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出会い

12 side夏樹

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今回は殆ど会話になります。

Side夏樹

月見里家は日本でもトップクラスの企業である為、来栖財閥とも取引などで関わる機会があった。

以前協働で行った事業でどうやら気に入られたらしく、来栖のトップの名刺も夏樹は持っていた。

私情で連絡する為に用いるのは憚られたが、事情が事情だ。
仕方あるまいと番号を打ち、受話器をタップした。

何度かコール音が鳴ったのち、
「はい、来栖。」
と重厚な低い声が響いた。

「突然の電話で申し訳ありません。以前、お世話になりました、月見里グループの月見里夏樹と申します。」
「月見里…?ああ!君か。そういえば、名刺を渡したね。何か事業であったかね?」

「いえ、本日は、誠に勝手ながら私情でご連絡を差し上げた次第で。本来であれば直接伺いを立てるべきなのですが、緊急事態なので電話でご容赦下さい。」
「んん?何があった。私情とは君のような男が珍しい。」
「厳密に言うと、私の事ではありません。
私には高校生になる弟がおりまして、弟の事なのです。」
「弟君?であれば、ますます私とは関係無いと思うのだが。」
「弟の運命の番が、来栖様のご嫡男であらせられる来栖櫂斗様の様なのです。」
「………は…?今、何と…?」
「…私の弟の運命の番が、ご嫡男であらせられる、来栖櫂斗様であると。本日、弟が説明会の際にご子息にあったようで、運命の番のようであったと、関係者がそのように。」
「……そうか…。それで、それだけで連絡した訳ではあるまい。そんな事であれば、私は櫂斗本人から連絡が来ている筈だ。」

「はい。弟は心臓が悪いのです。本日、ご子息とあった時に、運命の番が結びつく際の負荷で心臓発作を起こし倒れました。」
「?何と⁈大丈夫なのかね?」
「幸い、ご子息の初期対応が良く、最悪は免れました。ありがとうございます。」
「それならば良かった。」
「本来であれば、治療である程度回復するのですが、今回は不安定で何があるかわかりません。主治医は、恐らく運命の番と会った事で結びつきが生まれたにも関わらず、離れ離れになっているからであろう、と。」

「ふぅむ。確かに。運命の番であれば出会ってすぐはお互いの結びつきの安定の為に暫く離れない。今回は緊急自体となった為、出会った直後に離れたと言う事か。」
「はい。お願いです。このままであれば、私の弟は再度発作を起こし死んでしまうかもしれません。櫂斗様を暫くの間、弟の側にいさせてほしいのです。中等部に通われているとお聞きしてますが、可能であれば安定するまではそれこそ、一日中。」

「…櫂斗をそっちにやるのは、櫂斗の同意があれば構わない。弟君の不調は倅も関わっているみたいだからな。
ただ、一日中と言うことは、学校を休ませろとの願いか?悪いが、それは難しいな。中等部も後2週間もすれば卒業式だ。櫂斗は代表として任されている仕事もあるし、中途半端で投げ出させる訳にもいかん。
それに寮に入っている為、寮の門限もある。」
「私も由良の卒業で生徒会長もやりましたので、業務や責任、寮の8時門限や罰則は理解しております。
無理を承知で、お願い出来ないでしょうか。櫂斗様の了承が有ればで構いません。業務や行事に出るなとも言いません。
ただ、他の時間をシグと共に過ごして欲しいのです!寮の門限は保護者からの事情を含めた要請があれば不問であると認識しています!
学校のない、夜の間、一緒の部屋で眠ってくださるだけでも構いません!どうか、どうか、俺の、俺の弟を、助けて貰えないでしょうか…」
電話で見えないと知ってはいるが、頭を下げずにはいられなかった。




「……………。良かろう。学園には事情を説明し、櫂斗が出来る限り、弟君の下にいられるように計らおう。なに、運命の番だ。ウチの息子も、今は気が気でないだろう。
電話が終わったら、私のメールに病院名と病室を記載して送りなさい。
櫂斗に行くように伝えておく。」
「ありがとう、ありがとうございます!よろしくお願いします!」
夏樹は再度深く頭を下げて、ではな、という来栖の言葉で電話が切れた。

急いで名刺にあるメールアドレスに病院名と病室、時雨の名前を添付し、送信した。

夏樹と櫂斗は直接の面識は無い。どんな人物なのかは知らないが、来栖の長男で変な奴では無いだろうと思考し、早く来る事を願って病室に足を向けた。

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