんだけど。わかっているのだけれど。
「私は言いつけに忠実でしょう?お嬢様」
榛瑠が立ち止まって私を見て言う。皮肉っぽい笑顔をつけて。
「ありがとうね!」
私も皮肉を込めて言ってみるも、全然太刀打ちできてる感じがしない。
「ねえ、結構見られていたけど平気? いつものことか」
彼はしょっちゅうそんな視線にさらされる。昔からだ。見ちゃう人の気持ちもちょっとわかるんだけどね。視界に入っちゃうんだもの。キレイなんだもの。
「たまに、ガンつけてんじゃねえって言いたくなる人もいますけど、大概は気になりません。きりがない」
だよねえ。でも、私だったら嫌だろうなあ。並んでるだけでも本当はちょっと嫌だもん。言わないけど。
「どちらかというと、誰かといてその人に迷惑かかりそうな時は気になります。めったにないですけど。今とかね」
「私? 私は平気だよ。誰も見てないもん、私なんて。ただ、あなたがどう思ってるのかなあって思っただけ」
私なんてせいぜい何か思われたところで、何、あの子、似合わないってくらいよ、どうせ。
「それならいいですけど。まあ、人の顔なんてすぐ慣れますからね。会社なんかではほぼいないでしょう? 最初だけですよ」
そうかなあ? 結構、違う女性社員いるような……。この前、ストレス解消とかって他部署の子が覗きに来てたらしくて、怒ってたし、私の周り……。ここだけの話、男性社員もちらほら……。
でも、確かに赴任当初に比べればずっといい。
「結局、見てくるのって関わりのない、どうでもいい第三者なんです。そんなヤツどうでもいいから」
そうかあ、そういうふうに思うんだ。これに限らず、自分にとって必要なこととそうでないことの線引きがはっきりしているなあと思う。
「もっとも例外もいますけどね」
「え?」
「会社で目がよく合う人も正直いますし。あと、なんでだか、一番慣れてそうな人がよくボケって見てくるとかね」
ボケって、あの、それってつまり……。
「え、あ、私ですか?」
「自覚あったんだ」
榛瑠が笑いながら言う。だって、仕方ないじゃない。気づくと見ちゃってたりして、でも、後の祭りというか。後から、あっ、て思うというか……。
「不可抗力なんだもん……」
「私は構いませんけど、付き合っていること隠したいんじゃないのって思うけどね。知りませんよ?」
たしかにそうなんだけど。
「大丈夫です。誰かさんが毎日、見事に無視し続けてくれるおかげでいっこうに疑われる気配はありません」
だいぶ登ったので、言ってて息が切れた。そうなの、見ようが何しようが、完全に部下、それもあまり関わりのない部下扱いで、ほぼ、無視。ええ、悲しくなるほどに。
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