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28話 街から脱出するはずがルームメイトができました
しおりを挟む「ねぇ、ところでさ、この素材すごく処理しやすいんだけど! なんで? 何が違うの?」
話しながらも手を動かしていたリナが、まじまじと素材を見ながら尋ねてくる。手にしているのは、ジャイアントラビットの皮だ。一般市民向けに幅広い用途があるので、ある程度の価格になる。
「あー、それな。最初に回収する時点で、血抜きしてからやるといいんだよ。あとは慣れかな」
オレは水魔法が使えなかったから、いかにキレイに回収して後処理をラクにするか、いつも考えていた。処理時間が短ければ、その分たくさん練習できたからな。
「融合」
処理し終えた素材を、融合魔法で大きな一枚の毛皮にする。こうすることで買取価格が高くなるんだ。
「こ、これは……! カイト、素材屋としても食べていけるね」
「うん、昔はそれやろうと思ってた」
「あはは、じゃぁ、街に行こうか。素材を売ったら晩ごはん買って帰ろう!」
「そうだな、行くか」
そうだ、これからは誰もいない家に帰るのではない。一緒に帰ってくれる、仲間がいるんだ。
軽くなる心にカイトは笑顔を浮かべた。
***
「ここが家だよ。遠慮せずに入って」
オレは扉を開けて、リナを先に中に入るようにうながす。
「お邪魔しまーす! わぁ、ステキなお部屋だね!」
「1階はリビングとキッチン、あと風呂やトイレ、右の奥がオレの部屋だ。2階は3部屋あるけど、どこも使っていないから好きにしていいよ」
「さっそく2階見てきていい? 荷物も置いてきたい」
ウズウズしながら聞いてくるリナを、微笑ましく思う。
「荷物は持っていってやるから、部屋決めてきていいよ」
「カイト、ありがとう!」
リナはリビングの奥にある階段から、2階へと駆け上がって行った。3ヶ月も滞在しているのに、宿屋から持ってきたのは、大きめのリュックひとつだけだ。
街を転々としてきたっていってたから、荷物はいつも最小限なんだろう。
何度も追放されてきたと、倉庫でリナから聞いた。それでもリナはオレのことを、全面的に信頼してくれてるみたいだ。
それならオレは、リナの信頼に全力で応えたいと思う。
「カイト! 部屋決めたよ!」
「そうか、いま行くよ」
嬉しそうにはしゃぐリナと、ルームメイトとしての生活がこうして始まった。
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