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「旨い、これなんだっけ?」
丸山君が皿を指さした。
「サンマの味噌カレーです」
「ああ、味噌とカレーか!カレー風味のなんだろうと思ったら。うめぇわ。」
そうでした。せっかく珍しい缶詰がたくさん食べられるのですから、味わわなければ。
「これは、初夏ちゃんが選んだものですか?」
「はい。山わさびって聞いたことはあったんですけど、食べたことがなかったから」
山わさびの醤油漬けの缶詰です。
少し取って口に運ぶ。
「はー。おいしい。ご飯が進みそうな味ですね。あ、お酒にも合います。これ一缶あれば、他に何もつまみいりませんね」
思わず、ごくごくとカクテルを水のように飲んでしまい、和臣さんがふっと笑い声を漏らす。
「確かに。でも、まだまだほかにもおいしいものがたくさんあるから、他のものも食べよう」
「もちろんです。でも山わさびの醤油漬け、初めて見ました。どこに売っているんでしょうか?」
また食べたくても、入手はむつかしそうですよね。
「山わさびは家庭菜園でも育てられるんだよ。家庭菜園で作って自宅で醤油漬けにするという地方もあるみたいだよ」
「え?家庭菜園で?わさびって、水がきれいな山で栽培するイメージですけど……」
和臣さんが山わさびの缶詰を持ち上げて、側面の文字を見ています。
「ああ、やっぱりだ。産地は北海道だね。北海道では自生してたりもするらしいよ。山わさびって名前で呼ばれると、山に自生してるイメージが強くなっちゃうけど、別名は西洋わさびや、わさび大根って言うんだ。虫が付きやすいけれど、それさえ気を付ければ山わさびは、プランター栽培でも大丈夫らしい。土に植えれば、すぐに根を張るらしいよ」
「プランターでも?和臣さんは物知りなんですね」
すごいなぁと思って誉め言葉が自然に口から出ました。
ところが、和臣さんははっと息をのむと、コトンと缶をテーブルに置いて「あー、またやってしまった」と小さくつぶやきました。
「え?」
首を傾げると、丸山君がこちらを見ました。
「気になると、すぐに確かめたくなって缶の説明書きを読んだり調べたりする細かさとか、知っているうんちくを長々と話し始めるところとか……。ちょっとめんどくさい男だなーって思わない?」
めんどくさい?
誰がそんなことを言ったのでしょう?
「私は知らない話を聞くのは楽しいです。でめんどくさいと思うことはありませんよ?」
菜々さんが楽しそうにふぅーんと声を上げました。
「だってさ」
菜々さんが顔を和臣さんのほうに向けた。
「ありがとう、結梨絵さん。そう言ってもらえると嬉しいんだけど、この癖はアプリのバグ解明方法についてや、数学者の歴史的偉業や、IT産業における株価予想とか……その、相手の興味があるなしに関係なく出てしまうんで……」
ああ。
「確かに興味はありませんし、話をされても理解できなくて申し訳ないなぁと思うかもしれないですが……知らない話を聞くのは楽しいです。アプリってそんなにいろいろ作るのが大変なんだなぁと思うかもしれませんし、もしそれが使ったことのあるアプリだったら秘密を知ったみたいで嬉しくなるかもしれません。あと、その話がきっかけで興味のもてるアプリが見つかるかもしれませんよね?」
丸山君が和臣臣さんの背中を叩いた。
「よかったな、和臣!結梨絵さんみたいないい人がいて!」
「あ、ああ」
へ?
丸山君が皿を指さした。
「サンマの味噌カレーです」
「ああ、味噌とカレーか!カレー風味のなんだろうと思ったら。うめぇわ。」
そうでした。せっかく珍しい缶詰がたくさん食べられるのですから、味わわなければ。
「これは、初夏ちゃんが選んだものですか?」
「はい。山わさびって聞いたことはあったんですけど、食べたことがなかったから」
山わさびの醤油漬けの缶詰です。
少し取って口に運ぶ。
「はー。おいしい。ご飯が進みそうな味ですね。あ、お酒にも合います。これ一缶あれば、他に何もつまみいりませんね」
思わず、ごくごくとカクテルを水のように飲んでしまい、和臣さんがふっと笑い声を漏らす。
「確かに。でも、まだまだほかにもおいしいものがたくさんあるから、他のものも食べよう」
「もちろんです。でも山わさびの醤油漬け、初めて見ました。どこに売っているんでしょうか?」
また食べたくても、入手はむつかしそうですよね。
「山わさびは家庭菜園でも育てられるんだよ。家庭菜園で作って自宅で醤油漬けにするという地方もあるみたいだよ」
「え?家庭菜園で?わさびって、水がきれいな山で栽培するイメージですけど……」
和臣さんが山わさびの缶詰を持ち上げて、側面の文字を見ています。
「ああ、やっぱりだ。産地は北海道だね。北海道では自生してたりもするらしいよ。山わさびって名前で呼ばれると、山に自生してるイメージが強くなっちゃうけど、別名は西洋わさびや、わさび大根って言うんだ。虫が付きやすいけれど、それさえ気を付ければ山わさびは、プランター栽培でも大丈夫らしい。土に植えれば、すぐに根を張るらしいよ」
「プランターでも?和臣さんは物知りなんですね」
すごいなぁと思って誉め言葉が自然に口から出ました。
ところが、和臣さんははっと息をのむと、コトンと缶をテーブルに置いて「あー、またやってしまった」と小さくつぶやきました。
「え?」
首を傾げると、丸山君がこちらを見ました。
「気になると、すぐに確かめたくなって缶の説明書きを読んだり調べたりする細かさとか、知っているうんちくを長々と話し始めるところとか……。ちょっとめんどくさい男だなーって思わない?」
めんどくさい?
誰がそんなことを言ったのでしょう?
「私は知らない話を聞くのは楽しいです。でめんどくさいと思うことはありませんよ?」
菜々さんが楽しそうにふぅーんと声を上げました。
「だってさ」
菜々さんが顔を和臣さんのほうに向けた。
「ありがとう、結梨絵さん。そう言ってもらえると嬉しいんだけど、この癖はアプリのバグ解明方法についてや、数学者の歴史的偉業や、IT産業における株価予想とか……その、相手の興味があるなしに関係なく出てしまうんで……」
ああ。
「確かに興味はありませんし、話をされても理解できなくて申し訳ないなぁと思うかもしれないですが……知らない話を聞くのは楽しいです。アプリってそんなにいろいろ作るのが大変なんだなぁと思うかもしれませんし、もしそれが使ったことのあるアプリだったら秘密を知ったみたいで嬉しくなるかもしれません。あと、その話がきっかけで興味のもてるアプリが見つかるかもしれませんよね?」
丸山君が和臣臣さんの背中を叩いた。
「よかったな、和臣!結梨絵さんみたいないい人がいて!」
「あ、ああ」
へ?
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