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特別編2:神様はじめました
家族
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お母さんに対してもやる事は殆ど変わらなかった。
まず魔法を使うことができる事を見せて、異世界の存在を認めさせる事から始めて、転移で世界中を飛び回りながら家族しか知らなさそうな話をして転生者という事を理解してもらったそう。
「私達が莉緒が他所の世界で幸せになっていたと知って喜ばない訳がないじゃない。でも、話が突飛過ぎて簡単には信じられなかったのよ。それは理解してね?」
「分かってるわよ母さん。でも信じてくれて良かった。私、2人に言わなくちゃいけない事があったの」
「それは私達もだよ。莉緒」
リオさんは喧嘩別れした事を後悔していた。それを謝る為にここに来たんだよね。でもそれをお父さんが遮った。
「莉緒、すまなかった。お前の気持ちを考えもせずに傷つける様な事を言ってしまった」
「莉緒、ごめんなさい。私は家の事をあなたに任せきりで、働く事があなた達の為だと言い聞かせて帰ってこなかった。それなのに偶に顔を合わせたら説教しかしてなかった。母親失格だったわ」
お父さんとお母さんはリオさんに謝った。
深々と頭を下げる2人を前に戸惑うリオさん。
「お前が死んで目が覚めたんだ。俺は出世ばかり求めて家族を蔑ろにして来た。家族の為に働いているつもりが、いつしか出世の為に働いていた。仕舞いには家に帰ればお前達に当たる様に成績がどうだとか偉そうな事を言って…莉緒が出て行ったのは俺の所為だ。本当にすまなかった」
お父さんはリオさんが亡くなってから仕事を退職。前職はエンジニアだったらしく、帰宅は日付が変わる頃が毎日で、土日も働いていた事も多かったそう。今はここから遠くない町工場で働いているらしい。
お母さんの前職は何かのデザイナーだったらしく、休みも取らずに働き詰め。今は近所のスーパーのパートに転職。必ず夕方までには帰ってくる様になったそう。
「莉緒が高校生の時に俺の所為で駄目になった家族旅行。埋め合わせをするって言ったのに、結局行かなかったよな。お前が死んでからそれを思い出して隆志に話したんだ。そうしたら隆志が何て言ったと思う?」
まさか…。
「オリンポス山だって。ギリシャのじゃないぞ。標高27キロメートル、地球との最短距離は6千万キロメートル。火星だ」
「莉緒姉のやろうとしていた事は俺が代わりにやっておいたよ。父さん、どうやったら行けるか真剣に調べてたんだ。馬鹿だろ?」
「親に馬鹿とは何だ」
お父さんは隆志さんの言ったことに怒っているが、本当に怒っている訳じゃなさそう。お母さんも少し笑っている。
「そう…ずっと覚えてくれていたんだね」
リオさんは瞳を潤ませながら俯いた。
「俺達家族の中に、お前がいなかった日は1日も無かった。莉緒が言っていたオリンポス山どころか、ヴィクトリアの滝にすら連れて行ってやれなかったけどな」
「莉緒を亡くしてから気付いたの。もう二度と子供に辛い思いをさせてはいけないって。せめて隆志には自由に生きてもらおうって」
「2人は莉緒姉が死んでから変わったんだ。俺は好きな事をしながら将来の事を考えて勉強してる。莉緒姉が想像していた神崎家はもう無いんだ。だから責任を感じる必要なんて無いよ」
3人は5年分のそれぞれの思いをリオさんに伝えていた。
リオさんは震えていた。
ゆっくりと顔を上げるリオさんの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「わ、私にも…言わせて、よ…」
しゃくり上げながらリオさんが声を絞り出す。
「父さんと母さんの期待に応えられなくてごめんなさい…親に逆らって家を飛び出して、1人でいじけて…私が死ぬまでは隆志も辛かったでしょう?全部私のせいよ。本当にゴメンなさい…」
「いいよ…俺もあの時は自分勝手な事ばかり考えてた。姉ちゃんを恨んだのもホントの事だしな…」
隆志さんも涙を流しながら言っていた。
お父さんとお母さんも近付いて行き、家族4人で抱き合っていた。
「ミナさん、ソラちゃん、テュケ君…私達はそろそろ…」
ユキさんが小声でみんなに話し掛ける。
そうだね。後はユキさんの時みたいに家族で過ごしてもらおう。
「リオさん、私達は帰りますね」
「え?それなら私も」
「何言ってるの?家族で過ごしてって言ってるんだよ?」
ソラちゃんがそう言うと、リオさんは一瞬固まったけど、すぐに笑顔になった。
「ありがとう。そうさせてもらうわね」
「じゃあ、明日の夜に迎えに来ますから」
「君達、莉緒をここまで連れて来てくれてありがとう。俺は神崎裕翔。莉緒と隆志の父親だ」
「いつも莉緒がお世話になってます。私は母親の紗香です。大したおもてなしも出来ずにごめんなさいね。今度は何かおもてなしさせてね」
2人は自己紹介をしてくれた。
また今度ゆっくりお話が出来たらいいね。
私達は一度旅館に戻ることにした。
そろそろ夕方になるけど、ルーティアさん達はまだ戻って来ていない様だ。
何処にいるのか《鑑定》で調べてみたら食事処にいた。
あれ?今日って旅館で夕飯食べないのかな?
よく見たらマサキさん一家も合流していた。実家に帰るのを終えて戻って来たのかな?
「確かマサキさんの実家ってこっちの方じゃなかったですか?」
「あっ…確かそうだよ!」
という事は偶然会ったのかな?
私達も行ってみる事にした。
まず魔法を使うことができる事を見せて、異世界の存在を認めさせる事から始めて、転移で世界中を飛び回りながら家族しか知らなさそうな話をして転生者という事を理解してもらったそう。
「私達が莉緒が他所の世界で幸せになっていたと知って喜ばない訳がないじゃない。でも、話が突飛過ぎて簡単には信じられなかったのよ。それは理解してね?」
「分かってるわよ母さん。でも信じてくれて良かった。私、2人に言わなくちゃいけない事があったの」
「それは私達もだよ。莉緒」
リオさんは喧嘩別れした事を後悔していた。それを謝る為にここに来たんだよね。でもそれをお父さんが遮った。
「莉緒、すまなかった。お前の気持ちを考えもせずに傷つける様な事を言ってしまった」
「莉緒、ごめんなさい。私は家の事をあなたに任せきりで、働く事があなた達の為だと言い聞かせて帰ってこなかった。それなのに偶に顔を合わせたら説教しかしてなかった。母親失格だったわ」
お父さんとお母さんはリオさんに謝った。
深々と頭を下げる2人を前に戸惑うリオさん。
「お前が死んで目が覚めたんだ。俺は出世ばかり求めて家族を蔑ろにして来た。家族の為に働いているつもりが、いつしか出世の為に働いていた。仕舞いには家に帰ればお前達に当たる様に成績がどうだとか偉そうな事を言って…莉緒が出て行ったのは俺の所為だ。本当にすまなかった」
お父さんはリオさんが亡くなってから仕事を退職。前職はエンジニアだったらしく、帰宅は日付が変わる頃が毎日で、土日も働いていた事も多かったそう。今はここから遠くない町工場で働いているらしい。
お母さんの前職は何かのデザイナーだったらしく、休みも取らずに働き詰め。今は近所のスーパーのパートに転職。必ず夕方までには帰ってくる様になったそう。
「莉緒が高校生の時に俺の所為で駄目になった家族旅行。埋め合わせをするって言ったのに、結局行かなかったよな。お前が死んでからそれを思い出して隆志に話したんだ。そうしたら隆志が何て言ったと思う?」
まさか…。
「オリンポス山だって。ギリシャのじゃないぞ。標高27キロメートル、地球との最短距離は6千万キロメートル。火星だ」
「莉緒姉のやろうとしていた事は俺が代わりにやっておいたよ。父さん、どうやったら行けるか真剣に調べてたんだ。馬鹿だろ?」
「親に馬鹿とは何だ」
お父さんは隆志さんの言ったことに怒っているが、本当に怒っている訳じゃなさそう。お母さんも少し笑っている。
「そう…ずっと覚えてくれていたんだね」
リオさんは瞳を潤ませながら俯いた。
「俺達家族の中に、お前がいなかった日は1日も無かった。莉緒が言っていたオリンポス山どころか、ヴィクトリアの滝にすら連れて行ってやれなかったけどな」
「莉緒を亡くしてから気付いたの。もう二度と子供に辛い思いをさせてはいけないって。せめて隆志には自由に生きてもらおうって」
「2人は莉緒姉が死んでから変わったんだ。俺は好きな事をしながら将来の事を考えて勉強してる。莉緒姉が想像していた神崎家はもう無いんだ。だから責任を感じる必要なんて無いよ」
3人は5年分のそれぞれの思いをリオさんに伝えていた。
リオさんは震えていた。
ゆっくりと顔を上げるリオさんの目から大粒の涙がこぼれ落ちる。
「わ、私にも…言わせて、よ…」
しゃくり上げながらリオさんが声を絞り出す。
「父さんと母さんの期待に応えられなくてごめんなさい…親に逆らって家を飛び出して、1人でいじけて…私が死ぬまでは隆志も辛かったでしょう?全部私のせいよ。本当にゴメンなさい…」
「いいよ…俺もあの時は自分勝手な事ばかり考えてた。姉ちゃんを恨んだのもホントの事だしな…」
隆志さんも涙を流しながら言っていた。
お父さんとお母さんも近付いて行き、家族4人で抱き合っていた。
「ミナさん、ソラちゃん、テュケ君…私達はそろそろ…」
ユキさんが小声でみんなに話し掛ける。
そうだね。後はユキさんの時みたいに家族で過ごしてもらおう。
「リオさん、私達は帰りますね」
「え?それなら私も」
「何言ってるの?家族で過ごしてって言ってるんだよ?」
ソラちゃんがそう言うと、リオさんは一瞬固まったけど、すぐに笑顔になった。
「ありがとう。そうさせてもらうわね」
「じゃあ、明日の夜に迎えに来ますから」
「君達、莉緒をここまで連れて来てくれてありがとう。俺は神崎裕翔。莉緒と隆志の父親だ」
「いつも莉緒がお世話になってます。私は母親の紗香です。大したおもてなしも出来ずにごめんなさいね。今度は何かおもてなしさせてね」
2人は自己紹介をしてくれた。
また今度ゆっくりお話が出来たらいいね。
私達は一度旅館に戻ることにした。
そろそろ夕方になるけど、ルーティアさん達はまだ戻って来ていない様だ。
何処にいるのか《鑑定》で調べてみたら食事処にいた。
あれ?今日って旅館で夕飯食べないのかな?
よく見たらマサキさん一家も合流していた。実家に帰るのを終えて戻って来たのかな?
「確かマサキさんの実家ってこっちの方じゃなかったですか?」
「あっ…確かそうだよ!」
という事は偶然会ったのかな?
私達も行ってみる事にした。
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