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ディルロード帝国

控室

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ディルロード帝国の面々と会場に転移してきた。

「こ、これは……!」
「おお…なんと煌びやかな…」
「この様な城がリリエンタにあろうとは…」

神国の人達と同様に凄く驚いている。

「失礼だが、この城は元々リリエンタに存在していたのであるか?どの部族が所有しているのか?」
「昨日みんなで作りましたので、このお城に持ち主はいませんよ。全てが終わったら取り壊すつもりです。」

帝国に圧力をかけるために作ったんじゃないので心配しないでください。

「取り壊す…のか…。」

何だか残念そうな皇帝陛下。
壊さないと帝国にとっては嫌だよね?

控室をご用意していますので、ご案内しますね。

部屋には飲み物や簡単な食事も用意しておいた。
警戒して利用してくれないかと思っていたけど、護衛の人が毒味をしてから其々に配っていた。

「ミナさん…少しお話宜しいですか?」

話しかけてきたのはレア皇女だ。やっぱり雰囲気が違う。《アドラステア》が作動していないからかも知れないけど、記憶障害が直っているのならこの交渉に支障が出るかも知れない。

「はい。私もお聞きしたい事があります。」
「そうですか。ミナさんからどうぞ。」

部屋の隅に移動して話をする。

「皇女殿下は記憶が戻っておられますか?」
「…はい。先日はお見苦しい所をお見せしました。」
「今回の戦争を指示したの皇女殿下だとお聞きしていますけど本当ですか?」
「はい…私がお話ししたい事はその件です。」

戦争の発端が自分にあったと認めるレア皇女。何やら思い詰めた表情をしているけど…

「私の出来る事ならお手伝いします。話してください。」
「私は時折記憶が曖昧になるのです。今回もその類の事だと思っていたのですが、様子がおかしくて……」

元々記憶障害があったって事かな?詳しく話を聞いてみよう。

レア皇女が言うには時折、数日の記憶が無くなっていてその間に指示した事が恐ろしい内容なのだとか。

「私は皇女殿下から神リヴェルティアを憎んでいると聞きました。それは本当ですか?」
「はい。私がミナさんにお話しした記憶は残っています。」

ユイさんから聞いた事を思い出しながらレア皇女に今までの事で自分自身でやってきた事といつの間にか指示していた事を区別していく。
どうやら大陸統一までは全て自分でやってきたらしい。それ以降、転生者集めやアフターギフトの使用、魔王のギフトを奪う計画と今回の開戦は記憶が曖昧になっている事が分かった。

これはもしかすると…。

「皇女殿下、少し身体を調べさせて頂いても宜しいですか?」
「…はい。何か分かるならお願いします。」

《アドラステア》を起動してオーバーブースト付きの鑑定でレア皇女を調べる。
アウラさんにもサポートをしてもらって不審な点が無いか探す。

[神の残滓を検知しました。解析……女神リヴェルティアです。]

つまりリヴェルティア様がレア皇女の身体を乗っ取っていたって事だ。
事実をレア皇女に伝えよう。

「そうだったのですか…私はリヴェルティアを憎むあまりに人格が破綻していたのかと思っていました。」

それでもリヴェルティア様に復讐できるのなら構わないとさえ思っていたと彼女は言った。

「リヴェルティア様を憎む理由を教えてもらえますか?」
「はい。ただ…ここでは話辛いので場所を変えられませんか?」

空いている部屋は結構あるので、近くの空き部屋に行こう。

「ミナ殿、先程から何をされておられるのか…?」
「まさかレア皇女に危害を…」
「違う。ミナさんに相談したい事があったのだ。長年の謎が解けた。詳しく話をしたいので部屋を変える。」

レア皇女が厳しい口調で私を咎める護衛達を叱責する。

「相談も無しに申し訳ありません。護衛の方も数人お越し下さい。ウルちゃんとオル君はここに置いていきます。」

護衛はサトルさん、ナオトさん、リサさんが来る事に。
転生者の方が都合がいいのかな。

隣の部屋に移動してさっきの話を再開する。

「私はリヴェルティアに無理やり転生させられてアスティアに来たのです。」

この時点でヴェルトラオム様が取り決めた事と話が違う。
彼女は神界に連れて来られた時、記憶を失っていた。リヴェルティア様からは地球で不幸な目に遭って死亡した事とアスティアで新しく人生をやり直せると教えられる。何不自由の無い豊かな暮らしの出来る境遇に生まれ変わらせてくれると。

この辺りは私達とほとんど変わらない。

生まれたのはディルロード帝国。皇帝の実子だった。生まれた頃から後継者争いに巻き込まれて兄弟達と命のやり取りをさせられた。本人達が直接争った訳ではないけど、毎日何かに怯えて暮らす生活に、心が少しずつ壊れていくのを感じたとレアさんは語る。

転機が訪れたのは6歳の頃、ユイさんが教えてくれた他国侵攻だ。
敵国の攻撃は激しく帝国は敗戦を重ねていった。帝国が負ければ皇帝は勿論、その娘であるレアさんもただでは済まない。兄弟の中には他国に亡命する者も現れて、いよいよ帝国が滅びる一歩手前まできていた。

父親である皇帝に落ち延びる様に言われるも、この時失っていた記憶が戻る。
優しい家族に囲まれて幸せに暮らしていた前世、転がる様に転落していった辛く悲しい過去。
戸惑いはしたものの現状をどうにかしなければこの世界でも未来はない。

前世の知識を総動員して敵国の猛攻を凌ぎ切り、押し戻す事に成功した。

「多大な被害を出してしまいましたが、そこからは私が指揮をとる事で何とか勝ち続ける事ができました。今でこそ常勝の帝国などと言われていましたが、その実苦難の連続でした。」

軍の再編成から内政に到るまで、生き残る為に全てのことをやってきたとレアさんは語った。

「それと前世の記憶で府に落ちないことが幾つもある事に気付きました。ある時私は天啓を受けました。」

そこでリヴェルティア様に知らされたのは、レアさんが意図的に死ぬ様に仕向けられたという事だった。

「父の事業の失敗、母の病死、兄の事故死まで…あれが仕向けたものだと笑いながら言っていました。」
「そんな…アスティアの神様が地球に干渉できるんですか?」
「分かりません…。リヴェルティアは空間を司る神と言っていました。もしかしたら直接干渉できるのかも知れません。」

それが事実なら何でそこまでしてレアさんをアスティアに連れてきたのだろう?
これはリヴェルティア様に直接聞かないと分からないかな。
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